第12話
―――管理者達の失敗と修正―――
「マスター、魔核の解析終わりました。」
「流石、仕事が早いですね。それでどうでしたか?」
ここは彼らが管理している世界とは隔絶された空間、その世界の創世者権限と管理者権限を保有しているか、より上位の権限を持っている物しか立ち入ることが出来ない場所。
そんな場所に黒髪の青年と、紫髪の女性が周囲に浮かんでいる半透明のウィンドウに囲まれながら話をしている。
「マスターの予想通りこの魔核は、モデルエネルギー第5位階魔子で作られており。魂に似た性質を持っています」
「なるほど、なぜ彼女とその状態が異なるのかはこの場では置いておくとして、これで、この世界でも彼女と彼女の眷属以外の命が生まれることになりそうですね」
「はい、当初私たちが想定した第4位階エネルギーを使用した魂の自然発生を促す。この試みからは大きく外れることになりますが。」
「まー、それに関しては失敗と言っていいでしょう。唯一の発生例が彼女だけですからね。」
「流石に失敗と決めるのは早計では?」
「そうは言っても、相当な時間観察を続けた結果だからね~。これ以上は待つつもりがない、というか・・・、彼女がこれからどんどん増やしていくでしょ。」
「なるほど、そうなった場合自然発生での新しい命の誕生は今後も起こるかもしれないですが、それよりも彼女によって生まれる存在の方が多くなるから、私たちの試みは失敗であると言える、ということですか。」
「うん、そんなところだね。今後自然発生するかどうか疑わしいところだけど」
「マスターはその確率が低いと思っているのですか?」
「そうだよ、理由としてはあまりにも彼女に力が集まりすぎていてね。魂が発生するための要素が彼女に流れ込んじゃってるみたいなんだよ。」
「それは私の方でも認識していましたが、この世界全体に影響を与えるほどなのですか?」
「そ、影響を与えるほどにね。それに第5位階迄だけど・・・、彼女のやってることは僕たちの権能を行使しのと同じような状態だからね。だからちょいと方針を変えて彼女を介して色々やろうと思ってる。」
―――――
「尊い犠牲でした・・・。」
「いや・・・母様、勝手に殺さないでください。」
「こういうのはノリですよ。」
「ノリで殺さないで下さい。確かに今の私たちは、動物として生きているか微妙な状態ですが。」
「確かに、鉱物のような魔核に宿った意識ですから、生物とは言えるでしょうがね。そうですね~、マナスとかエーテル体とかそんな感じですか?」
「正直よく解らないので、母様の考えで決めてください。」
「じゃ、貴方たちは今日から私のマナスということで。」
―――
魔核レベル1がマナスレベル1に変更になりました。
―――
「名前変わりましたね~。」
「変わりましたな~。」
彼女が生み出した魔核には意識が宿っていた。それも複数の生命を一つにまとめ上げた。
かつて別々の意識を持ったものを一つに練り上げた意識が。
このような雑談をしつつも彼女は自分の体の具合を確かめている。
※※※
「アメーバの頃に取得したスキルは使えるみたい、ただ移動に関しては種族の水棲アメーバに準拠しているからか今一扱い辛いですね。」
「それが今後の課題ですか。」
「そうね、水棲スライムって種族を作らないといけないかしらね。ただこの場合だと進化するたびに種族を作らないといけないから面倒だし、ここは別の方法を試してみようと思うの。」
「どの様な方法で?」
「今まで私は種族として持ちえた肉体と生命力に依存したスキルと、レベルシステムを利用して得たものが殆どだから、ここは魔力を用いた何かを得ようと思うの。」
「なるほど、しかしそうなると時間がかかりますね。」
「そうね、私はまだ魔力の扱い方が理解できていないからね。まずそこから始めなくちゃ。」
「魔力の扱いですか・・・、それに関しては何とかなるかと思います。」
「あら?そうなの?」
「はい、私は魔力の塊のようで、この状態になってから、何となくですが認識できるんですよ。」
「じゃ、それをスキルに出来れば、私でも魔力を扱えるようになるわね。」
「はい、少し時間を掛ければ手に入れられると思います。」
「そっちはお任せするわ~。私は周辺を探索しながら、新しい子供たちを方々に拡散していってるわ~。」
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