第一章 伯龍、紅蘭の見合いを画策す【前編】

「見合いのうたげ!?」

「はい。いま、ちよつきよいただいた宴はひめ様の見合いの宴です。申しおくれており、失礼いたしました」

 の宴を行う、ぐらいの軽い口調で告げるのは、こくさいしようしゆえいあざなは伯龍。

 その向かいに座った花国公主、紅蘭は大きく目を見開いた後、手元の木簡をかくにんする。

 しかし、確認するまでもなく、伯龍からの上奏文に、

よろしい

と、書いたばかりのすみかわかぬ自筆の文字が目に映った。

 紅蘭は、何度か目をこすり、しばたたかせてみたが、「可」の文字が消えるはずもない。自身を落ち着かせようと、息を大きく吸い込んでから、紅蘭は伯龍に問う。

「で、だれの見合い?」

 伯龍は、紅蘭の問いに表情をまったく変えることなく答えた。

「ですから、先ほど申しましたように姫様の、婿むこぎみを選ぶための見合いです」

「なぜ私が見合いなんて──」

「姫様も今年でおんとし一七歳、おとしごろでいらっしゃいますから」

 伯龍は、そう答えながらくちびるに美しい笑みをく。

 紅蘭は、伯龍の書いた上奏文を再び読み返した。

「私の……婿君選び? 〝宴〟とはあっても、どこにも見合いだなんて書いていないわ。だましたわね、伯龍!」

「公主様を騙すだなどおそれ多い、ただ私が何の宴か書き忘れただけにございます」

 伯龍はひようひようと答える。

 しかし、ぶんおうぜんぷくしんらいを寄せ、国中の誰もが認める名宰相の伯龍に限って、うっかり忘れたなどということはあるはずがない、絶対にわざとだ、やられた! と紅蘭は思った。

「で、どういうわけで私が婿君選びの宴など開かなければならないの?」

「花国に残された王族はいまや姫様のみ。姫様がどこかへとつがれては、花国がほろんでしまう恐れがあります。それで、おのずと婿君とえんみされるしかないかと」

「そんなこと私だってわかっているわ。そうじゃなくて、なぜ私が見合いで婿むこ殿どのを選ばなきゃならないか、ということを聞いているのよ! 婿君となる方ぐらい自分で見つけられるわ!」

 紅蘭はから勢いよく立ち上がると、づくえしにその上半身をぐいと伯龍に寄せた。

「それに、そんな婿君選びなんかより先に、まずは私が女王としてそくするが先だと思っていたのに。いきなり、見合いだなんて……」

 言いかけた紅蘭の言葉をさえぎるように、伯龍が口をはさむ。

「いきなりではありません。姫様とて、ご自身がいませつぱくしたじようきように置かれていること、ご承知のはず」

 そう言われて、紅蘭は身を引きながら口をつぐむ。

 西さいいきの血が混ざったかのような高いりよう。整ったまゆの下のくろつるばみいろひとみは、射るように紅蘭を見つめている。紅蘭が主、伯龍が従であることを忘れさせてしまいそうな、強いまなし。

 少年の頃のうれいを帯びた何も映そうとしない黒曜石の瞳は、輝きを取り戻したあの日を境に、いつしか強い意志を持つようになっていた。

 いまここで伯龍を言い負かす自信は紅蘭にはないし、伯龍の意図するところも理解している。

 伯龍の言うように、紅蘭の、そしてこの国の置かれた状況を考えると、確かに婿君選びをするのが上策である。紅蘭も、王族である自らにともなう責任は重々承知していた。

「わかったわ」

「姫様ならそうおっしゃって下さると思っていました」

 そう言って、伯龍は唇のはしを上げる。

 かつて物言わぬ人形にしか見えなかった少年は、いつしか自在に表情をあやつるようになっていた。しかし、紅蘭はいまだ彼の出自について、何も知らない。

 父王が「兄と思え」と言ったのだから、ある程度の身分を持つ者であろうことは推測できた。ただ、それを明らかにすることは、伯龍を悲しませることになるのではないか。かつての、世界をすべてきよしたような少年にもどしてしまうのではないか。そんな恐れが、紅蘭に問うことを禁じていた。

「では、くわしい段取りについては、かんがんかいが準備しております。後ほどご確認ください」

ほかに、私が目を通す必要のある書簡は?」

「本日は先ほどの宴の件が最後です」

 すべての上奏文に目を通した最後の最後、「これは何の宴なの?」と問うことも忘れてしまう気がけた頃合いを見計らったかのように出してくるとは、相変わらずようしゆうとうなことだ、と紅蘭は思う。

 下唇をみながら、紅蘭はしつ室のあるきゆうをあとにし、しんしつのあるびやくれんきゆうへと向かった。

 紅蘭自身、いま、我がままを言えるような立場にこの国が置かれていないことはよくわかっている。




 白蓮宮に戻ると、待ち構えていたといった顔で伍会が紅蘭に告げた。

「見合いの宴は、十日後を予定しております」

「十日後!?」

 あまりにも急な展開に、紅蘭は思わず大きな声を上げて、聞き返した。

「ええ、十日後にございます。いえ、私は最初、反対したのですよ。なぜ、わざわざ婿君選びの宴など開くのか、と」

「え? 伍会は反対してくれたの?」

 予想外の言葉に、紅蘭は問い返した。

 紅蘭が小さな頃から、後宮で身の回りの世話をしていた伍会は、宦官の中でも古参中の古参で、いまは宦官すべてを束ねる最高位、だいちようしゆうの位にいている。伝統を重んじ、「公主様なのですから、もっとおしとやかになさいませ」と小さな頃からことあるごとに、紅蘭の立ち居振いを注意し続けて来た伍会のことだから、見合いの宴と聞いたら張り切って準備をしているだろうと思ったからだ。

「はい。いまは戦乱の世。いくさに敗れた国のこうや公主たちは、選ぶ余地もなくそのまま戦勝国の将に連れ去られたり王にささげられたり、そうなる前に自ら命を絶ってしまう者も多くいると聞きます。幸いにも、我が国はそこまでのき目にうこともなく、とうこくの側から『太子の後宮に入れるように』とのお声がかったのです。これを幸いと言わずして何と言いましょうか」

 によかんたちに夕のぜんの指示を出しながら、伍会は、かんだかい声でとうとうと語り続ける。

「たとえ、花国がなくなってしまったとしても、ひめ様が董国のような大国の後宮に上がって、そこでおきさきになれれば、花国の血筋は董国の王族の中につないでいけるわけです。王にめられ后になり、さらにこくとなることこそ、女性として生まれたからには最高のほまれでございましょう」

 自らが姫様とこの国の一番の幸せを考えているのです、とでも言わんばかりの顔で、胸を反らしながら伍会は話をめくくった。

 なるほど、そういう考えで反対したわけね、と、紅蘭はためいきいた。

「私はけしてそうは思わないわ。幸いにも、この王都までめられることなく、私は無事に命を繫ぐことができた。なら、女であるとか男であるとか、性別に関係なく、花国に残された最後の王族として、国を守るためにできることがある。そう思っているわ」

 紅蘭の答えを聞き、今度は伍会の方が溜息を吐く。おそらく、

(また、女性らしからぬおてんなことを考えていらっしゃる)

とでも言いたいのであろう。見なかった振りをして、紅蘭は先を続けるよううながした。

「それで? うたげの話を続けてちょうだい」

「はい、宴を開くとなったならば、どこの馬の骨とも知れぬ身分の男性を婿殿としてむかえるわけには参りませんから、厳選に厳選を重ねた、ちゆうげんの主立った国の王族、貴族の方々を中心に大勢招待する予定でおります。ええ、こうなったら、我が古き伝統を持つ花国の王家にふさわしい殿方を集めてみせますとも。董国が何を言って来ても、『ああ、このお方なら仕方ない』とあきらめざるを得ない殿方を婿に選んでしまえばいいのですから。相変わらず、朱宰さいしよう殿の才覚には舌を巻くばかりです」

 伍会の最後の一言に、紅蘭はいつしゆん、眉をひそめた。

「伯龍がすべて考えたことなの?」

「ええ、ほぼ朱宰相殿のお考えにございます。私は先ほども申しましたように、董国の後宮に上がる方が姫様にとっては幸せだと思っておりますから。とはいえ、決まってしまったことですから、仕方がありません。この伍会、見合い当日までに、うでによりを掛けて、姫様をそれはそれは美しくみがき上げて差し上げようと思っております。今日も、おはだによいお食事を用意いたしましたので、どうぞゆっくりとおし上がりくださいませ」

 そう言って伍会が立ち去ると、入れわるように夕の膳を持った女官たちが部屋へと入って来た。



 董国とは、花国の北東に位置する新興国家である。

 周囲の小国をほろぼしながら領土を広げ続ける董国は、以前から花国の国境もおびやかしていた。そして、先年の戦ではとうとう、けんおうと誉れ高き花文王をうしなった。

 これにより、花国の王族は紅蘭を残すのみとなったが、董国は花国を滅ぼすことはせず、その代わり、

「公主・紅蘭を太子の後宮に入れるべし」

と、言ってきたのだ。

 そして、矢のようなさいそくがいまも送られ続けている。

 紅蘭は、長いこと無視を決め込んでいたが、外交上、そんな子どもだましが通らないこともわかっていた。

 花文王がたおされたとき、花国自体が滅ぼされても仕方がなかった。

 それでも国家としての存続を許されたのは、花国の姫を後宮に迎えることで、この件は手打ちにしたいという董国側のおもわくがあったせいだろう。軍事的におとった花国が、その催促をっぱねるためには、それ相応の理由がなければ難しい。

 ここで、紅蘭が女王として立てば、それは董国の後宮入りをこばむ意志を対外的に宣言することになり、実質的な宣戦布告と取られるおそれがある。

 確かに伯龍の考えた策なら、董国をだまらせることができるだろう。大国から婿むこぎみを迎えることに成功さえすれば、婿君の故国が董国にたいこうする後ろだてとなる。その思惑にふさわしい婿君を早急に探すために、見合いの宴を開く。

 そのくつは、紅蘭にもわかっていた。

鹿みたい、きっと花国に伝わる神話を信じて私を後宮に入れたいだけなのよね」

 ぶたにくと野菜がまれたあつものを一口飲んでから、「はぁっ」と溜息を吐く。

 となりきゆうをしていた仲の良い女官のしようおうが、心配そうな表情をかべながら紅蘭を見つめる。尚桜の母は紅蘭の乳母うばであり、幼いころから本当のまいのように育って来た。兄弟姉妹も友人と呼べる存在もいない紅蘭にとっては、女官というよりゆいいつ無二の親友といったところである。

 いま花国が置かれているじようきようを考えると、ついついゆううつになってしまい、なかなか食の進まない紅蘭に、尚桜はそっと声を掛けた。

「『花国の王族の女性は〝ほうおうの卵をいだく姫〟、その姫を手に入れた者こそがの大地すべて、天下を統一する王となる』という、あの伝説ですか」

 紅蘭は、尚桜の声にわれに返ると、「そう」と言ってうなずいた。



 この華の大陸には、昔からある神話が伝わっている。


 太古の昔、こうりゆうとなりて暴れくる

 華の地はあふれる水になすすべもなく

 山もおかも人も家もすべてがみなそこくずと消ゆ

 華の地に残されし者はただ二人

 ふつ、妹のじよのみ

 湿しつの中を百日、歩けども歩けども二人の前に生命はなく

 二百日が過ぎ、二人はふうちぎりを結ぶ

 三百日が過ぎしとき伏羲は湿地につえを差す

 ぐるぐる杖をかき混ぜて、そこに大地を生み出せり

 女媧は大地に子を産み増やす


 伏羲はこくの王となり

 女媧は花国の女王となりき

 女王のすえは鳳凰の卵を抱き

 その隣に立ちし者こそ華の地をべる王とならん


 つまり、花国の王族はこのがみ・女媧の子孫だというのである。

「私は女神様の子孫だなんてまったく自覚はないけれど、まだ信じている人たちはいるのでしょう? そんな理由で、みなから求められるなんてまっぴらだわ。董国がしつこく私を後宮に入れたがっているのも、あのしんりやく好きの王のことだから、私を手に入れれば天下一統できるとでも思っているんじゃないかしら。馬鹿げたこと」

「いっそ、伏羲の子孫が作った儀国の公子様がいらっしゃればいいんでしょうけれど……」

「儀国は董国に滅ぼされてしまったのよね。見合いの宴も、創世神話を信じ、野心を持った者たちが集まるだけじゃないのかと心配だわ。伍会は、いえがらのよい公子様や貴族の方々を集める気満々みたいだけれど、高貴な身分ゆえに、花国の神話に夢を見ることはないかしら」

 紅蘭は、見合いの宴に対しての最大の不安を口にする。

「そうですね、神話を信じている国は多いかと思います。特に、古い王家の方々なら。しかし、董国は……姫様が先ほどからご心配しているような野心を持っていないかもしれません」

「どうして?」

 尚桜は、冷静にぶんせきするように、紅蘭に説明を続けた。

「いまのとうこくおうは、もともとはただの家臣、こくじようで先のけいれいおうから王位をさんだつしたのでしたよね」

「そうね。そのときに国号もいまの董に変えて──我が国や周辺諸国に、ひんぱんいくさけて来たのも、いまの王になってからね」

「はい。しかもその侵略の仕方が──滅ぼした国がまつる始祖神ごとほうむってしまうという神をも恐れぬやり方。儀国の王族が滅ぼされた後、伏羲とその子孫である王族が祀られるびようどうもすべてかいくされたと聞きます。そのような国が、神話を信じてひめ様を欲しがるでしょうか?」

「なるほど、確かにそうね。では、天下一統のために伝説を信じて私をほつしているのではないとしたら──董国が欲しているのは、私なんかではない。この国の地の利、そしてよくな大地かもしれないわね。でも、どうして、他人からうばわずに自分たちで国を豊かにしようとを使わないのかしら。私には理解できないわ」

「ええ、本当に」

 尚桜は、紅蘭の言葉に頷く。

 董国は、中原のほくたんに位置し、常に北の異民族からのきようさらされてきた。異民族による侵略を防ぐために、長城を築いていると聞くが、それには多くの労働者を必要とするだろう。えきのため農村から若い男は消え、自然、生産力も落ちることになる。そのため、より生産性の高い農地とたみを持つ国を求め、南へと侵略のしよくしゆを広げる。

(そんなことのり返しでは、永遠に戦は終わらないし、苦しむ民の数が増えるだけだわ。──とはいえ、あの董国も、なぜか我が国に対してだけは、無理やり力押しの侵略をして来ない。なぜ? それぐらい、花国が農地としてりよく的だということかしら……)

 紅蘭は、思案しながら再び羹を口に運ぶ。

 尚桜と二人話し込むうちに、夕のぜんは、すべての皿がたくに並べ終えられていた。尚桜以外のによかんたちはすでに全員下がっている。

「ああ、今日もまた何品もごうな皿が並んでいるわ。いつも、こんなに食べられないと言っているのに、伍会ったら。尚桜、こちらの肉の皿ははしを付けないでおくから、後でいつものように皆で分けて食べてちょうだいね」

「どうもありがとうございます、姫様。下働きの者たちは、いつもとても喜んでおります」

 礼を述べる尚桜に、紅蘭は本音をつぶやく。

「話はもどるけれど、神話をどうでもいいと思っているのは、私も董国王と同じかもしれないわ。私が女神の血を引いていて、私とけつこんした者がこの華の全土を治められる王になれるだなんて夢物語、さらさら信じてなんていないの。そんなことより、私が婿君に求める第一の条件は、この国の未来をたくすことができる人物かどうかよ。この国と民を理解して、愛してくれる相手じゃないと私はいや。たとえ家柄がよくても、そんな人物が他国にいるとは思えないわ」

「そうですね。この国と民を愛して善政を行ってくださるさいしよう様が姫様のお婿様になってくださったら私たちも安心ですわ。第一、姫様は宰相様のことが大好きでいらっしゃいますもの」

 尚桜は、半分からかうような口調で、紅蘭がかくしていた気持ちを言い当てる。

 とつぜん、本音をかされて、紅蘭はほおが熱を持ったようにるのを感じた。

「ちょ、待ってよ、尚桜! そうじゃなくて、国を託すのにだれが最適かという話をしているのであって、好きとかきらいとか……そういうことを言っているんじゃないのよ!」

「はいはい、姫様。わかっておりますよ。でも、私は宰相様と姫様がご結婚されたら、と本気でおうえんしております」

 気心の知れた者だからこそけられる言葉を紅蘭に向けながら、尚桜は声を上げて笑う。

 紅蘭は照れ隠しのように、話を伯龍のことから、見合いのうたげへと戻した。

「そんなことより──私もただ黙って見合いを受け入れるつもりはないの。表向きは物わかりよくしようだくするつもりだけれど、どこかでひっくり返してみせる──私にだって策があるわ」

「さすが、姫様。姫様はお小さい頃から、私たちが考えもおよばないことをされますもの。隠れおにで遊んでいても、皆が予想もつかないところに一人で隠れていらして探すのに苦労いたしました。そのうち、伍会様がやって来て、『公主様ともあろう者が、このようにおてんな遊びをしてはなりません。ことでもいてお遊びくださいませ』なんておこり出して……」

 尚桜は、幼い頃の事を思い出してみをかべながら、今度の宴ではどのような知恵を見せてくれるのだろうか、と期待に満ちあふれたようなまなしを紅蘭に向けた。

 紅蘭は尚桜にうなずきながら、心の中だけでそっと呟く。

(それに、いろいろ理由を並べ立ててみたところで、理由はしごく単純。私には、伯龍と作るこの国の未来しか考えられないから)

 最愛の父をうしなった後、泣き暮らし政務もおぼつかなかった紅蘭。

 父の後を追うように病で母后がくなったときは、紅蘭まで後を追おうとした。

「国をほろぼすおつもりですか? あなたまでいなくなったら、この国の民たちは明日からどうしたらよいのです? そんなことをして花文王が喜ばれるとでも?」

 そう言って、泣きさけぶ紅蘭をこの世にとどめてくれた伯龍。

 泣いて泣いて、なみだれ尽くすまでの間、紅蘭に代わって国が乱れないようだまってすべてを取り仕切ってくれていた伯龍。

 彼がいなかったら、紅蘭も、花国も、ここまで生きながらえていたかどうかわからない。

「尚桜、後で久しぶりにたんれんに付き合ってちょうだい。気持ちを切りえたいの。こんな気分のまま、られないわ」

「かしこまりました、けんにします? それとも弓にいたしますか?」

「そうね、今日は剣を」

 そう言って、紅蘭はしたあわを口に運んだ。




 翌日の朝。

 紅蘭は、しつように追ってくるかげからげようと、広大な華安城、白蓮宮のろうを走っていた。

「姫様、まるで男のような身なりでどこへいらっしゃるのですか! それに、今日は見合いの宴用に準備したしようができあがってくるのです。その衣装合わせがあるのですよ!」

「衣装合わせなんて、どうでもいいわ。衣装の良ししで私の結婚が決まるわけではないでしょう!」

 紅蘭は、それだけ言うと、り返りもせずに走り続ける。もちろん、王族がきゆう殿でんの廊下を走るなどあってはならない。

 その後ろを、伍会が追う。しかし、大長秋としての立場ゆえ、ほかかんがんたちの手本になるべきと思ってか、伍会の方は紅蘭のように走ることはせず、あくまでも急ぎ足で追うだけだから、だいに紅蘭との間は開いて行く。

 伍会は他の宦官の目を気にしているのかもしれないが、華安城の王宮は残念ながらよそのゆうふくな国のように、たくさんの宦官、女官が数多あまたひしめく場所ではない。

 そのしように、ここまですれちがった宦官は一人もいなかった。

 華安城の北側、白蓮宮は王族がきをしたり食事をしたりする、いわゆる生活の場、こうしんにあたる。さらに白蓮宮を包むように宮城の北奥には、後宮と呼ばれるこうたちが住まう場所がある。しかし、いまはほとんどの宮が、そのとびらかたざしていた。ごく少数の宮に、紅蘭の日常をたすける女官や宦官が住まうだけである。長いこと主人を持たず、手入れもされず放置されて、美しいそうしよくが退色してしまった宮も数多い。

 花文王は、皇后以外にきさきを持たなかった。

 そのため、後宮のほとんどのむねが使われることなく、宦官も女官も多くを必要としなかった。

 花文王がしようを持たなかったのは、皇后への愛ゆえである。ただ、そのことは結果的に、国庫のけんやくつながり、いくさ続きの世の中で小国を存続させるだけの軍を備えるたくわえとなった。

 たとえ自国が平和主義であっても、他国からしんりやくされ応戦せねば、国境が侵食されるだけでは済まず、国家自体がなくなってしまう。そのため、最低限の応戦は必要となり、その分、国庫はいやおうなく減っていく。おのずと、侵略されるばかりの国は倹約せねば生き残れぬ仕組みとなってしまっている。

 そんな不条理な世の中、ぜいたくな暮らしをしない父と母のおかげで、その一人ひとりむすめも、なことは好まず、しつじつごうけんに育った。

 王族が紅蘭だけとなったいまも相変わらず、後宮のほとんどの宮舎は閉ざされ、紅蘭は紫微宮で政務を行い白蓮宮で食事とすいみんを取るという生活を続けている。

 そして、いまや一人しかいなくなった王族をせめて見合いの宴のときぐらいは美しくかざり立てようと必死に追いかける宦官を、紅蘭は振り切るように紫微宮へと走り込む。

「姫様! 走るだなんて公主として大変はしたのうございます! どうか、お待ちください」

「待てないわ、伍会。今日は、あんみなとなんさとに行くのよ。先の戦でどこも男手が減って困っているの。今日は、港にたくさん積荷が届く日だし、井南の郷ではきびしゆうかくもしなくてはならないわ。そんなときにいつもみたいな格好はしてられないのよ」

 そう叫ぶ紅蘭ので立ちはというと、貴人が身につけるたっぷりとしたほうはかろうじて羽織っているものの、その下には女性が着けるはずのまとわず、代わりに身分の低い兵士たちが穿くような細身のはかまかわちようを身につけていた。

「ああもう、王族ともあろう者が、そのように身分の低い者のごとき身なりで外出されるなど……伍会は情けのうございます!」

「いつものヒラヒラとした裳では、いくらたくし上げても、畑仕事ができないでしょう!」

「ですから、王族のひめ様が畑仕事をするなんて、あり得ませぬ! 姫様には、王族としての自覚がおありなのですか?」

 伍会の言葉に、紅蘭はいつしゆん、足を止めて振り返る。

じゆうぶんにあるわ。父上から教わったのよ。『人の上に立つ者は、誰よりも多く働くべし』と。私が王族だと自覚しているからこそ、困ったたみを助けに行く、ただそれだけのこと」

「ですが、姫様は女性でいらっしゃるのですから、お城で大人しくなさっていても民も不平不満は言わぬでしょう。花文王も許してくださるはず」

「あのね、伍会。女だから、男だから──なんて関係ないのよ。民のために何もせず、民が必死にあせみず垂らして働いて納めたぜいで、のうのうと遊び暮らしている者は、ただの盗人ぬすつと。租税を納めて良かった、と思ってもらえる働きをしなくちゃ」

 言いながら、紫微宮正面の石段をけ下りた紅蘭は、待っていた二頭立ての馬車に飛び乗る。

「お待たせ、伯龍。出してちょうだい」

「姫様~!」

 伍会の叫びはむなしく紫微宮の前庭にこだまする。

「まったく相変わらずですね」

 あきれたようなこわで、伯龍はつぶやく。

「姫らしくないかもしれないけれど私をこう育てたのは伯龍よ」

 紅蘭は微笑ほほえみながら答えた。

 伯龍も、紅蘭に満足げな笑みでこたえる。

「人の上に立つ者は、だれよりも多く働くべし」の教えは、父と共に、伯龍もその身をもって教え続けてくれたことだった。

 言葉少ない伯龍ゆえ、面と向かって「よくできました」とめてくれることはあまりない。

 しかし、十年も共にいるのだ。たとえ呆れた声を出していたとしても、その表情から、伯龍が何を考えているか、紅蘭にはわかる。自分に対して心底呆れ困っているのか、それとも心の中ではそれでいいと背中を押してくれているのか。紅蘭は、自分にはわかると自負していた。

 そして、自分がこのような公主として育ったことを、古いしきたりにしばられた家臣はなげこうとも、伯龍はきっと満足してくれているはずだ、と。

 伯龍は、紅蘭がとなりに収まったことをかくにんすると、ぎよしや席に収まったうんに声をける。

「では、出発しますよ」

「はいはい、待ちくたびれましたよ、さいしよう殿どの

 のんびりとあくびをしながら、馬にむちを当てるのは、こうもう大将軍。あざなを季雲と言う。

 本来、公主のぎようけいともなれば、馬車一輛りようではなく、その前後にずらりと禁軍の兵士たちが列を成すはずである。

 しかし、護衛は大将軍という禁軍の頂点に立つ人物とは言え、季雲ただ一人。

「そのような軽装で、いつも兵士も連れず──少しは体面もお考え下さいませ! 姫様~!」

 さけぶ伍会の声をしりに、馬車は中門をえ、さらに華安城の東、せいりゆう門をくぐって城下へと出て行った。



「見て、伯龍! 船がたくさん!」

「何か新しい穀物が手に入るといいですね。水害にもかんばつにも強い穀物が」

 馬車の横に掛けられたを上げて声を上げる紅蘭に、港にやって来た目的などお見通しだとばかりに、伯龍はうなずく。

 華安の港。さんばしには、たくさんの商船がていはくし、商人にやとわれた労働者たちが、荷を降ろしたり積み上げたりといそがしげに動き回っている。

 華の大陸、中央やや北よりを流れる江華は、今日もおうかつしよくの水をたたえていた。夏の強い日差しを照り返し、黄金こがねいろ水面みなもかがやいている。水の色が青ではなく黄褐色なのは、上流のこうを多くふくむためである。

 対岸ははるか遠く、桟橋からではとうてい見ることができない。青い空と黄色い水面とを区切る、水平線がかぶばかりである。

 この江華に多くの支流がぶつかる位置に、花国はあった。華安城のすぐ南を流れるすいもまた、江華の支流である。

 江華はどこをわたしても、橋がない。

 水平線の彼方かなたまで続く広い河に橋をける土木技術などなく、河をわたるには必ず船を必要とする。自然と水運がさかんな土地となった。

 遠く下流でぼつかいへと流れ着く大河は、いまでは船による物流になくてはならない存在となり、この華安の港は交通運輸のかなめであった。

 幼いころから、父に連れられて何度もおとずれたこの華安の港。紅蘭は、他の河を見たことがなかったから、この風景が江華独特のものであると、商人たちから聞いて初めて知った。

「黄色の河ばかりではない」と聞いて、ひどくおどろいたのを覚えている。

 しかし、紅蘭にとっては、この黄金色に輝く水面こそが、河なのだ。

 父に手を引かれ、伯龍と並んで、たくさんの船が出たり入ったりするのをながめる。そんな時間が、紅蘭にとってはかけがえのない時間だった。

 上流から押し流されて来たしやを多く含む江華周辺の大地は、たいを必要としないぐらいよくで、ほかの土地よりも農耕に適している。これも、父が教えてくれたことだ。

 しかし、江華は花国にめぐみだけをもたらす存在ではない。

 暴れりゆうのごとき大河は、時にだいこうずいを起こし、人もちくも家屋も農地もすべて押し流す。

 おそらく、花国の始祖とされるがみ・女媧の時代、多くの人を失う大災害は本当に起きたのであろう。その後、花国の歴代の王たちは、治水技術の研究に明け暮れた。

 それでも、江華はまだ人にはせいぎよしきれないかいぶつである。

 そこで紅蘭が力を入れているのが、農業であり、さいばい穀物を多様化することだった。干害、水害があったとしても、多数植えた穀物のうち一品種でも収穫できれば、だいきんは防げるだろう。もちろん、豊作の年にはじよう分をたくわえておく必要もあるが。

 そう考え、収穫時期や栽培に適したかんきようが、それぞれ異なる数種の穀物の栽培を試みていた。

 今日、港を訪れたのも、みの商人が西域から穀物を届けてくれるからである。

りよさい!」

 見知った顔を見つけ、紅蘭は馬車を降りて走り寄る。伯龍と季雲も、後を追った。

「これはこれは、公主殿でん、ごげんうるわしう……」

あいさつはいいわ、呂才。挨拶するなら、他国のことを教えて。どこの地域が豊作で、どこの地域が干魃に苦しんでいるのか」

 きようしゆしてうやうやしく頭を下げようとする呂才を、紅蘭は手で止めた。呂才は、久しぶりに会ったむすめを見るような笑顔を浮かべつつ、紅蘭の問いに答える。

「公主様は相変わらずでいらっしゃいますなぁ。さて、北の方は夏になっても気温が上がらず、江華の上流では夏前に長雨が続いたせいか、いまはいつてきの雨も降らず困っているそうで……」

「ありがとう、後でくわしく聞かせてちょうだい。それと、たのんでいた穀物の種は手に入った?」

「ええ、手に入りましたとも。ムギという穀物は、花国では栽培されたことはありませんでしたね」

「……ムギ? ええ、聞いたことのない名前だわ」

「さようでございますか。それでは、現物を持って参りましょう。おおい、ムギを持って来てくれ」

 呂才は、積荷を運ぶ労働者に声を掛ける。

「季雲、手伝ってあげて」

 紅蘭のめいに、季雲は走って労働者に手を貸した。

「これは何とおそれ多い、黄大将軍閣かつではありませんか」

「気にしないでくれ。うちのおひめ様の方針だ。身分の上下やかたきにかかわらず、動ける者が動く。だいたい俺は、そこの頭のいい宰相様とちがって力仕事ぐらいしか手伝えないんでな」

 穀物のつまったあさぶくろを軽々と肩にかつぎながら、季雲は答える。

「俺がふだん使ってるげきとうより、よほど軽いぜ。見たところ、そっちは手が足りてねぇみたいじゃないか。他に運ぶもんがあったら手伝うから言ってくれ」

「いえいえ、これ以上は──」

「俺は、大将軍って言ったって、まだ名前だけの青二才。いくらでも使ってくれてかまわない。今日は、そのつもりで姫様に付いて来たんだからな」

 ひざまずきそうになる呂才に対して、季雲はくだけた笑顔で応える。

だいじようですよ。先年のいくさ以来大きな戦もなく季雲もうでがなまっていることでしょう。いざというとき国のために働いてもらうためにも、ここでたんれん代わりに働いてもらうとしましょう」

 伯龍も、呂才に気さくに応じ、笑みを浮かべた。



 季雲が、大将軍に就任したのは、先の董国との大戦の後のことである。董国との戦により、花文王に仕えた忠臣たちの多くは、王と共に命を落とし、花国の家臣団は若い世代へとやむなくだいわりするしかなかったのだ。

 季雲自身が言うように、大将軍の位をいただいてはいるものの、まだ大将軍として戦場でけんるった経験はない。

 紅蘭が父、花文王をうしなったように、季雲もまた、父、こう将軍を喪っていた。

 多くの家臣たちが、紅蘭と同じような立場にある。自らの意志にかかわらず、若くして家名をぐしかないじようきように追い込まれてしまったのだ。

 しかし、不幸中の幸いとでも言うべきか。

 みなが同じような状況に置かれたがゆえに、

「姫様とておつらい状況なのだ。われわれが泣いてなどいられぬ。我々の手で、姫様を、花国を支えていかねばならぬ」

と、家臣たちが皆、同じ方向を向いて、未来に向かって歩み出すことができたとも言える。

 花国はいま、紅蘭を中心とした次世代の若者たちによる新しい体制で、まさに船出を始めようとしているところなのだ。

 新しい花国という船は、いかりを上げて大河の流れに身を任せようとしている。季雲自身も、もう以前の自由気ままな立場に二度ともどれないことは、重々理解していた。

 それでも、このように紅蘭や伯龍から命を下されると、かつての身軽だった頃を思い出す。人に指示されて動く方が、やはりまだ気が楽なのだった。



 季雲が、麻袋を紅蘭のあしもとに下ろす。ひもをほどき、呂才は袋の口を開けて見せた。

「これがコムギです」

 黄金色の種が、袋の中にぎっしりとまっている。

「これはまたずいぶんかたそうだな、おいこりゃ、どうやって食うんだ?」

 季雲は袋の中から、ひとつぶつまみ出すと、前歯でかじる。

「ああ、将軍、無理です。コムギの外皮は硬いので──」

「じゃあ、どうやって食うんだ?」

「西域では、うすを使い粉状にいて食べているそうです。あちらに袋が──」

「季雲、取って来てください」

 伯龍の言葉に、季雲はまたも労働者よりばやく動き、別の麻袋を持って戻って来た。

 呂才が袋を開くと、そこには白い粉が詰められていた。

「これは……いったいどうやって食べているのかしら? こんなに細かく挽いた粉だと、きびあわのように、して食べるのは難しそうね」

「西域では水でいて、焼いているとか」

「ふうん……なるほど。おもしろいわね」

 紅蘭はあごに指先を当て、うなずきながらみをかべた。

 どうやって料理してみようか──紅蘭は、コムギを眺めながらすでに思案をめぐらせている。

「それに、コムギは秋にいて冬に育てることができるそうです」

「それは──冬の間、輪作に使えるわね!」

 紅蘭は、大きな声を上げ、興奮のあまり思わずとなりにいる伯龍の腕をつかんだ。

 目を見開いた伯龍に見下ろされ、思わず気まずくなりそっと手を放す。

「確かに、いまは夏から秋にしゆうかくする穀物が多いですから、使えますね。同じ作物ばかり植え付けていると、土も細りますし。輪作できるとよいでしょうね」

「ええと……た、確かにそうよね、伯龍」

 上ずりそうな声をおさえ、紅蘭は答えた。

 手をおうぎにして、った顔をあおぐ。

 視線がさまよい、あちこち見回しているうち、紅蘭の目は一人の青年の姿をとらえた。

 荷札をひとつひとつかくにんしながら、素早く手に持った木簡に書き付けていく。他にも同じような作業をしている者はいるが、その青年は小走りに荷と荷の間をすりけ、ものすごい速さで木簡に筆を走らせていた。

「あれは──何をしているのかしら、呂才」

 振り返った呂才はしたり顔で頷く。

「ああ、彼は、暗算の達人なのです」

「暗算の達人?」

 紅蘭は、そのまま呂才の言葉をり返した。

「ええ、ただ荷札の文字を写して歩いているわけではないのです。荷の数を計算しながら、書き付けているのですよ」

「あの速さで!」

「はい、あれはなかなかほかの者には真似まねできませんなぁ」

(世の中には、いろいろな才を持った人物がいるのね。身分や出自にかかわらず、あのようにすぐれた者を適材適所でかんに取り立てていけば、政治ももっとうまく回っていくはずだわ)

 暗算の達人を見つめながらまつりごとについて思案していた紅蘭に、呂才が声をける。

「そういえば、今回持って来たムギはもう一種類あるんです」

 手持ちにしていた季雲は、呂才の指す荷へと向かった。

 呂才の手で開けられた袋の中には、先ほど見たコムギとそっくりな穀物の種が詰まっている。

「これは──コムギではないの?」

「はい、これはオオムギという種で、コムギより冷害やかんそうに強いのだそうです」

「それは、助かるわね。両方植えておいて──もしその年の冬が寒くてコムギがダメになったとしても、こちらは収穫できるかもしれない──ということね」

「その通りです、公主殿でん。それに、こちらのオオムギは粉にせず、粒のまま西域でも食べているとのことでした」

「なるほど──ということは、花国の食生活を考えると、まずはこちらの方が受け入れやすいかもしれないわ」

「そうですね」

 呂才も頷く。

「とりあえず、両方とも馬車に積めるだけもらっていくわ。積めない分は後で季雲に取りに来させます。伯龍、はらいを」

「毎度ありがとうございます」

 呂才はきようしゆしながら、深くこうべを垂れた。

「季雲、もう一仕事だ。姫様の命で、これらのムギを馬車に積めるだけ積んでくれ。といっても、我々も乗るから人が二人乗る場所は確保しておいてほしい。──おそらく後でまた荷を取りに来てもらうことになるかと思うがたのめるか」

「この後は、確か黍の収穫に井南のさとに向かうんだったな?」

「そうだ、できるだけ郷に持って行きたい」

 支払いを済ませた伯龍は、紅蘭の考えていることを先回りして季雲にめいを下す。

「わかりましたよ、そいじゃ、ちょっと待っててくださいな」

 そう言って季雲は、再びムギのふくろの山へと走って行った。

「今日は大きな収穫があったわ」

 紅蘭は、ひとみかがやかせて呂才に礼を言う。

「もったいないお言葉です」

「それに、さっきの──暗算の達人。ああいった異才を持った人物も、世の中にはいるのね。いまは貴族しかきゆうていの役人に登用できないけれど、ああいった人物を出自に関係なく登用することができれば、国も変わっていくのかもしれないわ。ね、伯龍」

「そうですね、それにはまず法を変える必要があるかと」

「国を安定させるために、ゆくゆくは、新しい法を考えていきたいわ」

 紅蘭の言葉に、伯龍は満足そうに頷きながら、顔をほころばせた。

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