二等星「星の光」

「あれ」


 娘が、望遠鏡をのぞいて言いました。


「どうした?」


「昨日まであった星が消えてる」


「爆発でもしたか? 貸してみろ」


「いや、大丈夫。見つけた」


「そうか」


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「ねえ」


「どうした」


「星の光って、無数にあるよね」


「そうだな」


「あれの一つ一つが光で……いつか、死ぬんでしょ?」


「そうだな」


「人間みたい」


「……」


 魔王は新聞を読んでいます。


「ねえ、魔王は星を壊すことができるの?」


「無理だな」


「人間は壊せるのに」


「人間も壊せないぞ」


「壊してるじゃん」


「あれは少しだけ違う」


「地下牢の人間たちは?」


「あれも違うな」


「私は?」


「それも違う」


「りんごは?」


「それは壊しているな」


 魔王は、新聞を読む手を止めて答えました。


「……魔王が思ってる「壊す」と、私が思ってる「壊す」って、なにか違うのかな」


「同じだと思うぞ」


「でも、私には、りんごも囚人も私も勇者も、全員壊しているように見える」


「お前は私からそれらの違いを知ったじゃないか」


「わかんない」


「人間を壊すことはできないのさ」


「殺すことと何が違うの」


「殺すことは野性的で、簡単だ」


「壊すことは」


「もっと理知的で、そして難しい」


「神様みたいに?」


「そう。それこそ神様みたいなものだ」


「星々も?」


「そう。限りなく遠くて、見えているのに手が届かない」


「神は見えない」


「見えないからな」


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「星の光って、人間に似ている」


「どうしてだ」


「たくさんあって、一つ一つがまばらで。一つ一つが離れていて。一つ一つが同じように輝いている」


「ひときわ輝く奴もいるだろう」


「あれが勇者?」


「そうだな。勇気がある奴だ」


「魔王は」


「見えない。真っ暗さ」


「真っ暗は無じゃないの」


「真っ暗は無さ」


「じゃあ、魔王は無?」


「そうかもしれない」


「ふーん」


「いずれにせよ、一人一人の人間は、いや、一つ一つの存在は。輝いているとは限らないんだ」


「悲しいね」


「お前もだぞ」


「私は……私は、輝いている」


「そうか」


「でも一等星の近くにいる」


「へえ」

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