それは何気ない日常で


私達が彼と出会ったのは2年前の、高校1年生の夏休みだった――



その日は夏祭りに着ていく浴衣を見ようと隣町の大型ショッピングモールまで足を延ばしていた。


夏休みというのもあってか沢山の人で賑わっていて、涼しい筈の店内が少し蒸し暑く感じた。



至って普通に買い物をしていて思う。

双子というのはそんなに人の目を惹く事なのだろうか?


すれ違う大半の人が私達に好奇の視線を向けわざわざ振り返る。



勿論、今日初めて外出したわけではないからこんな視線にはもう慣れている。

それでも鬱陶しいと思う事は止められなかった。



「はぁ……」


思わずため息が漏れる。

どうやらそれは妹も同じだったらしい。少し表情が曇っているように見えた。



「買い物は中断して何処かで一息つく?」


腕時計を見れば12時を少し過ぎた頃だった。


「丁度お昼だしお腹も空いてきたから食事でもしようか!今日はパフェ食べる約束してたでしょ?」



パフェという単語に惹かれたのか、純粋に休憩をしたかったのか、そこら辺は定かではなかったが、満面の笑みで頷いて私の手を引っ張り歩き出したので妹に連れられその場を後にした。




手を引かれ、きらびやかに飾られたショップのウィンドウを眺めていたらふいに妹が立ち止まった。



「どうしたの?」


妹は私の目を見つめた後、視線を左側にを移した。

それに習って私も視線を移すと壁にWCという文字が。


あぁなるほどトイレに行きたいのか。


「私此処で待ってるから行ってきな。バッグは持っててあげる」


そう言うとバッグを私に手渡し、『ありがとう』と口を動かし微笑んだ。


「どういたしまして」


その優しい笑みに微笑みを返した。


妹は私の笑みにどこか満足げに頷いてトイレに向かって行った。



ふふっやっぱり可愛らしいな。姉の私からみてそう感じるのだからやはり周りが見てもそうなんだろう。


妹は同性からも異性からにもモテる。


同じ顔の私が言ったらナルシストのように思われるかも知れないが、私達の顔が整っているのは自覚している。


でも他人から見たときに妹は可愛らしい印象を、私はクールな印象をもたれることが多い。


その違いは表情の豊さなんだと思う。


けして私の表情が乏しいわけではないと思う。妹は“声”という感情表現が無いため表情で感情を表現している。


その姿が優しく可愛らしいという印象をもたせているのだろう。

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声かわりLa poupee 一条美琴 @mikoto1313

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