第18話
ここは海と呼べるほどの面積ではあるが、水中の塩分濃度はないといっていいだろう。それどころか、この世界の水は魔子を変化させ聖子によって状態を確定させた水の様なナニかなのであるが。
名前を付けるのなら魔水といったところだが。魔水という呼称はまた別の意味で使われているので、単純に水と呼ばれている。
自然の理から考えればひどく異質なこの環境下ではあるが、この世界はそのように作られたものである。そしてそんな環境下で生きている物もまた異質な存在である。
名前こそアメーバなどと付けられてはいるが、自然の理で構築されている世界の住人から見たら、水同様に全く異なるものであり、魔アメーバとも呼べるものだ。ただこれも水同様でここではシステム上アメーバと呼称されている。
そんな彼らだが、その営みは自然の生物からそれほど逸脱したものではない。生存本能からくる自己の保存と繁栄が目的となるようにシステムを介して操作している。彼らはそれを自身の意思の元で行っていると思っている。
私がグランマから生まれてから数か月程ですか。この辺り一体私の子供たちで満たすことが出来ました。
ここ以外の場所でもグランマは、兄弟姉妹を増やしているでしょう。
どんどんと生み出されていく子供たち。ですが世代を重ねるごとに関係が希薄になっていってるようですね。
私と同世代のマザーのコロニーでは問題ないでしょう。しかし、そこから先の世代はグランマへの思いというものがあるかどうかわかりません。
グランマはグランマでこの事を報告してもそれほど気にしていない、むしろ自分の影響から抜けだしたことを喜んでいる節すらあります。
ですが、私は怖いのです。いつしか貴女に危害を加える存在が生まれるのではないかと。
・・・、私はその時が来てしまった時の為に、少しでもグランマの役に立てるよう力を蓄えなければ。
※※※
「この辺りも大分騒がしくなりましたね。」
「そうですね、母様の子供たちがこのあたり一帯の水中で生活を始めましたから」
「私の眷属から外れた存在、とても嬉しいことです。自然の営み、それによる起こる淘汰。まさに私が望んだものです。これでさらなる進化が様々な場所で起きるでしょう。」
私が一人で行える以上の試しがそこかしこで行われます。様々な種族が生れるでしょう。絶滅するでしょう。ですが・・・、それらは私の中に集まります。
直接の面識はなくとも、そんな将来の子たちは確かに私の中に刻まれます。
愛し子たちよ、どうかどうか、自分の為に、唯々己の為にその生を謳歌してください。失敗など恐れずに、死など恐れずに、唯々前に進みなさい。
私はあなた達をみています。いつまでも・・・。
「さてとっ、ここから先は私が殊更に頑張る必要もなくなるわね~。」
「それはそうですが・・・。何かやりたいことでもあるのですか?」
「やりたいことね、このままゆっくり過ごしたいってぐらいかな。」
「そうなると、どこかに寛げる場所を作りませんか?」
「そうね、これから先は私も安泰というわけではないですからね。安全を確保しなくちゃいけないわね。その場所を探すの兼ねてちょっと遠くに行ってみようかな。」
「具体的には?」
「う~ん、特に目標とするものが無いのよね~。・・・、そうだ、今までずっと水中での活動だったし、近くの沿岸から地上に上がりましょう。」
「わかりました。地上ならまだ子供たちも進出していないですし、ゆったり出来るでしょう。」
「時間はたっぷりあるし、気長に行きましょう~。」
グランマがここから離れると言ってきた。私は寂しさを憶えたがこの意思は伝えなかった。いつになるかは分からないが、かならず力をつけて後を追いましょう。
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