第4話

 翌日、無事に起床できた俺は大学へ。

『授業中 寝そうになってたらブン殴ってでも起こしてくれ』って、友達に頼むのが恒例。


「今日もヨロ」

「オッケ~。つかさぁ、朔、お前 病院いったら?」

「病院いったら治るもんなら行くけど?」

「だから行ってみろっての。そんで病名と診断書 貰って来いって。

 いざって時の言い訳に使えるだろ? オレもその方が殴りやすいんだけど?」

「何だよ、俺の心配じゃなく、自分の正当防衛か」

「ウィンウィンだっての」


 無駄口たたいてたもんだから、講師に睨まれた。

寝ないまでも、くっちゃべってたら教室に来た意味が無いんで、

俺達は白々しく座り直すと、一足遅れて授業の態勢を整える。

そうは言っても、俺の頭ん中は他の事を考えちゃってるんだけど。


(確かに、脳ミソの異常ってのも有り得るかもね。

 即死しないまでも、変なトコに腫瘍できて、幻覚見るようになるケースも無いこた無い)


 病院で検査するって選択肢、考えなかったと言えば嘘だけど、


(姉チャン、心配すんだろな……)


 そう思うと、足が向かなかった。

姉チャンは高校卒業して、直ぐに就職した。

両親のいない俺達を親戚が引き取ってくれたけど、ホント、何不自由なく食わせて貰ったけど、

やっぱり それは申し訳なく感じていて、姉チャンは進学よりも金を稼ぐ事を優先した。

早く家を出て、俺を引き取って、自分の稼ぎで俺を大学に進学させる為に。

俺にとって姉チャンは、姉だけど親みたいなもんで。

だから、これ以上 苦労をかけたくない。


幽体離脱フライトか……)


 一応、ネットで調べた。

魂が体外に出る事で、幽霊が視えるようになったり、人によっては過去や未来を視る事をが出来るらしいって。


(俺がそのパターンってなら、病院は不要なんだよなぁ。

 単なる体質なら、コントロール出来るようになれば良いんだし。

 つか、切実な話、このままじゃ寝不足で死んじまうよ!)


 求めるのは安眠。いやいや、今は授業だから寝ちゃダメだった。

シャープペンの頭をカチカチ押して睡魔の襲来を防ぐ。

これが今の俺が出来るささやかな抵抗です。

そいでもって、授業の合間の休憩は、気分転換にキャンパスを散歩する。有酸素運動ね。


   ポ~ン。


 サッカーボールが風に流れて飛んで来た。

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