虹色のシャボン玉(外伝)

大樹海

虹色のシャボン玉(外伝)

 買い物の帰り道、急に妻が「そういえば、昔も喧嘩した時あったよね。覚えてる?」そんなの忘れる訳が無いと私は少し笑いながら「あぁ。」と言った。「その次の日にデートして、その時シャボン玉の話をされたっけな。」と妻はニコニコしながら言った。私はそう言えばそんな事話したなぁと思い出す。

         *

 喧嘩をした次の日、喫茶店でデートをしていると彼女は「そういえば、何で昨日急に慌てて走って来て「ごめん」なんて言ったの?」と不思議そうな目でこちらを見ながら聞いてきた。

 私は「いやぁ〜、ちょっと色々とあってね」と笑いながらはぐらかした。何故なら、私はあの話を聞いて心を動かされたが、彼女が聞いたら馬鹿馬鹿しいと思われると思ったからだ。

 しかし、彼女は「え〜、教えてよぉ〜。」と食い下がって来た。そうだ、彼女は気になる事があるとしつこいぐらい聞いてくるんだったと思い渋々話し始めた。

 

 「昨日な、スーツを着てシャボン玉を吹いているおじさんを公園で見つけたんだよ。俺は何故だか分からないけれど急に、そのおじさんに話を聞きたくなったんだ。」と話していて彼女の方を見ると、彼女は興味津々らしく前のめりになって目を輝かせながら聞いていた。その様子を見た私はまるで子供が絵本の読み聞かせをされている表情をするなぁ〜と思い内心少し笑いながら話を続けた。


 そして、話が終わり、「どうだった?」と聞いてみると、彼女は「うん!すっっごく面白かったし、シャボン玉って色んな見方があって素敵だと思った。あと、君が悩んでる事も知れたし、聞けて良かった。。」と満面の笑みで言ってくれた。その瞬間を見た私は、話して良かったと思えた事と、やっぱり無邪気な子供みたいだと思い思わず我慢していた笑いが込み上げてクスッと笑ってしまった。それを見た彼女は「何で笑うの〜?」と頬を膨らませ、私の顔を覗き込むようにして聞いてきた。私は「何でもないよ」と笑いながら言った。

          *

 私は喫茶店での事を思い出し思わずクスッと笑ってしまった。それを見た妻は「そういえば、あの時も笑ったよね。どうしてなの?」とあの時の事を思い出したのか聞いてきた。それに対して私はあの時みたいに笑いながら「何でもないよ」と言い、妻よりも少し多く荷物を持ち、二人で笑顔で家へと帰る。

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