第2話 招待状
「もしもし、陸斗」
「おう、お疲れ!」
いつも通りの屈託ない声が、スマホ越しに響く。
「ねぇ、アナザーワールドのイベント行く?」
「行く行く。予定もないし、それにタダなんだぜ?」
タダっていうところに力を込めて、陸斗が言った。確かに、ちゃんとしたオープン後の入園料って、中学生以上は1800円くらいだった気がする。
「でもさ、私、こんなイベントの抽選申し込みした記憶ないんだよね」
気になってることを言ってみたけど、陸斗は事も無げに笑った。
「ん~、何かの会員登録とかから選ばれたんじゃね?まあ、そんなのどーでもいいじゃん」
タダなんだしと、陸斗が繰り返し言う。
「お前も行くんだろ?」
「え……う、うん」
ちょっと乗り気じゃなかったけど、押しの強い陸斗の言葉に、そう言ってしまった。
「じゃ、土曜日、アナザーワールドでな!」
「うん、またね……」
そう答えて、スマホを切る。
(結局行くことになったな……)
私はため息をつくと、もう一人のラインの相手との会話を見つめた。
アナザーワールドからの招待状が来たという、もう一人の相手は、高校に入ってから友達になった、
あんまり目立つタイプじゃなくて、そそっかしいところのある彼女だけど、優しい性格で、高一の頃は、陸斗と三人でよく遊んだ。
でも、今年の3月にあった「ある事件」以来、全く遊んでいない……。
このところ、まともに喋ってないから、陸斗みたいに気軽に電話するのはしづらくて、瑞貴とは、そのままラインで会話を続ける。
イベントに行くつもりかどうか聞くと、彼女は「分からない」って答えた。それから、私と同じで、こんなイベントの抽選応募した記憶がないと言っている。
「瑞貴は来なさそうだな」
ラインの感じで、私は、そう思った。
……あの事件以来、明るかった瑞貴は口数が少なくなった。
そりゃあ、そうなるよね。私だって、あんなことがあったら、ショックで口が聞けなくなる……。
私は、自分と陸斗は行く予定なことを書き込んで、またね、と瑞貴とのラインを終えた。
この時は、何にも考えていなかった。
まあ、ちょっと遊びに行ければいいかっていうくらいの軽い気持ちで。
それを今は、死ぬほど後悔している……。
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