第16話
蝉が、鳴き止んだ。
恐ろしく、静かな時間だった。ほんの僅か。刹那。
……
……
「先、――」
「僕達はもう友達だ。だから、サヨウナラ、朔」
先生の笑顔は すごく清々しくて、
その手は、トン……と俺の体を遠くに追いやった。
「先生!!」
そのすぐ後、太陽が落ちたんだ。
いや、太陽みたいなデカイ炎の塊が、音の全てを飲み込む爆音が……
真っ黒な大きな煙が、焼けつく程の熱風を巻き上げて、近づいて ――
「朔!!」
「―― !?」
目が覚めた そこは、病院のベッドの上だった。
姉チャンは泣いていて、友達が心配そうに俺の顔を覗き込んでいた。
話を聞くと、俺は大学で倒れたらしい。
俺的に正確な事を言えば、寝落ちただけ何だけど、一向に起きなかったもんだから、
結局 救急車を呼んだそうだ。
俺が目覚めたのは、病院に搬送されて1週間後の事だった。
(先生……)
ハッキリと、俺は先生の事を覚えていた。先生の、最期の笑顔も。
(―― 1945年8月、朝8時、原爆投下……)
俺は丁度、あの時間にフライトしたんだ。
夢が、俺に何を見せたかったのか分からない。どうしてこんな力が身に付いたのかも分からない。
だけど……
(現実……夢……そんなの関係ないよ……どっちだって良いよ……).
先生は知ってた。自分が、あの瞬間に消えてしまう事を。
だから、俺を突き放した。
あのまま一緒にいたら、俺も消し飛ばされていただろうから。
「うっ、、うぅうぅ、、……っっ、、」
「さ、朔っ? 大丈夫っ? どっか痛いのっ?」
人前だって、泣かずにはいられなかった。
先生とは、もう2度と会えない。
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