第35話
婚活パーテーに行くことをすでに後悔していたが今更取り消しは出来ないと彩乃に断られた。
婚活パーティーって集団見合いみたいなものだと思うけど、どんな格好で行くのかもわからない。ユカに聞けば蓮に筒抜けだしどうしたものか。彩乃に聞くしかないかと思っていた時に天の助けがあった。ランチの後に化粧室で化粧を直していると隣で総務課の人たちが話しているのが聞こえてきた。婚活パーティーの話題だった。わたしよりもいくぶん若いが崖っぷちだと騒いでいる。
チラっと見たが顔もスタイルも申し分ないのに婚活パーティーに行くのかと不思議な感じだ。意外と社内恋愛って少ないのかもしれない。
日本の男は体裁とか気にするから、断られた時のことを考えて職場の人には声をかけないのだろう。その辺は外国人を見習った方が良い。レディファーストも徹底してるし、誘い方もスマートだ。
しばらく聞き耳を立てていたが肝心な話にならないので思い切って声をかけた。
総務課の美人さんたちは性格も良く、親切に教えてくれた。服装はドレスが一般的らしい。それほどフォーマルでなくて良いと聞いてホッとした。
食事は軽食くらいだしあまりガツガツしている人はいないので、先に済ませておく方が良いと言われた。でもわたしは別に気に入られたいとか思ってないし参加して少ししたら抜ける予定なので食事はしていかなくても構わないだろう。
それにしても婚活パーティーで結婚までいく人は結構いると聞いて驚いた。そんなに出会いがないのか。これは良くないと思う。今言うとやぶ蛇になりそうだけど、今回の婚活パーティーが終わったら高木さんに提案してみよう。会社でパーティーを開いたら良いと思うのだ。上司は抜きでざっくばらんなパーティーを開いて独身の男女をくっつける作戦だ。社内恋愛は禁止されてなくても躊躇する人もいるし、難しいかもしれないけど結婚できない人たちに出会いのチャンスを与えるのは日本の未来のためにも良いはずだ。でも一文の儲けにならないから却下されそうだ。何か説得できる材料がいるわね。
ユカに呼び出されて今日のお昼は外で食べている。わたしの好きな回転寿司。ユカは回転寿司と聞いて「一度食べてみたかった」と喜んだ。まさか回転寿司も行ったことのないお嬢様がいたとは。ユカは本当に食べた事がなかったらしくお皿をレーンに戻そうとしたり、お茶の入れ方も分からなかった。
「何か私に隠してない?」
ようやく落ち着いて食べれるようになった頃ユカが尋ねてきた。これはもしかして婚活パーティーがバレたの?
「え? 何もないわよ」
わたしはえんがわを食べながら答える。そして画面でアサリの味噌汁を注文した。
「そう? なんか蓮が絶対に何か隠してるってメールがあったのよね」
え? 何それ、怖いんだけど。わたしとのLINEでは一言も言ってなかったのに。
「な、何もないわよ。引っ越し先を探すのもも今は待ちの状態だし……」
そう、結局引っ越し先はまだ探せていない。今は時期が悪いらしいから落ち着いてからまた
探すつもりだ。粘ればきっと良いところが見つかるだろう。
「そうなんだ。よかったー。心配してたのよ。意地とか張って遠いところから通勤することになるんじゃないかって。足の状態が良好だっていうのは聞いてるけど油断していると大変なことになるんだからね。絶対に通勤は車が良いよ。もし蓮に借りるのが嫌なんだったら聡の車を一台借りても良いのよ」
高木さんも何台も車をお持ちらしい。それなのになぜユカは蓮の車に乗っているのか聞いたら、蓮の車の方が自分の好みに合っていたからだと言われた。うーん、やっぱりユカと蓮の関係ってよく分からない。蓮はユカの好みを高木さんよりも知っている。ちょっと 高木さんに同情してしまった。
「この間、買い物に電車で行ったの。確かに階段の上り下りはきつかった。だからしばらくは蓮の車を借りることにしたわ。蓮は軽自動車は許してくれそうにないし、普通車を買う余裕はないからね」
「なっちゃんがそう言ってくれて安心したわ。よし、今度はマグロの寿司を食べてみるわ。でもいつも食べているのと色が違うし本当にマグロなのかしら」
わたしはそんなに貧乏ではない。でもいつか蓮の両親に出して貰った治療費を返すという野望がある。だからなるべくなら一銭だって無駄にはしたくない。だから自動車はなるべく買いたくないのよね。
わたしはユカがマグロの味が違うと言うのを聞きながら、アサリの味噌汁を食べていた。
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