14 騒動の元はいつも御神木? その2
「くうぅっ、あと、もうちょっと……っ」
じりっじりっと太い枝の先の方へとにじり寄りながら、明珠は必死で手を伸ばす。
おかしい。普段の明珠なら、木登りなど、ちょちょいのちょいなのに。
神木に登り始めた時から、妙に身体が重い。
(これは……神木でしでかしたことが多すぎて、神木に近づくと、反射的に身体が委縮するようになってるのかしら……?)
今まさに、卓に敷いていた布の埃を、窓の外で払った拍子に、風で飛ばされてしまって、神木に引っ掛けたばかりだ。神木との相性は本当に悪いらしい。
何だか、めまいと腹痛も始まった気がする。
だが、他の誰かに見つかる前に、なんとしても回収しなくては。季白にでも見つかったら、後が怖い。
しかし、願いはすぐに打ち砕かれた。
「大丈夫か、明珠」
前へ進もうとした途端、突然、下から声をかけられて、驚きのあまり体勢を崩す。
「きゃっ!」
片足がずるりと枝から落ちる。
風にはためいた布が指先をかすめた瞬間、掴み取ったのは、執念のなせる業だ。
「明珠!?」
英翔が枝の下に駆け寄る。
「英翔様、駄目です! 来ないでください!」
思わず、きつい声で叫ぶ。
着物から足を放り出したはしたない格好なのは、この際、どうでもいい。そんなことより。
落ちた時に、英翔を巻き込んだら一大事だ。
明珠がしがみついているのは、大人の背を少し過ぎたくらいの、下の方の太い枝だが、大人の明珠が子どもの英翔の上に落ちたら、大怪我をさせる可能性だってある。
「英翔様! 危ないから離れてください!」
枝にしがみついて必死に叫ぶ。
「落ちる時にぶつかったら大変です! 怪我しちゃいますよ!?」
しかし、英翔は明珠がいる枝の下から動こうとしない。
「大丈夫だ。わたしが受け止める!」
「無理です! 無茶です! 大丈夫じゃないですよっ!」
神木にしがみつけばしがみつくほど、めまいがひどくなる。
いつもなら、板蟲を呼び出すところだが、術が強制解除となる神木に捕まっていては、それもできない。
「私なら、落ちても大丈夫ですから! 英翔様が怪我をする方が大変です! お願いですから、どいてください~っ!」
体の平衡感覚がなくなっていく。
(だめだっ、落ちる……っ)
それでも明珠は、何とかして英翔を巻き込まないよう、避けようとした。が。
英翔自ら、明珠を受け止めようと寄ってこられては、無駄な抵抗だった。
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