第一章 伯龍、紅蘭の見合いを画策す【後編】


「これがいな? 春にいつしよに田植えをしたいねがここまで──」

「そうですよ、ぼつちゃん。よくがんりましたね。坊ちゃんが、植えてくだすったなえがこうやって収穫して食べられるまでに育ったんです」

 紅蘭は、幼いころから父と共に華安城近くのいくつかの農村をおとずれていたが、そこに新しく伯龍も加わった。

 紅蘭が、伯龍にすいせんの球根を育てさせて以来、伯龍は笑顔を見せるようになった。

 伯龍が笑ってくれるようになったことが、紅蘭にとってはただただうれしかった。共に、訪れる農村でも、少年らしい表情を浮かべるようになっていた。

「伯龍、君が花国に来てもう二年になるか。君にできることは花を育てたり、稲を育てたりすることだけじゃない。まだまだいくらでもあるんだ。手始めに、うちのむすめに勉強を教えてやってはくれないかね。君はなかなかのしゆうさいだと聞いているよ」

「はい、僕でできることなら」

 伯龍のかたたたきながら言う花文王に、伯龍は頷いた。



ひめ様、姫様」

「ん……」

「井南の郷に着きましたよ」

 紅蘭は、目をこすりながらぶたを開く。

「……夢を見ていたわ」

「さようですか、どのような夢を?」

 問う伯龍の声があまりにも間近、すぐ真上から降ってくることにかんを覚え、その声の主をぼけまなこで探す。

 目の前に、紅蘭のものではないこんほうがら。視界と頭がはっきりとしてくると、それが伯龍のものだとわかる。自分が伯龍に寄りかかってうたた寝をしていたことに気付いた紅蘭は、

「きゃっ」

と小さく悲鳴を上げて、伯龍を両手でき飛ばすようにして飛び退いた。

 紅蘭の背が、ムギのまったあさぶくろにぶつかる。

「危ない」

 伯龍の手がびて、再び紅蘭を自分の方へと引き寄せた。

「寄りかかってきたのは姫様です」

「ごめんなさい」

 ぜんと答える伯龍に、紅蘭は謝るしかない。

(あ~あ、夢の中の伯龍はあんなに可愛かわいかったのに──って、それよりも、しゆうかく、収穫。頭を切りえなくちゃ)

 心の中で夢をはんすうした後、高鳴るどうを何とか抑えようと伯龍以外のことを無理やり考えながら紅蘭は馬車を降りた。

「ようこそ、いらっしゃいませ。公主殿下」

と、こうとうする郷人たちを、紅蘭は立ち上がらせる。

「いいのよ、もういつもそんなことしなくていいって言っているでしょう。私たちは同じ人と人なの。それに、今日はきびの収穫を手伝いに来たんだから。私のこともただの郷の娘だと思って使ってちょうだい」

 伍会がここにいたら、「下々の者とそのように気軽にお話しになるなんて」と顔をしかめて説教を始めるだろうな、と紅蘭は思う。

 伯龍はそんな態度の紅蘭には慣れきっている。すずしい顔で横に立っていた。

「それに今日は、いいものを持って来たのよ。来て来て」

 郷人たちを手で招いて馬車まで呼ぶと、紅蘭はコムギとオオムギの入った袋の口を開けて見せる。

「新しい西域の穀物が手に入ったの。しかも、冬にさいばいできる穀物よ」

「おおっ」

 紅蘭の説明に、郷人たちの間にどよめきが起きる。

「ね、輪作にぴったりでしょう」

 郷人たちは、がおうなずいた。

 中の一人、郷のおさが、うつわを手に紅蘭に近付く。

われわれからもひとつ報告があります。公主様に教わりながら栽培を始めた野生のツルマメが、上手うまく根付きました。昨日、収穫したものをてみましたので、どうぞおし上がりください」

「まあ、きゆうきん、ありがとう。それは食べてみたいわ! みんなの分はあるの? みんなで一緒に食べましょうよ」

 紅蘭の言葉を合図に、郷の女たちが大きななべを持って屋内から出て来た。

 女たちは、豆のあつものわんにすくっては、次々と郷人たちにわたす。

 あたたかい食べ物を前にして、郷人たちのきんちようゆるんだようで、だいに紅蘭、伯龍とのきよを縮めると、声をかけ始めた。

「姫様、先年のいくさで姫様が手ずから手当てしてくださった傷、こんなにれいに治りましたよ」

 そう言って、すそをまくり上げる男の頭を、となりからぴしゃりと叩くのは男の妻。

「あんた、きたない足を姫様に見せるんじゃないよ」

「汚くなんかないわよ。国のために立派に戦ってくれた足だわ」

と、紅蘭は声を上げて笑う。

「さあ、羹を召し上がってください」

 すすめられて紅蘭は、一さじすくって口に運んだ。

 煮込まれた豆は、とてもやわらかく、むと甘みがふわりと広がった。

 口の中でほろりとくずれるが、ふだん食べている黍やあわよりもつぶ自体が大きいせいか、食べているという満足感が大きい。

「これ、美味おいしいわ。伯龍も食べてみて」

「いただいていますよ、これは肉のないときじゆうぶんに代わりとなりそうですね。なかなか食べごたえがあります」

 豆をゆっくりと嚙みしめてから、伯龍も郷人たちに感想を述べた。

「そういえば、さいしよう様は独り身ですよね? まだけつこんされないんです?」

 赤んぼうをおぶった女が、伯龍の器におかわりをぎ足しながらたずねる。

「子どもは可愛いもんですよ。宰相様の子なら、きっと頭のいい子に育つでしょうねぇ」

 片手で赤子をき、幼子の手を引いた女が、伯龍にじやな笑顔を向けた。

 とつぜんの問いに、まず紅蘭がおどろき、激しくむせる。

「ああ、公主様、だいじようですか」

 そばにいた若いむすめが、急いで紅蘭の背をさすった。

「よく煮込んだつもりだったけれど、かたかったかしら……」

 娘は、き込む紅蘭を心配そうに見つめる。

「いえ……、ゴホゴホ……大丈夫よ」

(伯龍が何て答えてもどうようしないようにしよう)

 落ち着こうと深呼吸しようとして、よけいにせきが止まらなくなった。

「このように、まだまだ危なげな公主殿でんをお助けせねばなりませんから。私は、国と結婚したようなものですよ」

 涼しい顔で答える伯龍がみようにくたらしくて、紅蘭は咳き込みながら目だけで伯龍をにらんだ。

「まったく、こんなに国のことを考えてくださる宰相様のいらっしゃる国に暮らせるなんて、うちらは幸せもんだよ、花国に生まれて本当によかった」

と、郷人たちは伯龍の答えに満足したように頷いている。

 そのとき、ふと思い出したように、二人の子を連れた女が口を開いた。

「ああ、そんな宰相様を見込んで相談があるんですよ。ちかごろさとの周りにみんがうろついているんです」

「流民?」

「ええ、おそらく先年の戦で焼け出された郷のもんでしょう。元はうちらと同じ、農民だってわかっちゃいるんですけど、うすよごれた身なりを見るとこっちも何かされるんじゃないかって、子連れのせいか身構えちゃいましてね。実際、何かあったわけじゃないんだけど」

「うん、あたしもせんたく行くとき、ちょっとだけこわいなぁって思ってた」

 紅蘭の背をさすってくれている娘も話の輪に入って来る。

「そうでしょう。うちみたいなとうの立った女ですら怖いんだから若い子はよけい怖いよね」

 彼女たちの言うように、元は同じ農民にちがいない。ただ、どちらの郷の近くで戦が起きたか、幸不幸を分けるのはただそれだけだ。

 おそらく流民たちは、董国との国境近くの郷に住んでいた者たちだろう。先年の戦で、董国によって焼かれた郷に住んでいたのだ。

 そして、彼らが住んでいた郷を元の通りにもどせないのは、王族とかんの責任である。

「伯龍、それはすぐに何とかしないといけないわ。今日、帰ったら対策を考えるわよ」

 公主としての顔を取り戻し、しんけんな顔でうつたえる紅蘭に、伯龍もしゆこうした。



「さて、きびしゆうかく、やっちゃいましょうか」

 豆の羹を食べ終わった紅蘭は、こしを上げる。

 羹ですっかり温まり、額からはあせが流れている。

「こちらの畑です」

 丘金に案内されて歩きながら、紅蘭はほうそでで額の汗をぬぐう。背後から伯龍が、そっと紅蘭にしゆきんわたした。

「ありがとう」

 言いながら紅蘭は、その手巾で流れる汗を拭う。

「さて、これが今日収穫する予定の黍でございます」

 紅蘭の背より高く育った黍は、おをするように黄金こがねいろさきを垂らしている。

 紅蘭は丘金から渡されたてつがまを手に、びして穂をつかむと、その束をり取った。

 刈り取る際にこぼれる黍の実をねらって、すずめが飛んでくる。雀たちは、可愛かわいらしい声で鳴きながら、穂から落ちた黍をしきりについばんでいた。

 一刻もしないうちに、汗がき出して、紅蘭の首筋を伝う。

 黍の穂が屋根のように日差しをさえぎっていてくれたのだが、穂を刈り取れば刈り取るほど、強い陽光が直接、紅蘭のはだを焼いた。

「ああ、伍会にまたおこられてしまうわね」

 日差しで赤くなった手のこうを見て、紅蘭は笑う。

「俺たちは、日に焼けた公主様の方が好きでさぁ」

「あんたったら、公主様に対して何をおそれ多いこと言ってるの」

「おい、鎌をり回すんでねぇ!」

 先ほどの民と妻の声が、黍の穂の向こうから聞こえて来る。

「ありがとう。そう言ってもらえてうれしいわ」

 答えながら紅蘭は、流れる汗をそでぐちで拭った。

 手巾は帯にはさんでしまった。鎌を一度置くのもめんどうで、ぶたに落ちてくる汗を、今度は手の甲で乱暴にき取った。

「あ、ひめ様」

 隣で同じように黍を刈り取っていた伯龍が、紅蘭に近付く。

「まったく……お顔がどろだらけでいらっしゃいますよ」

 言いながら、伯龍は自らの袖で紅蘭の顔を拭った。

 間近にせまった伯龍の額にも、首筋にも、汗がにじんでいた。

 伯龍に聞こえてしまうのではないかと心配するほど、紅蘭の心臓がはやがねを打つ。

「あ……ありがとう」

 ほおりをかくすように、紅蘭は伯龍から視線をはずす。

「あ……」

 それまで何のためらいもないように、なめらかに動いていた伯龍のうでが止まる。

「ああ、失礼いたしました。姫様が子どもの頃からまったく変わっていらっしゃらないので、つい」

 謝る伯龍に、紅蘭は口をとがらせる。

「ひどい、伯龍ったら。私を子どもあつかいしていたの?」

 周囲の民たちも、どっと笑った。

「それは宰相様がひどい、姫様はこんなにもお美しくお育ちなのに」

「本当だ、うちの郷に初めていらしたときは、まだ俺の腰ぐらいまでしかなかったけどな。いまじゃ、立派なご婦人におなりだ」

「本当よ、伯龍。こんな美しい姫を前にして、子ども扱いなんて!」

 高鳴るどうを隠すように、紅蘭はわざと大きな声を上げた。

 再び民たちがさざめくように笑う。

みなで食べ、皆で笑う。こんな時間が永遠に続けばいいのに。そして、伯龍にもずっと、となりで笑っていてもらいたいのに。見合いなんてしないで、ずっとこうしていたい──いや、夢想するだけじゃダメね。そうできるように、自分で何とかしていかなくては!)

 紅蘭は、再び黍の穂を強く摑んで刈り取っていった。



 荷運びの終わった季雲と合流した紅蘭と伯龍は、別れをしまれながら井南の郷を後にした。

 紫微宮の正面に馬車が寄せられると、伍会が走ってきゆう殿でんから飛び出して来る。

 昼の長い季節だというのに、もうすっかり日はかたむいていた。

「姫様~、まったくこんな時間まで何をしていらっしゃったのですか! しよう合わせをする時間がもうないではありませぬか。それに、おぐしからお顔から、何から何まで泥だらけでいらっしゃいますのは、どういうことでしょう!」

 ねぐらに帰って行く鳥たちの鳴き声のように高い声で、伍会はわめき散らしている。

「畑仕事を手伝いに行ったのだから、泥だらけになるのは当たり前でしょう。伯龍だって泥だらけだわ」

 紅蘭の背後で、伯龍はうなずく。

「しかし、姫様は女性であらせられますし、九日後には見合いのうたげひかえていらっしゃるのですよ。ああ、よく見ると日焼けまでしていらっしゃるではないですか! 公主殿下が日焼けなさるなどぜんだいもん! 姫様も、まもなく見合いをしてけつこんするみようれいの身分高き女性だということをいい加減、自覚なさって下さいませ。この伍会には、頭の痛いことばかりでございます」

 伍会はおおぎように頭をかかえてから、手をたたいてによかんたちを呼び寄せる。

「早く姫様を白蓮宮にお連れして。至急、肌のお手入れを。みの後、そうで全身をみがき上げて差し上げるように」

「かしこまりました」

 女官たちは、両手を重ねきようしゆすると、こうべを垂れた。

「ちょっと待って、勝手に決めないで! そんなぜいたくなもの必要ないわ!」

 紅蘭は、伍会に対してこうの声を上げる。

 澡豆には、土瓜根からすうりのねじやこうびやくだんをはじめとする多数の生薬に、今日、さとたみたちがごちそうしてくれた豆類も入っている。

 それを、食べもせず身体からだりつけて洗うだけなど贅沢のきわみであり、そこまでしてはだを保つことに紅蘭はごろからていこうを感じていた。

 王族が絹織物をまとい、金やぎよくで身をかざり、澡豆や白粉おしろいで肌を整えても民たちが不満の声を上げないのは、民たちが安心して暮らせる世を保つ義務と責任を果たしているからである。

 紅蘭は幼い頃、母とわした会話を思い出していた。

 母は白粉など塗らずとも色白で、とても美しい人だった。

 女官にすべてを任せず、手ずから紅蘭のかみをよくいてくれた。

「お母様、そのくし、とてもれいね。大人になったら、私にちょうだいね」

「ええ、いいわよ。紅蘭が、民や国のことをきちんと考えられる大人になっていたらね」

 ほうおうかしりがされた櫛を見てじやにねだる紅蘭に答えながら、形の良いくちびるみをく。

「民や国のことを考えられる大人? それって何?」

「この見事な細工の櫛はね、民たちがたくさん働いてくれたから、ここにあるのよ」

「民たちがいつしようけんめい作ってくれた櫛、ということ?」

「確かに、これを直接、細工してくれた民もいることでしょう。でも、それだけではなくね。この櫛はとても高価なものなの。それこそ、つうの民であれば一年食べられるぐらいの価値があるものよ。でも、そういった高価な櫛を使い、民たちが袖を通すことのできない絹織物を身にまとっても、民たちから石を投げられないでいられるのは、上に立つ者としての責任を果たしていると民がどうにか認めてくれているからなの」

 母は、花国に初めて、どんな身分の者でも等しくりようを受けることのできるりよう院を私財をなげうって建てたのだと、その礼と感謝の気持ちを込めて民たちが皆で櫛をおくったのだと、後に伯龍から教わった。

「紅蘭はまだ子どもだから、何もしなくても綺麗な絹を纏っていられるわ。でもね、あなたが婿むこぎみむかえるほど大人になったら、民たちはあなたにも王族としての責任を無言のうちに求めるでしょう。そのときに胸を張って、美しいかんざしや玉でかざってられるように、日々、民のために努力するのですよ。もし、民たちが苦しむ世になったなら、まずその身を飾る絹をぎなさい。簪や玉を売ってでも、えに苦しむ民たちのためのしよくりようを他国から買い付けなさい。私たちは民や国を生かすために存在しているのですから」

 そう、母は紅蘭に教えてくれた。

 逆を言えば、その義務と責任をほうり出して、美しく着飾ることはできないのだ。

 紅蘭は、自らが澡豆のような高級な物を使用してよいほど、国のために働いているとは、まだ思えなかった。伍会と女官たちに無理やり連れて行かれそうになりながら、紅蘭は振り返って伯龍に助けを求める。

「今回は、見合いの宴という特別なのための準備ですから。これも、国のため。美しく飾り立てて自らの価値をつり上げるのは、姫様の愛する民のためと考えてごらんになっては?」

「もうっ、伯龍まで!」

(見合いの宴を提案されただけでも腹立たしいのに、ほかの男に選ばれるための準備をしろだなんて、国のためとはいえ本当にひどい! ……といっそ言えたら楽なのに)

 紅蘭はあふれるいらちをおさえつつも、とがめるように伯龍をにらむ。

「ああ……そうだわ、ちょっと待って、これだけは──いますぐ、そう、いますぐ伯龍と話をさせてちょうだい。まつりごとに関する大事な話なの。後できちんと湯浴みするから」

 そう言うと、紅蘭は女官たちを振り切って、伯龍のもとにけ寄った。

「伯龍、今日聞いたみんたちのことなのだけれど。井南の郷以外にも、へいえきで男手を失って、困っている郷はたくさんあったわね? これから、きび以外にもあわいねしゆうかくが控えているわ。人手が足りないとき、足りない場所に、その流民たちをけんすることはできないかしら?」

「それは、流民たちに新しい郷をあたえるのではなく、日によって働かせる場所を変えるということですか?」

「そう。もちろん、ずっとそのままというわけにいかないのは、わかっているわ。もともと彼らが住んでいた郷を、ゆくゆくは元通りにしてあげたい。でも、まだそれを実行に移すには、じゆうぶんに国庫がうるおっていないと思うの。だから、ざんてい的に──そうだわ、宮城内に空いている宮はたくさんあるのだから、そこに住まわせてあげて、贅沢なぜんは出せないけれど何か食べ物を配るぐらいのゆうはあるわよね?」

「ええ、それぐらいであれば」

 伯龍は、いつしゆん思案するようにななめ上に視線をさまよわせたあと、首を縦にる。

「そして、その者たちに畑仕事でも土木作業でも、何か手が足りないところがあれば手伝ってもらう。その日働いた分の対価は国がはらう。そうしていくうちに国全体の収穫高も上がっていくはずだから、彼らに対価を払ったとしても彼らの郷を元にもどす余裕も国庫に生まれるのじゃないかしら。帰る道すがら、ずっと馬車の中で考えていたのだけど……伯龍はどう思う?」

ひめ様にしては、よいお考えだと思いますよ」

 伯龍は紅蘭の提案に、頷いてみせた。

「〝姫様にしては〟って、まったく一言多いんだから」

「姫様が湯浴みをしていらっしゃる間に、これからどこの郷でどれぐらいの人手が足りなくなりそうか、まとめておきます。明日あしたにはおわたしできるように」

 紅蘭の文句も気にせず、すずしい顔で伯龍は答える。

「ありがとう、伯龍。では、明日。よろしくたのむわね」

ぎよ

 拱手ししやくする伯龍を背に、紅蘭は女官たちの元に戻る。

(私はやはり、伯龍と共にこの国の未来を作っていきたい──)

 そう、強く思いながら。

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