第7話 『魔力の源』(執筆者:星野リゲル)

「トランの町近郊では、大きな変革が起こるとき、レットマウンテンズ山脈一帯が大噴火を始める。崩落の日も、同じように噴火が始まった。俺は何事かと思ったよ。

 そうして念力の能力を持つトウラに話を聞いた。するとどうだい。あろうことか神は、俺たちの故郷である地球で災害を起こそうって話だ! もちろん黙っていられなかった。どんな理由かは知らんが、今すぐ崩落を止めろと神に申し出ようとした。だが、力が足りなかったよ」


 シオンとシェロは息を飲んでいた。

 シュートの話にのめり込んでいたのだ。


「俺の目の下に大きな傷があるだろう」


 シュートは自分の目の下にある、大きなまるで刀で切られたような大きな傷を指しながら続ける。


「この傷を付けたのはケイキ・ガクトワという人物だ」


「あの名高い剣豪ね」


 とシェロ。


「あいつは間違えなく本物の剣豪、それも大剣豪だ。レットマウンテンズ山脈の噴火直後、つまり地球での崩落が起きる直前、俺とトウラは情報を集めに山脈の奥深くに忍び込んだ。そこで運悪く鉢合わせたのはあのケイキだった」


 シュートの声が一段と深くなった。シオンはごくりと唾を飲む。


「聞くところによると、このレットマウンテンズ山脈には巨大な魔素の塊があるらしい、その魔素の力により、あの大噴火は起こされる。

 要するにその魔素を手に入れるという事は神の力を手に入れる事に等しかった。魔素さえあれば媒体無しで何処でも魔法が使えるからな。……俺たちみたいに。

 ケイキは自分が剣豪という事だけには飽き足らず、大噴火と災害のどさくさに紛れて神の力、最強の力を手に入れようとしていたんだ」


「……なるほど、それでケイキと戦ったのね」


 シェロは聞く。


「ああ、正確には俺がケイキから魔素の塊を奪おうとした。力さえあれば神をも超え、崩落を阻止し、世界分断を止められると考えた。だが、俺は壮絶な戦いの最中に深手を負い、倒れた」


 そこで口を挟んだのはトウラであった。


「親友が、あの剣豪ケイキと一戦を交えている。俺は黙っていられなかった。ケイキ・ガクトワの隙をつき、俺は決死の覚悟で魔素の塊を飲み込んだ。奴の目の前で」


「えっ……それじゃあ」


 シェロは目を丸くした。そうしてシュートは頷いて話を始める。


「力を手に入れたのは俺でも、ケイキでもなかった。トウラだ」


「……じゃあ、懸賞金の60億アイロって」


 シェロはさらに二人の話にのめり込んでいった。


「ケイキ・ガクトワを打ちのめし、神にも匹敵する力を手に入れた転生者。理由はほかに要らない」


 シュートは言う。少しトウラを羨ましそうに見つめながら。


「それで、神に挑んだってわけ?」


 シェロはトウラに向かって聞く。


「ああ。結果は惨敗だ」


 その言葉を聞いてシオンとシェロは震撼した。トウラというあのシュートをも上回る力の持ち主が、いとも簡単に敗北する神の存在とはいったい何なのであろうか、と。


「でも、それって世界分断を止めようとした時の話でしょう? トウラ、あなたが今日戦った神って、一体何のために?」


「……それだ。それが話の本題だよ。よく聞け」


 トウラの目つきが鋭くなった。そうして、シェロとシオンはある種の覚悟を決めた。


「直後、もう一つの世界……メルフェールと戦争が起きる。神は俺たちを兵士として駆り立てるつもりなんだ」

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