第8話

(俺が、消える……)


 冗談じゃねぇよ。

これまでの色んな事、笑ったり、怒ったりさ、

結局の所、俺の中のマイナスは、皆がくれたプラスで持ち堪えて来たんだよ。

それが全部 夢だったとか、目覚めたら全然知らない世界の生き物だったとか、

俺が俺じゃ無かったとかさ、それは、困るんだよっ、嫌なんだよっ、


「姉チャンっ、」


 居てもたってもいられない。


(俺がいなくなったら、姉チャンは独りぼっちになっちゃうじゃねぇかっ、)


 帰らなきゃ、姉チャンに会わなきゃ、今、



「す、ぐ ―――― ……」



 ヤバイ、眠い……全身の力が抜けてく……



(この感覚……浮遊感……)



 パッと目の前が閃光した。辺り一面の可視光線。

眩しくて、目を閉じて、瞼の裏を赤く燃やす程の衝撃。

空間の壁を抉じ開けて、全身が分子の単位にまで分解されていくような、そんな感覚。

触れられない異物が体内を通り抜けると、次の瞬間には異空間に放り出される。



「―― !?」



 目を開けると、漂う先は空。真下には、緑が広がってる。


「何処だ、ここ……」


 茶色い茅葺屋根の古い家が転々と見える。何処か田舎の村、かな?


「下に、下に降りたいんだけど……」


 この高さから真っ逆さまに叩き落とされたら精神崩壊しちまう。

強く意識すると、ゆっくりゆっくり、体が地面に近づいていく。


「ょ、良かったぁ……」


 無事に着地。

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