第12話

 ソレから暫くして、俺は父親になった。

かみサンの健闘の賜物で、健康丸出しの立派な男児。

本当、スクスク育つよ、子供ってもんは。

小笠原がコレを知ったら、やっぱり喜んでくれるんだろうな。そう思うと余計に幸せを感じる。


(連絡先くらい聞いておくべきだった)


 そう言えば、早見のヤローが同窓会名簿を作るとかでアッチコッチに連絡先 聞いてたな?

もしかしたら、小笠原の連絡先を押さえているかも知れない。

そんな思いで、俺は早速 早見の携帯電話を鳴らす。

先生の告別式以来だ。


「もしもし? 間宮だけど」

「おお、どーした? 幸せの押し売りなら要らねぇぞぉ」

「そんな面倒クセェ事しねぇよ。同窓会 開くって話、どうなったかと思ってな」

「…あ。あぁ、うん。ソレな。揃々とは思ってんだけど、もぉちっと間を置こうかと」

「そっか。何だよ お前、忙しいのか?」

「イヤ、そぉゆぅワケじゃねぇけど…うん。まぁ、不幸ってのは続くもんで」

「何だよ? 何かあったのか? 大丈夫か?」

「まぁ。俺は平気。…って、ゆぅか…そっか、まだ知らなかったのか…」

「え? 何が?」


「小笠原が亡くなった事」


「―― は?」


 俺は小首を傾げる。早見は重い溜息をついた後に続ける。


「同窓会名簿 作りたくてさ、先生の実家 訪ねたんだよ、俺。

 ホラ、芳名カード、書いただろ? あそこに連絡先 書いてる筈だから。

 でぇ…そん時にさ、先生の息子サンから聞いたんだよ。

 先生が入院してた病院に、小笠原も長期入院してたって話…」


 まるで、エンディングロール。

早見の言葉が右から左に通り過ぎて行く。


「同じ病棟だったそーな」

「同じ…?」


 先生は癌で亡くなった。ソレなら、小笠原も…


「動ける時はお互いに病室を行き来してたんだってさ。

 で…2人で、高校時代の話、良くしてたって。大笑いしてたって」

「…いつから?」

「え?」

「病気なんて、聞いてない…」

「あぁ…先生の通夜ん時には結構ヤバかったらしい。病室 抜け出して来たんだってさ。

 小笠原も大人しそうな顔して根性あるよな、、ハハ…」

「…」

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