第5話
そんな小笠原の姿を、俺はソレと無く探す。
いた。1番後ろの席。ソレも隅っこ。
(小笠原らしい)
あの頃から そうゆう子だった。やるべき事はやる。けれど、自己主張は必要最低限。
そんな小笠原を、当時の俺は『大人びている』と感じていた。
今では どうかと言うと…
(確かに、イイ女だ。見惚れる程に。)
臆病な少女。酷く自分を哀れんだ、儚げな少女。
今の俺なら、『何故 いつも寂しそうな顔をしているのか?』そう問うたに違いない。
「間宮、焼香に行くぞ。」
「ぁ、ああ、、」
席を立ち、恩師の親族に頭を下げる。そして、抹香を上げる。合掌。
(先生、ごめん…)
会いに行けませんでした。
生きている間に、その内 会えるだろう…そんな風に思っていました。
ソレが1番いいタイミング何だと、心の何処かで言い訳してました。
でも、子供が生まれれば少しは自信が持てるような気がしてたから…
男として、少しは真っ当になった事を証明できると思っていたから…
そうでも無きゃ、カッコ悪くて会いに行けなかったんだ。
(見栄張らず、顔出しときゃ良かった…)
最後の最期、この瞬間にも、俺は恩師にダラダラと言い訳を唱えている。
きっと、霊体になって頭上を彷徨っている最中の先生は、酷く呆れ返り、俺に幻滅している事だろう。
(所帯持ちの28にもなって情けねぇ男だ、俺は…)
今一度 頭を下げて、踵を返す。
会場の隅の席で俯く小笠原が見える。
今にも消えてしまいそうな程、悲しげな姿に目が奪われてならない。
席に腰を下ろすと、早見が耳打ちして来る。
「間宮、この後さ、センセの家族に挨拶して、
そこそこ清めを済ませたら、場所変えて同級で追悼会しよって事になってんだけど、
お前、来れるよな?」
「全員 来るのか?」
「予定が合わないヤツもいるけど…って、ぁぁ、小笠原?」
「! …ぃゃ、別に…」
小笠原が参加するなら行く…何て、そんな事を言いたいんじゃない。
ただ、小笠原と話せるものなら話したい。声をかける機会が欲しい。
まぁ、そんな思いがあったり無かったり…
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