アップデート

邂逅

第19話

 さて、地上に出てはきましたが・・・。何もないですね。

いや、何もないは語弊がありますか、周囲に広がるのは礫の混じった大地が地平線まで続いている光景。草木一本生えていません。

 私たちの背後には、広大な面積を誇る湖、中心には島がありそこにははるかな高みを望む山が一つ聳えています。

 

 彼女たちがいる世界は、まだ創世されてからそれほど時間が経っている訳ではない。今この時も創世者が集めたエネルギーを使い、地道に自分の影響力が及ぶ空間を拡張している。

 故にこの世界にはこの大地しか存在していない。宇宙空間のようなものは存在せず太陽もない。昼夜を操作しているのは光の精霊と闇の精霊である。そして熱の精霊2柱により高温と低温帯が作られ、大気の精霊により空間に満たされた空気の循環が行われている。

 大地の精霊が、土を作り出して大地を作り造成をし窪地を作って、その窪地に水の精霊が水を溜めた。

 今現在この世界はこの5柱の原初の精霊によって大地を創造し維持をしている。とても小さな世界であった。


「地上を散策するにあたって地図が欲しいですね。」

「そういえば、それに該当スキルは無いのでしょうか?」

「じゃ、まずはそれの検証から行きましょう。」


 地図・・・。マッピングですかー、今まで割と適当に移動していましたからね、スキル獲得できていないんですよね。とりあえず、意識して移動してみましょう。


 小さな世界で小さなスライムがポツンと一つ、大地をプルンプルン移動している。


―――


スキル記憶が解放されました。

スキルマッピングが解放されました。


―――


 自分のことですが、毎回毎回結構簡単にスキル解放されますよね~。便利だからいいんですけど。


―――


レベル60


取得種族

アメーバレベル42

マザーアメーバレベル42

水棲アメーバレベル42


ミニスライムレベル20

スライムレベル20

水棲スライムレベル20


魔物特性

水中適性

水棲種へと進化可能になる。


マナスレベル50


スキル

魔素探知レベル50・魔素操作レベル50・演算能力向上レベル15・算術レベル15



ステータス

MP50/50

オド50/50

魔力50


取得職業

ファーマーレベル2

キャリアーレベル2


取得称号

原初生命体・創造者のお気に入り・アメーバコロニー中枢・最初の魔物・自分殺し・自分喰い・同族殺し・同族喰い


スキル

捕食レベル50・細胞分裂レベル50・レベル注入レベル50・畑創造スキルレベル50・ファーマー創造レベル50・キャリアー創造レベル50・アメーバコロニー管理者創造レベル50・念話レベル50・魔素探知レベル52・魔素操作レベル52・演算能力向上レベル40・算術レベル40・水中移動レベル15


記憶レベル15

肉体に依存しない記憶。

システムアーカイブスの個人ストレージに保管される。


フィクシティスキル

マッピング

自動で地図を作成する。

作成された地図はシステムアーカイブに送られ、常に最新のものがマッピングスキル保有者で共有される。


ユニークスキル

LP変換


ステータス

MP99/99

オド96/96

生命力76

筋力68

魔力69


―――


 初めて出てくる単語がありますね~。

えーっと、システムアーカイブですか・・・。スキルやステータスなんかを制御しているシステムとかでしょうか?

 それと、フィクシティスキル・・・。与えられいる知識には、レアやエクストラなんかと違って、スキルとは縁がない言葉ですね。意味は・・・、固定・安定ですか。

 なるほど、レベルがなく固定された状態って意味ですかね?


※※※


「この世界かなり狭いですね。」

「そうですね、上空と地下部分の最果てがどこにあるのかは判りませんが、四方と同じであると仮定すれば、同様の10㎞程でしょう。」


 彼女らの居るこの世界は、現在1辺が10㎞程の正六面体である。

 中央に3,333mの高さを誇る山が聳え立ち。その周囲は、直径が8㎞程のほぼ真円の湖で囲まれている。


「ほぼ湖と山の小さな世界か~。散策終わっちゃいましたね。」

「やあ、直に会うのは初めてですね。」

 彼女の前には黒髪の青年がいた。

「何の前触れもなく現れましたね。」

「もっと驚いてくれると思ったのになー。」

(母様この人は?)

(創世者ですよ。)

「そうですか?一応この世界の創世者と聞いているので、多少のことでは驚かないですよ?いきなり目の前にいたのはさすがにビクっとなっちゃいましたが。

 それで、直接会いに来たということは、私に何か用事があるのでしょうか?」

「ん、そうそう。君に幾つかお願いというか、決定事項なんだけどねやってもらいたいことがあってね。」

「私にですか?このしがないスライムに何をやらせようとしているのですか。」

「まず一つ目なんだけど、これを言う前に前提として、私たちが今現在試みていることを説明するね。」

 創世者は語る。自分がこの新しく創世した世界で何をしているのかを。

 この世界で自分たちの権能を直接行使せず、生命体を発生させる試みのことを。

その結果として彼女が生れたが、この発生以降一向に他の生命体が発生しなかったこと。(彼女が生み出した子供達を除く)

 それに伴い多少の方向転換を行うことを。

「そう言う訳で、君にはこの世界における「生命の母」という役割を熟してもらおうと思い、こうして直接お話に来たってこと。」

「はあ・・・、そうですか。」

「うーん、反応うすいな~。それはそれとして。本来の計画ではこの世界を用意して生命の誕生が出来る環境を整えた後は、システムの維持管理等だけを行ていく予定だったんだけど。君という逸材が育ってくれたために、少々方向転換することにしたのさ。」

「私はそんな大それたことをしてきた事はないと思うのですが。」

「君にとっては、生まれてからずっと続けてきたことなんだろうけどね。私たちにとっては興味深かった、というだけの事だよ。

 まず、これが一つ目のお話で、この件については後でこちらからシステムを使って君にちょっと便利な力を与えるから、それを有効に使ってくれ。」

「システム・・・、レベルとかのことですよね。」

「そうだよ。」

「それと、私たちのような生命を生み出したのは、何か目的があるのですか?」

「それについては・・・、そうだな、今はまだノーコメントとしておこう。」

「今はですか?」

「そ、今は。深い意味は特にないんだけどね。私の気まぐれ。」

「気まぐれって、そんなのでいいのですか。」

「良いの良いの。」

 彼は徐に腕を上げ指をVの字にする。

「これが一つ目。二つ目はこれから先、システムのアップデートや調整のためにテスターとして協力して欲しいってこと。」

「システムのアップデートですか。これから一体何をするつもりなんですか?」

「かなり大規模のアップデートでね。それに伴う諸々の変更の為の実働データ欲しい。」

「大規模ですか・・・」

「現状のシステムはレベル・ステータス・スキルの三つで成り立っているけど、私がやりたいことを為すためには機能が足りていないからね。自分でテストするのもいいんだけど、そこはやっぱり実際にシステムが適用されている存在が適任だと思うんだよね。君は私のことを知っているしね。」

「何をしたいのかは判りませんけど・・・、断れないんですよね。」

「うん、決定事項っと最初の方に伝えた通り。

君に話しておきたいには現状このぐらいかな、後はその都度こちらから伝えるよ。」

「わかりました。出来うる限りのことをしましょう。」

(母様、いいのですか?)

(ええ、どの道断ったところでどうにか出来てしまうんでしょうし。)

(そうですか・・・。)

「では、話はこれくらいにして。まず、君に贈り物だ。」


―――


称号生命の母を獲得しました。

創世者儘によって、原初生命体に任された使命。

システムで管理されている寿命の要素が撤廃される。


第4位階権能母の付与を確認しました。


―――


「それが私からのプレゼントだよ。称号生命の母にはシステム上で管理している寿命からの解放だよ。」

「私たちの寿命ってシステムで管理されていたんですね。」

「そだよ、でだ、君はシステムで寿命を管理しなくなったわけだけど、別に不老って訳でも不死でもないからね。そこについては自分で獲得してみるといい。」

「そんなスキルもあるんですね。」

「ま~ね~。不死に関しては限りになくそれに近い状態になるって感じだけど、不老は文字通りの意味で老いがないから。それともう一つの権能の方なんだけど、これはシステム適用外の力になるよ。」

「システム外の力・・・。」

「そう、私たち側の力だ。この母の権能は生命創造の力が備わっているし、それを補佐する力も与えているから存分に使ってくれ。使い方も一緒に情報として送ってあるから後で確認しておいて。」

「・・・、個人ストレージの方ですね。」

「そそ、君に直接送るのも考えたんだけど情報量が膨大だからね、そっちに送っておいた、ストレージ容量の拡張はおまけだよ。」

「はい、ありがたく使わせていただきます。」

「うんうん、それで少し時間をおいたら戦闘に関するテストを始めるから、それまでゆっくりしてて、とりあえず魔法関係のテストから始めるよ。」

 黒髪の青年は現れた時同様に、何の兆候も見せずに居なくなった。

「ふー、いきなり色々任されちゃいましたね。」

「それにしても一方的ですね」

「ま、私たちがどうこうできる存在ではないですからね。」

「傲慢と捉えることもできますが、余裕と言うものなんでしょうか。」

「でしょうねー。」

 というか、あの人の名前、儘っていうんですね。

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