第8話 復帰5
「元気そうで何よりだ」
礁人は星とハイタッチをし、咲心と握手をし、登と拳を合わせた。
「当たり前よ。礁人こそ元気そうで良かったわ」
星が代表して返答する。そして登からお土産を奪って我が物顔で渡す。
「おお、サンキュー。てめぇら土産貰ったぞ」
「あざーす」
メンバー全員が頭を下げる。しかしその顔には困惑が見え隠れしている。
「あの、この人たちは?」
痺れを切らした一人が恐る恐る聞いた。
「ああ、こいつらのことを知っているのは古参組しかいないか。さっき言った通り俺の家族さ。両親を殺されてできた二つ目の家族」
礁人は平気な顔をして言った。本来なら躊躇うはずの内容を冷静に淡々と言った。
しかしそのことを知らない者たちには衝撃が走った。礁人のことはとんでもなく強いダイヤモンドダストの総長であることしか知らない者が半分もいるのだから。
「俺が何でムショにいたか知ってるか?」
「それに関しては済まねぇ」
雪司はずっと心残りだった謝罪を自然な流れで言うことができた。しかしこの場にいる半分はこの意味がわかっていない。
「殺人未遂さ。こいつらに擦り付けられたせいでな」
その言葉に古参組以外のメンバーが四人を睨みつけた。古参組はそうなってしまった理由を知っているから特別何もしない。
四人はその視線にガンを飛ばして有無を言わせない。
「っても、俺たちの内一人は残んなきゃならなかった状況だったんだ。で、一番使えないのは俺だから残った。喧嘩しか取り柄がないからな」
礁人はやはは、と笑いながら言った。しかし数人はその中に悔しさが混じっていることに気付いた。
「そんな謙遜は・・・」
「ばーか、頭悪いから置いてったのよ」
「星、その程度にしろ。幾らお前でも俺を侮辱するのは許さねぇぞ」
「はいはい、喧嘩は駄目よ」
咲心が二人の間に入って仲裁する。
「それはもう終わったことでしょ。私たちにはやることがまだまだ残ってるのよ」
「おお、そうだ」
礁人は一瞬で平静に戻る。四年もの間で精神的に成長したようだ。
「八納組だけじゃないってのは本当か?」
「ええ、私たちの復讐は奴らだけではなかったの。私たちが八納組を潰したけど組長の殺害まではしてない。それなのに死んだっていう噂を聞いて調べてみたら十天会っていう大きい組を知ったの」
咲心に続けて雪司が話す。
「この十天会てのは十個の組で構成された同盟みたいな契りを交わしてできた集まりだ。八納組はこの一員だったらしい」
「そして八納組の組長はこの十天会に消されたらしい」
登が曖昧な口調で言った。信憑性に欠ける情報だからだ。
「なるほど。じゃあ、今度は十天会を潰そうって理由か」
「そんな簡単なことではないよ。何故なら十天会は関東一帯を仕切っているヤクザだからね。八納組みたいに失敗しても逃げ切れる保証もないし、今みたいにほっといてはくれないよ。そもそも八納組のときだって成功してないのに」
登が冷静に現状を吟味する。悲観的な考えではあるが登以外にこんな考え方はしない。他四人が成り行きで何とかなると考えているから失敗したのだ。
これを踏まえて登はこう提案をしている。
「ちゃんと下調べをして作戦をしっかり立ててやらなきゃだって。あと、仲間を増やすべきだと思ってる」
「下調べは今やってるし、仲間はそんな簡単に見つかる理由ないし」
雪司は少し不貞腐れて言った。やっていることをさもやっていないかの様に言われたと受け取ったからだ。
「そこら辺はお前たちに任せるわ。頭使うのは俺の領分ではないからな」
礁人はお手上げだと言わんばかりに顔をしかめた。
「とりあえず俺たちは自由にしてていいってことでいいか?」
「うん、流石に出てきたばかりに仕事を任せるわけにはいかないよ」
登は大きく頷く。そもそも礁人に割り振る程事は進んでいない。
「じゃ、そんな感じてよろしく。俺たちバイトあるから帰るわ」
四人は長居することなくここから去った。
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