神の思い3

信者のほとんどが殺されたことで、私は再び弱くなった。


麦粒を与えたり、コップ一杯の水を差し出すしかできない。


他の神々は数十ヘクタールの麦畑を実らせ、枯れた井戸や川を潤せるというのに。


そんな私だから、新しい信者はつかなかった。


それでいい。


私なんかを信じれば、また他の神々に殺されてしまう。


弱い私が、信者なんかを持ったのがそもそもの間違いだったんだ。


天上から一人ぼっちで下界を眺めながら、私はそう思う。


そんなある日、いつものように下界に降りてこっそりと麦の粒と新鮮な水を貧しい人の家の前に置いていると。


私を見つめる、一人の少女と出会った。


やばい。


そう感じた私は、すぐにその子の前から立ち去ろうとした。


人間と仲良くなってはいけないから。


人とかかわることが神の存在理由である以上、人とかかわることを止めるわけには行けないけれど。


私の存在は知られなくていい。


偶然、勘違い、その程度の存在が私にはお似合いだ。


その日、私はその少女の前から逃げるように離れた。


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