第6話

 早見は疑いの目を俺に向けるが、一息ついて苦笑する。


「まだ誘ってねぇから、お前 行って来いよ」

「ぁ、あぁ…」


 焼けぼっくりに火。いや、ソレは無い。

小笠原との事は過去になっている。ただ、懐かしんでいるだけだ。

いや…理由は他にある。


 滞りなく通夜が済むと、別室で清めの席が設けられる。

参列者が揃って食事をする間だ。

一同が揃って移動し始めると同時、1人だけその波に逆らうように反対方向へ進む女性の背が見える。


(小笠原、帰るのか!?)


 俺は駆け出し、会場外で時間を確認する小笠原を呼び止める。


「小笠原!」

「…ぁぁ、間宮君」

「帰るのか?」

「うん。帰りのバス、早くに無くなってしまうの」

「…そっか、、明日の告別式は?」

「残念だけど…」

「そっか…そっか。…家、遠いのか?」

「そうでも無いけど、少し」

「だったら、帰りはタクシーで送るから、少しくらい顔出していけないか?

 先生のご親族に挨拶したら、場所変えてクラスの連中で追悼会しようって話になってる。

 小笠原が帰りやすい場所にして貰えるよう頼んどくから、ソレなら大丈夫だろ?」


 だいぶ強引だな、俺。スゲぇウザイ感じの男になってんぞ!

小笠原は目を伏せ、小さく笑う。


「…ごめんなさい。嬉しいけど…余り遅くはなれないの」


 この言葉に、俺は視線を泳がせる。


(結婚…してんのか?

 …ぁ、ああ、そっか。そうだよな、そうゆう年になってるよな、、

 現に俺も結婚してっし、ガキだって生まれる予定だ。小笠原も…)


「そ、そっか…ワリぃな、無理言って」

「ううん。声をかけてくれて ありがとう。皆に宜しく伝えてください」

「…ぁ、、ああ。勿論」


 敬語、使われた。


(ア~レ~? 地味にショックだぁ)


 他人行儀。→他人ですから。

 近寄りがたい。→元彼ですから。

 大人の対応。→原因と結果の法則。

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