第7話 試験

あれから日が経ち、試験当日となっていた。


「まさか、ルミアネも入学する予定だったとはな」


「すいません、もっと早く言っておけばよかったですね」


「いいよ、別に。

一緒に合格を取りに行こうぜ!」


「はい!」


ルミアネはよく俺の訓練依頼を受けてくれて結構仲良くなった。

ルミアネは魔法などの才能に秀でており、魔力吸収いや、新しく得たスキルの練習になった。

ギルドマスターからはSランクと同格の才能を持っていると太鼓判を押してもらったほどだ。

俺に関しては単純な肉体戦闘はSランクの中位に入ると言われた。

ちなみにギルドマスターは元SSSランクの化け物なのだが、引退してからSランク相当の実力しか持っていないらしい。


「全く、緊張感の欠片もないですね」


ふと、後ろから声をかけられる。

俺達二人は後ろを向くとそこにはサーナがいた。


「よう、久しぶりだな」


「はい、久しぶりですね。

全く、こんなんで受かるのですか?

一応ここはSランク相当になれる才能、または実力を有していないと入れないような学園ですよ」


元々は異界の勇者の育成機関として設立された学園らしく、異界の勇者が試験を受けるなんて前代未聞らしい。

因みに複数の勇者が同時に呼び出されたのは2代目勇者以来の二回目らしい。

故に俺以外の異界の勇者は入学試験免除される。

なんとも羨ましい!

ていうか、同郷の奴なら話とかしてみたかったしな…。


俺は依然として記憶を失ったままだ。

最低でも名前だけでも思い出したい。


「どうしたんですか?」


「どうかしたのですか?」


二人とも俺を心配そうにみてきていた。


「いや、少し感慨にふけっていてな…」


「同郷だと思われる人が別の国で召喚されたことですか?」


「それとも、記憶が一向に取り戻せる気配がないことですか?」


ルミアネに続きサーナが心配そうに見つめてくる。

サーナはこの前模擬戦した時から対応が柔らかくなった。

しかし、手も足も出なかった記憶が今でも昨日のようにある。

その時に言われた言葉が『まだ私の方が何倍も強いようですね。

でも、認めてはあげます。

あなたが勇者であることを』そう言って笑ったのだ。

後から聞いた話だとサーナはSSSSランクの実力を持つらしい。

ちなみにランク制度としてはSSSSSランクまであり、それ以降はS1、S2ランクとなっていくらしい。


「その両方だ。

それと俺は強くなれるのかだな」


「ふふふ、そんなことですか」


俺がそう言うとルミアネは顔を綻ばせて笑う。


「あなたと戦った私達から言わせてもらうと、何の磨きもかかっていない宝石の原石です」


そう言ってサーナは去ってしまう。


「行っちまった」


「寂しいですか?」


ルミアネは俺にそう尋ねる。


「いや、お礼を言いたくてな…」


「多分、サーナは望んでいませんよ」


そういうものなのかな?

そうして、俺達二人は受験番号をもらい、試験会場に向かうのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


ルミアネとは登録番号が離れており俺達は一旦別れることにした。


五人一組となり、動くらしい。

試験そのものは個人で行うから呼び出す為の時間短縮のためだろう。


「受験番号1751〜1755番の方は第三試験場に」


どうやら、俺たちの番号が呼ばれたようだ。

確か面接→模擬戦→的壊しの順で試験が行われるのだっけ?

俺は面接の時の礼儀作法の知識を総動員させる。


俺達は中に入る。

おぼろげながらの記憶で俺は一礼する。

周りは少し驚いたように俺を見るがそれを知ったのはまた後日。


「ご丁寧にありがとうございます。

どうぞ、そこのいすに腰でもかけてください」


一人の金髪の美形の男がニッコリと笑い椅子に座るように促す。


「失礼します」


俺はそう言うと周りは一瞬固まった気がしたが気のせいだろう。


「では、1751番の方から聞きましょう。

まず、得意魔法と武器そして天職を教えてください」


そう言って始まる面接は傲慢な貴族っぽい二人から始まった。

俺の受験番号は1753番で次である。


「では、1753番の方の得意魔法と武器そして、天職を教えてください。

と言いたいところですが、あなたに関してはその質問は無しにします。

では、自分では実力は冒険者ランクで表すならどのあたりだと思いますか?」


どうやら、事情は回っているようだ。


「大体Sの中位です」


「ふむ、ありがとうございます。

あなたに対してはこれで十分です」


周りは不満そうな表情で俺を見る。

そうして、残り二人も終わり模擬戦となる。


「では、模擬戦に移ります。

武器は持参ありなのですが、君は大丈夫ですか?

よかったらレンタルしますが」


武器を持っていない俺に対して試験官が心配そうに聞いてくる。

俺は大丈夫ですと言って俺は相手を見る。


「まずは俺から行くぜ。

見よ!和が家に伝わる魔剣を」


ほう、魔剣か…地味に見るのは初めてだな。


キィィィン


スキル名『鑑定』

よし、使えるな。


「スキル『鑑定』」


俺は誰にも聞こえないようにボソリと呟く。


ーーーーーーーーーー

魔剣ダラデュラ


持ち主の魔力を喰らい持ち主に肉体の強化をさせる。

効果は通常の強化の倍は高い。

ーーーーーーーーーー


これが魔剣か…。

ふつうに強いな。

しかし、あの冒険者に勝てるかだな。

あれだとギリギリSSランクの冒険者だと思う。


そして、模擬戦が始まった。


「魔剣ダラデュラよ!

我が魔力を喰らえ!」


そう言うとともに魔剣が怪しく光出して、受験者の肉体を強化する。


「テヤァァァ」


真っ直ぐに男に武器を振る。

しかし、そんな大振りが当たる訳もなく空振る。

そこからは完全に遊ばれており、袈裟、逆袈裟、突きと全部避けられるまたはいなされて終わった。


「魔剣抜きで総合Aランクといったところか…。

うまく育てればSSSランクはいけるな。

魔剣ありならSSS+までだな」


男がそう言うと試験官達は紙に何か書き込んでいく。

受験生は魔力を使い切り倒れている。

それを男は丁寧にどかす。


「次は誰だ?」


今の戦いを見て残りの受験生は苦い顔をする。


「んじゃ、俺が行きます」


俺はそう手を挙げてギルドカードを取り出す。


「なるほど、武器はギルドカードで収納していたのか」


「はい」


男はそれを言った後にニィと笑う。

これはあれだ。

この人はきっと戦闘狂だろう。

少し前に行った盗賊退治の時に見た笑い方だ。

まぁ、決定的に違うのは性根が腐ってるか腐ってないかだな。


俺はギルドカードから剣を取り出す。

その際にしっかりと肩にかけられている。


「その武器は…なるほどお前が最近ギルドで言われていたバーサーカか」


「へぇ、それは後で誰が言っていたか聞かないとな」


そう言って俺は大地を踏みしめる。


ガンッ


ここで初めて男はいなすでも躱すでもなく、ガードするという行動を取った。


「へぇ、本当にでかい剣を片手で持ってるんだな。

にしても、一撃が重いな…」


俺は途中で後ろに跳んで距離を取る。

単純な力勝負なら負ける。

ここから先は全員から言われた絶対的な戦闘センスで勝負をする。


俺は真正面から切りにかかる。

ガードは予想済み。

そこを上手くいなして懐に入るを

樋の部分を左手で握り振り抜く。


「あっぶね…」


それを危うげに避けられるが、俺は次の行動に入る。

樋の握りと柄の握りを両手でしっかりと持って振るう。


ガンッ


それを男はギリギリで剣で防ぐ。

男はすぐに体制を立て直して構える。

しかし、その場には俺はいない。

俺は全力で走り、後ろに回っていたのだ。


「チッ、思った以上に強いな」


その瞬間、俺は後ろに跳ぶ。

魔力の感覚…。

そう、男はさっきまで一切の魔力を使っていなかったのだ。


「いい反応だ。

しかし、模擬戦はここで終了する。

お前はSランクの中位と言ったが総合評価はSランクの上位、要するにS+だ。

才能そのものの塊で正直言ってしまえば羨ましいくらいだ。

多分この調子なら近いうちにS1以上に届くと思う」


「ありがとうございます」


そう言って男と俺は剣を収める。

それを聞いて先程模擬戦をしていた男は丁度起き上がっており、絶望の表情を浮かべている。


「嘘だ!平民如きが俺より強いなどあり得るわけがない!」


と思ったら喚きだした。


「実際、お前は魔力の恩恵どころか魔剣を使っても届かなかったのにこいつは魔力を一切使わずに俺に届いたんだ。

納得いかないならあそこのスペースで模擬戦でもしてろ。

んで、次は誰だ?

いないなら指名するぞ」


「私が!」「俺が!」と先程とは打って変わって聞こえてくる。

どうやら、俺のを見て勇気がついたらしい。

たしかにあそこまでの動きは出来ないが、全力でやられる訳ではないから少し自分の実力を知りたいとか概ねそんなところだろう。

そうして、次の試験まで俺は延々と魔剣使いの受験生をあしらっていたのだった。


「次は的当てです。

魔法、弓などの指定は問いません。

制限時間内にフィールドに入らずに三つ壊す。

簡単な試験です」


俺は弓を取り出して矢を一本取り出す。

そういう準備をした後、順番が来るのを待つ。

これはどうやら魔法の試験と同義のようだ。

壊すならただの矢ではダメと暗に言っているようだ。


でもな…『フレイムアロー』とか『ファイヤーボール』『ウィンドスラッシュ』とか痛い言葉が聞こえて来るのはどうしても居心地が悪い。


俺にケンカを売った子は一回で的を二つ壊して三つ壊したようだ。


そうして、次は俺の番だ。


「では、始めます」


そう合図されると同時に俺は矢を弦にかけて引きしぼる。

俺が今から行うことは集中力がかなり必要だ。

俺の新しく得たスキルは『魔力操作』というスキルでその名の通り、魔力をほんの少しだけ操れるようになるのだ。

操ると言っても通常の魔法などとは違い、外の魔力を少しだけ集めたり反発させたり出来る。

それでも、魔力での肉体強化と似たことが出来る。

まぁ、普通の肉体強化量が2倍ならこれは1.1倍だけど…。

それでも、魔力による範囲強化などだってできるのだ。

俺はそうして矢を放つ。

そして、矢が当たった瞬間、的は真っ二つに切れていた。


『なっ!』


誰もが驚く。

ひそひそ声でいま、魔力を使ったのかとか聞こえてくる。

わからないのは当然だろう。

実際、周りにある魔力なんて察知対象にならないのだから。

残り二つはちょっと前に完成させたロマン技、衝撃波を飛ばすという荒業で破壊する。

そうして、俺が振り向いた時だった。


「フハハハ!

やばい、まさかこの学園の的当てを一切魔力を使わずにというか、魔力無いから使えないだろうけど。突破できるなんて…。

やばい、笑い死ぬ」


そう笑い転げた試験官がいたのだ。

俺は突然のことで少し戸惑った。


「悪いね。

少しひさびさに珍しいものを見たからね。

とりあえず、君達の試験は終わりで評価と合否、順位は明日くらいには学園前で配られてるから受験番号はしっかりと覚えておくように」


「「「「「はい」」」」」


そうして、俺の試験は何かよくわからない結果で終わったのだった。


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名前 unknown LV48

天職 勇者23.54

魔力量 無し

ジョブ

ファースト 剣士21.45

セカンド 拳士17.31

サード 物作り1.01

スキル

魔力吸収 不明

魔力操作 41.45

天神達の加護 53.28

女神アルレイヤの加護 48.23

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