第7話

 話しかけて来る友達は皆 気さくだ。


「おい、朔。こんな所で突っ、」

「ちょっと考え事あってさ、先に授業 向かってて」

「ぁ、ああ……んじゃ、教室で待ってるな」


「あ! 朔だ~~、今度、」

「カラオケね、バイトの休み確認したら連絡するよ」

「うん、ヨロシクね……??」


「朔? どうし」

「至って健康。医務室無用。」

「そ、そうか? ならイイけど……」


 誰が何を話すのか、最後まで聞く必要も無い。


(だからさ、何回目だよって……)


 現実は夢で先取り。

性懲りも無くアンコールされる昼のサスペンスと何ら変わりないね。


(夢が現実を浸食して行く……

 近い内に、夢の中で感じたように、俺の中の境界線は曖昧になって、

 目覚めも眠りも分からなくなるんだろう……)


 ガキの頃に観た、テレビアニメのヒーローが持ってた超能力に憧れていた。

それは、未来が視える力だった。

そんな力が自分にあったら、父サンも母サンも事故に遭って死ぬ事は無かったんだって、

平凡な自分を、子供ながらに責めたのを覚えてる。


(実際、良いもんじゃないんだね……)


 身に余る。って言うのかな、今の俺は、未来を知ってビビってる。

気にしないフリして、適当に納得して、その半面は全く受け入れられないんだ。

だって、信じられないだろ。こんな事。有り得ないだろ。こんな事。

未来を知った所で戸惑うばかりで、未来を変える力なんて、俺には無いんだから……



(【今】が【現実】かどうかも、断言できないってのに……)



 レコードの針が飛ぶ様な毎日だ。

例えば、昨日の晩に姉チャンが作ってくれた晩メシだって、

こうして大学生してる事だって、俺が視てる夢の一端に過ぎないのかも知れない。

いや、俺自身が、誰かの夢の登場人物でしかないのかも知れない。


(俺は、存在してるのか……?)


 風が吹いて、ガサガサと木々を揺らして通り過ぎる。

影も何もかも、自分の姿が浚われそうだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る