第22話「宿命との邂逅」
アーケンは
何故、ここにリーアムが?
彼女は負傷しているし、その
そのことをリーアムは、思い悩んでいたようにも思える。
そして、すぐに彼女がここにいる理由が知れた。
(ああ、リーアム
(スエイン、貴様……どこまでも
(おやおや? 情報の共有は組織の基本ですよ?)
もうアーケンには、黙ることができなかった。
だが、その時一瞬だが見た。
コンビを組む相棒は、静かに見守るよう視線で
それでアーケンは、剣の
中では、リーアムは床の上で上体を起こしながら叫んだ。
「そういうカラクリだったのね……全て
リーアムの声に、最後の敵が顔を現す。
それを見た時の、アーケンのショックは計り知れなかった。
「ねえ、
そこには、
彼女は部屋に入ってくると、肉片と血で汚れた周囲に目を
そして、ようやくパズルのピースが
徐々に、邪悪な
「気にすることはないぜ、ジャンヌ。なあ? お前は俺を生き返らせてくれた。サイアム様の指示通り、お前が
「あ、ああ……あなたは、どうして。何故、こんな……おお、神よ」
「祈るなら俺に祈りな? なあ、ジャンヌ……俺の愛する妻よ」
大柄な勇者の正体、それはジャンヌの死んだ
何故、
それも、別人の刻印の力を使ったかと思えば、違う能力も先程見せた。その意味は?
それについて、スエインが深刻な顔になった。
彼が初めて見せる、真剣な表情だった。
(なるほど、ジャンヌの夫……死んだ
(爆滅の勇者?)
(ええ、先程も見たでしょう? 触れたものを爆弾にし、自分の意志で好きな時に爆発させられます。しかし、それでは……
そう、謎はさらなる謎を呼ぶ。
真実は謎と謎を繋げたが、それらを
だが、一つだけはっきりしたことがある。
ジャンヌはやはり、悪の勇者と通じていたのだ。
そして、その理由が恐らく……
「もうやめましょう、ベオウルフ。サイアム様も、お願いです。これ以上は」
「
「わたくしは……夫のために、なんてことを」
ジャンヌは泣いていた。
その涙だけは、本物だと思いたい。
だが、サイアムが不満そうに
「ジャンヌ、まだ先があるじゃないですか。君が取り戻したい未来まで、あと一歩。ベオウルフの復活も成功し、同時に貴重なデータも得られました。やはり、死んだ勇者の刻印は意味がないということがね」
「サイアム様……もう、私は」
「泣かないでください、ジャンヌ。その美しい顔を、涙で
サイアムは、バスタオルが覆う暗がりの中で
その
「へへ、サイアム様……それに、ベオウルフの
「……
「ありがてえ! お、俺は……誰にも必要とされなかった。元の世界じゃ、
「ええ、その気持ちは大事ですね。フフフ……君の力はちゃんと僕達が活用し、欲望のままに楽しく……わかりますね?」
その時だった、今まで
震える脚の
だが、そんな手負いの状態でも、彼女は牙と爪を失っていない。
「ジャンヌ……見損なったわ。旦那を生き返らせるために、こんなことを……そして! あんたはしてはならないことを二つも犯した!」
「リーアム、ごめんなさい……許してなんて、いえないですよね。でも、でも……たとえ民を裏切ってでも、あの時のベオウルフが、強く優しい夫が戻ってきてくれるなら。何より、我が子が蘇るなら」
「弱い女ね、ジャンヌ! そう、あんたは民の信頼を裏切り……あたしの大事な相棒の信頼を裏切った! ぶっちゃけ、町の人達なんて関係ない。勇者に
「お、おお……神よ、わたくしは」
「アーケンの痛みを今っ、思い知らせてやるわ!」
リーアムの左胸の刻印が光り出す。
だが、ジャンヌを守るようにベオウルフが立ちはだかった。
「へへ、俺もかつては英雄と呼ばれた男……新たなる力と命を得た今、ジャンヌの敵は全てブッ殺す! いいですよねえ、サイアム様ぁ!」
喉の奥でクククッと笑って、サイアムは方を
とても、十代の少年とは思えぬ声だ。まるで地の底から湧き上がるような
「ベオウルフ、手足の一本二本は構いませんよ? でも、僕が
サイアムの声に、蒼雷の勇者は自分を指差し「へっ?」とマヌケな声を発した。
「あ、ああ! おっ、おお、俺は――」
「まあ、少し長い話になるでしょうから……向こうでゆっくりと。それに……僕は女を犯すのも好きですが、逆も大好きなんですよ? 君みたいなゴロツキのチンピラに、自分を好きにさせるのが、ね」
「あ、ああ、そりゃ、ええと……ま、まあ、あんたがそう言うんなら、ヘヘヘ」
「行きましょうか……そろそろジャンヌにも、ロト君を生き返らせてあげる必要がありますし」
それだけ言って笑うと、背を向けアイアムは出ていった。
その後姿を見た瞬間、アーケンは立ち上がった。
その背に……右肩に、身に覚えのある刻印が光っていた。
それは、両親が殺されたあの日、暗闇の中で光っていた刻印だった。
親の
気付けばアーケンは、狂気と歓喜に笑っていた。
「は、はは……ははははっ! 見つけたぁ、見つけたぞおおおおお!」
「ア、アーケン派遣執行官! ……チィ、ここまでですか。まあ、あとはお任せするしかありませんね。必ず殺しておいてください? 本部にはそう報告したいので」
「必ず殺す? 当たり前だ、はははっ! そこにいたかあ、貴様ぁ! そうか、名はサイアム……貴様が俺の父を! 母を!」
同時に、
そのまま室内に転がり込んで、アーケンは絶叫した。
「ダーリン、奴を追う前にリーアムを!」
「待てえ、サイアム! そこを動くな、俺と……俺と戦ええええええっ!」
絶叫と共に歩み出す。
その姿はまるで、
見上げる巨漢は、背にジャンヌを
「ジャンヌ、サイアム様のとこに行ってろ。先に逃げるんだ」
「で、でも! わたくしはこの町を捨ててはゆけません。誰がこの町を守るというのですか。それに……ここまで知られたからにはもう、
「ジャンヌ! 俺の
勝手な論理だった。
それでもジャンヌは、アーケンを見て何かを言いたげに口を開く。そんな彼女をドアの外に押しやり、ベオウルフが敵意を剥き出しにした。
そして、アーケンの横に相棒が震えながら立つ。
「アーケン、ゴメン。でも、行って。ジャンヌを……仇の勇者を追って!」
「……リーアム、お前」
「こいつは、ベオウルフはあたしが何とかする。刺し違えてでも、殺す! あたし、許せない……愛してくれるジャンヌに付け込んで、彼女から気高い夫の死を奪ったこいつが!」
リーアムの
そして、思い出す……自分が、
「リーアム、手伝え……まずはこいつから殺す」
「アーケン、あんた。か、仇が! サイアムが」
「怪我もある、無理をするなよ? ……二人でこいつを殺して、サイアムを追う。その方が早くて効率的だ」
「……ふーん、そう。そうなんだ? じゃあ……始めましょ? あたしたちの
「ああ」
二人は同時に床を蹴る。
それは、ベオウルフの
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