第7話

 俺は小笠原の背を見つめ続ける。


(嫌な顔されないだけ、救われてる筈なんだ、俺は)




『間宮、最近 小笠原が登校して来ないが…お前、何か聞いて無いか?』

『イヤ、別に?』

『別にって お前ぇ、カレシだろ?』

『何?不登校は俺の所為だとか言いてぇのかよ?』

『違う違う。1週間だぞ?1週間も休んでるんだぞ?

 親御サンは具合が悪いって言ってるが、入院でもしてるんじゃないのか?』

『担任が知らねぇ事を、どーしたら俺が知れるってんだよ?』

『カレシだろぉがぁ』

『だから、そのカレシが特に何もねぇっつんだから、風邪こじらせてるだけ何じゃねぇの?』

『……そうか』




(真面目な筈の小笠原は2,3週間に1度 学校に来る程度で、

 授業も適当にサボるようになっていた。

 そんな小笠原が俺には酷く穢れて見えた。だから何一つ理由を聞かなかった。

 次第に関心も向けられなくなっていた)


 俺に会いたがらない小笠原を、恨めしいとすら思った。



(好きだったんだ。本当に。触れられない程に。心から。

 だから、許せなかった)


 ポツリ…雨が降って来た。

昼間から頭上に滞在し続けた雨雲が、遂に雨を降らせやがった。

小笠原の姿は既に無い。


「傘、持ってんのかな、アイツ…」


 高校卒業を間近に、小笠原が声をかけて来てくれた事があった。

でも俺は、ズルズルと因縁を引きずって、その声を無視し続けた。

あの時、小笠原は俺に何を言いたかったのか、ソレは本人から聞かされる前に自分で目にする事で知った。




『小笠原サーン、何でガッコ来てンの?登校すンなって前に言ったよねぇ、私達ぃ』

『お前さぁ、ちょっと男子にチヤホヤされてっからって浮かれてンぢゃねぇよ、

 マヂムカつくンですけど?』

『間宮クンに話しかけるとか、アンタなに様?』

『間宮クン、嫌がってンの気づかないの? バカぢゃねぇーの? シネよ、ブス!』

『あ~ダメダメぇ。顔 殴ると痕が出来てバレるからぁ。

 見えないトコがイイって、良くドラマとかで言ってンじゃん』

『そーそー! バレなきゃイイの! こぉゆぅのはぁ~ねぇ、小笠原サーン』




 小笠原は酷いイジメに遭っていた。ずっと前から。

噂に聞くと、その切欠は俺が作っていたそうだ。

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