そして物語は始まる。
第35話
「では、これよりルツツルプウへのアップデートを行います。」
今回のアップデートでは今までこの世界で生きていた者たちを分解してモデルエネルギーに変換する。ただしここに精霊は含まれておらず、彼ら精霊は変わらず世界の維持に取り組んでいる。
そして彼ら生物や魔物が溜めていた魔素はすべて魔子と聖子に分解され、彼らの第4位階光子の魂もすべて分解された。
こうして得られたエネルギーは魂力に変換され、世界の拡張と新たに生み出す生命に使用された。
「アップデートの第一段階全生物の分解と回収は終了しました。引き続きシステムのアップデートを行います。」
こうして母様と呼ばれた、蒼から生れ出た者たちはエネルギーへとなり、この世界の再編の為に使用されることになった。それと同時に茈はシステムのアップデートを開始する。
「第2段階RTTRPWホストシステム及び各種システムアップデート完了しました。引き続き世界の拡張を行います。」
今回回収できたエネルギーで、この世界は1辺が20㎞の正六面体にまで拡張された。そして、新たに拡張された空間へ精霊たちは赴き天地を創造していく。
「第3段階世界の拡張完了しました。引き続き天地創造に移行します。」
いつもの管理者空間にいつもの4柱がいる。今はアップデート作業を行う為、通常業務はすべて停止している状態だ。
そもそも通常業務自体、精霊から上がってくる情報の処理以外殆どない状態なのだが。
「これでとりあえず一段落ですね。後は拡張した時空間に精霊達が赴き作業は終了するのを待ちましょう。」
あの世界には蒼の子供達・・・、あのディプテラやペスモルトゥムが居たのだが、今の彼女の表情からは、子供たちがエネルギーへとなったことに対して、何を想うのか窺う事は出来ない。
ただ一つ言えるのは、そこには唯淡々とアップデート作業を行う茈をサポートする蒼が居るだけである。
※※※
「第4段階天地創造完了しました。引き続きレッサースライムの
※※※
唐突だがここで時間を少し戻そう。
ここは太陽の中心地、ここの管理者が住まう場所だ。そこに一人の青年が訪れる。
コンコンコン
「お邪魔しますよ。」
そう言いつつ扉を開けた先では、薄暗い部屋の中に周囲を照らしている女性が一人。彼女の持つ権能太陽により周囲を照らしている。
そんな彼女の今の格好は、ジャージ姿に胡坐をかき3面のモニター、キーボード、マウスの前に陣取った形で、今現在何かしらの作業を行っているようだ。
「相も変わらずアナログですね。」
「そう?それにしても急にどうしたの?」
「貴女に一つ相談があって来ました。」
「相談?創世に関してかしら?」
「そちらは色々ありましたが、ある程度形になってきました。」
「へ~、そうですか。そちらも気になるけど、先に相談の内容を聞きましょうか。」
そう言いつつ、卓袱台と座布団と熱めの緑茶を何処からともなく用意して、そこに移動する天照、そして儘に対して自分の対面に位置する場所の座布団を進めた。
「では、早速ですが・・・。貴女の管理領域から一人適当な人間をこちらの世界に引き込みたいんですよね。」
「あら?異世界転生?」
「まー、そうですよ。」
「ふ~ん、それで条件は?」
「そうですね、異世界転生の知識はあるけど、専門的な知識はあまり持っていない。けれど思慮が足りない訳ではなく、面倒だから勉強をしていない、が、興味のある物にはそこそこ時間を割く感じの方で。」
「無駄に長い注文ね・・・。様は凡人ってところね。」
「はい、一言でいうと一般人です。」
「そうなると、やはり21世紀頃の日本人の中から選ぶことになるかしらね。」
「そうなりますか~。」
「あの時代の日本人のオタクっぷりは他に類を見ないレベルだしね。」
「確かに一般人でこのレベルにまでなりますからね~。」
2柱はしみじみと声を出す。
「それで?対象をどうやって探すの?」
「それは、情報を提供してもらえればこちらで探します。」
「解ったわ、それで見つけた当人をどうやって連れて行くのかしら?」
「あ~それはですね。」
かつて人だった、引き籠りとゲーマーが和気藹々と悪乗りをして話を進めていく。
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