第23話 幕間 ~ Humpty Dumpty Zero【???視点】


「有里朱ちゃん……有里朱ちゃん……有里朱ちゃん……」


 暗闇の中で一人の男がパソコンのモニターに向かって恍惚の表情を浮かべている。口元はだらしなく開き、口角には唾液の泡が吹き出している。


 男の右手は股間、左手はマウスに手を添えていた。


 モニターに映し出されるのは、高校生くらいの少女の画像。登校風景、そして体育の時間、さらに授業中のものまである。


「有里朱ちゃ……んっっっ!!!」


 そして男は果てた。欲望を全て吐き出して。


 部屋にはスペルミジンの成分が分解され、独特の臭いが部屋を満たしていく。


 その部屋に一人の少女が入ってきた。画像の少女と同じ制服を着た子だ。


 彼女はサージカルマスクを付け、部屋の中を土足で歩いて行く。


 そして男に小指程度の大きさのUSBメモリと小さな小袋に入ったカプセル状の薬を手渡した。


「新しい画像よ」

「……はぁ……はぁ……はぁ……」


 男の息は荒い。果てたばかりで体力が回復していないのだろう。


「あの子はあなたに相応しい少女よ。あの子を幸せにできるのはあなたしかいないの」


 少女は男の耳元に囁くように言葉を投げかけていく。相手を思考停止させ、刷り込みをしているようにも感じる。


「そうだ……オレしか有里朱ちゃんを幸せにできない」

「そうよ。早くあなたのものにしてあげて。あの子もそれを望んでいるわ」

「あの子は望んでいる」


 少女の言葉を繰り返し咀嚼し、それを自分自身に言い聞かせているようだ。


「あの子はあなたのもの」

「オレのものだ」


 男はもう、一人の少女のことしか考えられない。それこそが男の幸せであった。


「そう、美浜有里朱は、あなたのものよ」


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