名無しのイデアン( 主人公目指して頑張ります)
麦博
プロローグ
「……閃いた」
ベッドから起き上がった少年は椅子にも座らず、電気スタンドに明かりを灯した。目映い光に顔をしかめたのも束の間、すぐに机の上の白い原稿にペンを走らせる。
カリカリと文字を綴る音。ドキドキと浮かんだアイディアに胸が高鳴る音だけが彼の鼓膜に響く。だが、それさえも気にすることはない。黙々と手を動かすことしか少年の頭にはなかった。
時刻は午前1時。当然ながら眠気の魔力に目蓋が重くなる。
しかし今はそれ以上に楽しくて仕方がない。睡眠なんて二の次、三の次。忘れないうちにこの最高のアイディアを記しておこうと、脳よりも体が彼を駆り立てていた。
「ここはこう……んで、ここに――」
頭に浮かぶ夢のかたまりを文字に変換する。
この芸術に魅せられたのはもう何年前の話かも分からない。ただ、物心ついたときには『書く』ことの素晴らしさを誰よりも実感できていたつもりだ。
「面白いストーリー」、「夢溢れる世界観」。そして「魅力的なキャラクターたち」。これらを考えることが本当に楽しくて、面白くて。ましてや、それらを原稿の上に表現することができるなら時間などいくらだって潰せる自信がある。
すでに原稿は5枚目に突入していた。設定だけを残すつもりが、もう一話目を書き始めて没頭してしまったらしい。おかげで、浮かんだキャラクターの名前を忘れてしまった。
何とか思い出そうと頭を抱えたその瞬間――
「すぅ……すぅ……」
スイッチが切れたように少年は眠りに落ちてしまった。
電気スタンドの光も気にせず、固い机の感触に身を委ね、少年の意識は遠い遠い夢の中。
夜は更けていく。新たな一日を告げる朝日の昇りはあと3時間もないだろう。それでも少年は安らかな寝顔を浮かべてやまない。
どこかの遠い世界で、名も無き男が。いや、「
名無しのイデアン( 主人公目指して頑張ります) 麦博 @mu10hiro
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