第24話 関数グッドスタイン数列
森を歩きながら、とっておきのこの話をするとは思わなかったな。
「では、まず、グッドスタイン数列をよく調べてみよう。
遺伝的記法で、底を3にし、53を書いみると、
3^3+3^2×2+3×2+2
となる。54を書けば、
3^3×2
だ。遺伝的記法には3つの2項演算「+」「×」「^」が出て来るが、そのうち「×」は実はなくても良い。
3^2×2
を
3^2+3^2
と書いてグッドスタイン数列を作っても結果は変わらないからだ。実際、積の右側に、底がくることはない。つまり、遺伝的記法とは、結局、2つの2項演算「+」「^」だけで書かれた記法といえる。
ここで僕が思い付いた発想は、その2つの演算を、「+」「^^」にするというものだった。これをテトレーション遺伝的記法と呼んだ。
底を2にして、19を書くと、
19
=2^^3+3
=2^^(2+1)+2+1
となる。さて、これでグッドスタイン数列を作ると、
2^^(2+1)+2+1
3^^(3+1)+3
4^^(4+1)+3
...
7^^(7+1)
8^^8+8^^8+...+8^^7+...+8^^6+......+8+8+...+7
という形をすることがわかった。
僕はこの大きさの評価がそれほどでもないことに気づいてしまった。だけれども、評価の仕方は関数グッドスタイン数列を拡張したときにも役に立ちそうだったので、あえてこの話をしよう。
8+8+...7のところの項数は、(8^^2)÷8=2097152個だ。そして、ここの項が全て消える頃には底は
8×2^2097152≒10^630000≒2^^5
程度になっているだろう。底をaとおくと、次に崩れるのは、
a^^2
の項だ。これは、
a+a+...+(a-1)
という形をしている。
つまりこれが全て計算されるころには、
2^a
程度の大きさになっているはずなので、
底はおよそ2^^6のはずだ。
つまり、a^^2の項が消えるのは、テトレーションの高さが1増えるに相当する。
では何回これを繰り返すのか?それは8^^3÷8^^2回だ。これはほぼ8^^3に近似できる。つまり、
高さに8^^3を代入すれば、
2^^(8^^3)
≒3^^3^^3
=3^^^3
ということだ。
次に崩れる項は、a^^3だ。
これは、一回崩れると、a^^2がa^^3個ほどできることになる。
いまa≒3^^^3なので、全て計算し終わった頃には
3^^3^^^3^^3=3^^3^^^3^^^2となる。
大雑把に、3^^^^3と近似してもよい。
次のa^^4が消える頃にはハイパー演算が更に一つ強くなっているだろう。
つまり、a^^7が消えた頃の底は、およそ
3^^^^^^^^3=3→3→8ほどの大きさだ。
次の項は、a^^aであるが、
a^^nが3→3→nに近似できるので、
一つ消えるのは、
3→3→(3→3→8)≒3→3→2→2
と、4つ組チェーンの3番目の数を1増やすに相当する。
なら、これを8^^8回ほど繰り返すので、
3→3→8^^8→2
というのが、今回のグッドスタイン数列の大きさの評価だ。
急増加関数なら、
f_ω+1(8^^8)
に近似できる。つまり、急増加関数に対応する順序数では、ω+1とω+2の間ほどだ」
「あら、小さいんですね。普通のグッドスタイン数列でもf_ω^8(8)までいくじゃないですか」
リディアさんの少し辛辣な言葉がグサっとささる。しかし、まだ私はこれで終わったわけではない。
「もちろんです。せっかく関数を強くしたのに、弱くなってしまったのでは元も子もない。なぜ小さくなったかというと、結局演算が2つしかなかったので、テトレーショングッドスタイン数列で2^^(2+1)に対応していた順序数はω×(2+1)ほどでしかなく、これは、元々のグッドスタイン数列の2^(2+1)=8と式の形が相似で、8からスタートしていたグッドスタイン数列と大きさのレベルが変わっていないんだ。つまり、グッドスタイン数列の19から始めた数に対応するテトレーショングッドスタイン数列は、2^^2^^2+2+1=65539という数まで待たなければならない。これではよくない」
「まるで今歩いている森のようですね。楽しそうなものを見つけても、それは使い物にならなかったり、ある道を深く探ってみても結局見晴らしが良くならなかったり」
やっぱり少しリディアさんは辛辣だ。もしくは早く次の話にいきなさいということなのか。
「そして、僕が辿り着いた見晴らしの良い丘、それが、関数同調グッドスタイン数列だ」
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