第10話

 【じゃない方の夢】は矛盾してるんだ。

人の体に入ってる時は、その人の五感をそのまま感じ取る事が出来るんだけど、

俺が俺として在る時は、その五感が曖昧だ。感じ取れる事と出来ない事がある。

それだけ、俺の存在が曖昧だって事の現われ何だろうな。


「この時代に生きてるヤツがいるって、不思議だなぁ」


 過去だとしたら、もしかして、知り合いの親の親だったり。

あ! 俺のじぃチャンばぁチャンが生きてたりすんのかな?

父サンや、母サンも……


「ハハハハハ! まさか、ココが俺の【現実】とかってオチ? ま。悪かねぇけど」


 窓辺の席に座って、夏の新緑を眺める。

俺がこの時代に生きる子供だったとして、やっぱ勉強中は寝てそうだわ。

って、小学生気分を味わってる そこに、ガラガラガラって教室のドアが開く。


「!」


 思わず起立。

自分の姿が認識されない世界だってのは分かってるけど、やっぱり夢の世界の住人とのファーストコンタクトには緊張させられる。


(大人の男、ここの生徒じゃないよな?)


 柔らかい生地の白シャツに、麻の茶色いズボン。爽やかで色の白い若い青年。って感じ。

男は教壇の前に歩むと、愛想抜群の笑みを俺に向けた。


「休校中の校舎に人がいるとは思わなかった。キミは……卒業生では無さそうだね?」


 視えてる!? 俺、見えんの!? マジで!? って、無茶苦茶 取り乱してジタバタ。


「あ、いや、そのっ、怪しいもんじゃなくてっ、迷子……ってか、まさか見えてるとは、、」

「ハハハハ。面白い子だね。見えるも何も、キミはキミ自身が見えない存在とでも?」

「い、ぃゃ……それは、その……」


(説明しても理解されねぇだろうなぁ、、)


「そ、そうゆうアンタは どちら様なの……?」

「僕かい? 僕はここの教員。ここは僕の担任していた教室だよ。

 っと言っても、ソレは昨日までの話だけれどね」

「ああ……『休校中』って言ったね、」


(教員か。優しい雰囲気なのは その所為かな)


「いつ授業が再開されるか分からない。

 何にしろ、立ち入り禁止。今は関係者だって入ってはいけないんだ」

「そ、そうゆうアンタは……?」

「僕は忘れ物を取りに来たんだ。ちゃんと許可は取っているよ」

「そ、そっか、、」

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