第49話 莱江山の決斗

 高くそびえる莱江山の麓に、山道の入口へ向かう形で部隊が縦に整然と並んでいた。大半は甲冑姿の剣士だが、ところどころには軽装で杖を携えた魔法使いらしき人が混ざっている。道幅に合わせると必然的に隊列が伸び切ってしまうため、分散させて配置したようだ。


「ではシンノスケ殿、案内はここまでで結構です。あとは我々に任せ、村に戻っていて下さい」

「山中の案内は本当にしなくても大丈夫ですか?」

「ええ、山中では戦闘状態になるでしょうからね。危険ですし、我々としてもシンノスケ殿の安全を気にしつつ山道を行軍するのは大変ですし……ここは我々に任せて、村で吉報を待っていて下さい」

「分かりました……くれぐれもお気をつけ下さい」


 スコットさんは俺の言葉に「ええ」と力強く頷くと、部隊の方へ振り向いて「よし、それではいよいよ山中へ入る!」と大きく声を張り上げた。


「先頭の者から順に前進しろ! 後続は隊列を乱さないように気を付けろ! どこで敵が仕掛けてくるか分からないからな、警戒を怠るなよ!」


 スコットさんの号令を受けて部隊が動き始め、山に足を踏み入れていく。その隊列の中にはサラの姿もあり、チラッと一瞬だけ俺の方へ目を向けて、そのまま部隊と共に山へと入っていった。山中でどういう風に攻撃を仕掛けるかは伝えてあるので、サラなら上手くそれに合わせてくれるだろう。


 やがて隊列の最後尾も山の中へと消え、それを見届けた俺はその場を離れて、莱江山の麓を横に迂回していった。少しすると見えにくくカモフラージュした間道がある場所に到着し、そこから俺も山の中へと分け入っていく。この間道が山中で配置に付いているセツカたちのいる場所への近道になっているのだ。


 草をかき分けながら細い間道をしばらく進んで行くと、平たく整備された小さな曲輪のような空間に辿り着く。この小曲輪からは先ほど部隊が進んで行った道が見下ろせるようになっており、ちょうどセツカと京四郎が身を低くしながら下方の様子を窺っているようだ。


「おいセツカ、下はどんな感じだ?」

「おっ、来たねシンタロー。今は分かれ道に差し掛かったところで、どっちに進むか思案してるみたい」

「ほほう、どれどれ……」


 身を屈めながら俺も下を覗き込んでみると、確かに分かれ道の手前で部隊が停止しているみたいだった。一応、どっちの道を進んでも山頂に繋がってはいるのだが、そんな事は部隊の人間には分かるはずもないだろうしな。


 さてさて、部隊を二分するのか、それとも一方の道にヤマを張って進むのか……と思いつつ観察していると、部隊の先頭が左側の道を進み始めた。どうやら左にヤマを張ったらしい。まぁ細い道で部隊を再編制するのも大変だし、もし間違ってたら引き返せば良いと考えたのかもしれないな。だが、ここで一個目の仕掛けが待ち受けているとは知る由もあるまい……。


 そのまま少し待機し、部隊の半数が左側の道へ進んだタイミングを見計らって、俺は京四郎の方へ振り向いて口を開いた。


「よし京四郎、今です!」


 俺の合図を聞いた京四郎がコクリと頷き、下方の分かれ道の方へ向かって両手を掲げる。するとたちまち地面がうなりを上げて隆起し始め、左側に通じる道を塞ぐようにして巨大な壁が出来上がった。


 急遽出来上がった壁によって部隊は強制的に半数ずつに分断されてしまい、部隊の人々は「なっ、何事だ!?」「壁!?」とかなり動揺している様子だ。ふふふ、さぞや驚いただろう。莱江山は京四郎の土魔法によってリアルタイムに変化する魔境なのだ……!


 どうやらスコットさんは分断された前半分の部隊の中にいたらしく、壁越しに「後続は右手の道を進め! 厳しいようなら撤退しろ!」と指示を飛ばしているのが目についた。よし、狙い通り二手に分かれて進むようだ。


「上手く分断出来たな。それじゃセツカ、京四郎と一緒にクネ子たちの方へ行って後続の部隊を処理してくれ。いいか、絶対にやり過ぎんなよ?」

「も~、ちゃんと分かってるってば! じゃ、また後でねっ」


 セツカはそう言うと、京四郎をおんぶしながら小曲輪から右手に伸びている道を駆けて行った。道の先にはハタケとクネ子が待機しており、セツカたちが右側の道を進んで行く部隊に対処する事になっている。左側に進んだ部隊は俺、クロ、ウネ子、ハトちゃんの計四人が担当だ。そろそろ俺も移動するか。


 立ち上がって、セツカが駆けて行ったのとはまた別の間道を通って山の中を進んで行く。ある程度進み、そろそろクロたちがいる小曲輪が見えてくる頃だなと思っていると、どこかから何やらビュンビュンと空を切るような音が聞こえてくる事に気づいた。何だろう、誰かが縄跳びでもしてるような……。


 不思議に思いながらもそのまま歩いて行くと、クロとハトちゃんの背中が見えてくる。あんな端のとこに突っ立ってどうしたんだろう? 二人とも曲輪の中央の方を見つめているようだけど……というか、例のビュンビュンって音もそっちから聞こえて来てる……?


 膨らむ疑念の答えを求めるかのように歩を速め、やや上り坂になっている道を上り切ると同時に俺の視界に飛び込んできたのは――!


「こんのクソ羽虫があああああああああああああああッ!! 今日という今日は私のツルで縊り殺してやるから覚悟しなさいよオオオオ――――――ッ!!」

「ふん、やれるもんならやってみなさいよッ! そんなツルさばきじゃいつまで経っても神速のあたしを捕らえる事は不可能よ! ほらほら昼寝の格好のままでも余裕で避けれちゃうわよ? よろしければさっさと本気を見せて頂けないでしょうか!? あっ、これが本気かっ! こりゃ失敬っ!!」

「きいいいいいいいいくそむしイイイイイイイ――――――――――――ッ!!」


 とんでもなくブチギレたウネ子が、ものすんごい剣幕でマリーを叩き落とそうとツルを滅茶苦茶に振り回しまくっていた。な、縄跳びみたいな音の正体はコレか……てかなんでまたここにマリーがいんだよ。神出鬼没ってレベルじゃねーぞ。


「な、なぁ、二人とも……何となく察しはつくけど、どうしてこうなった?」

「あっ、我が君……それがその、ここで待機しておりましたら、いつの間にやらマリー殿がウネ子殿の頭の花弁に取り付いて蜜を吸っておりまして……」

「それに気がついたウネ子さんが激怒し、マリーさんを追いかけ回して現在に至る、というわけです」

「うん、予想通りの答えだわ……」


 もうすぐ部隊が下の道に差し掛かるって時に、まーたあいつは騒動を起こしやがって……仕方ない、時間も無いしさっさと解決するか。あんな性悪妖精、修正してやる!


 マリーを視界の隅で捉えつつ、左の手のひらを上へ向けて「ほっ」と気合いを込めると、ボシュッと音を立ててサッカーボールくらいの大きさの魔力エネルギーの球体が宙に出現する。ヨーゼフの秘密施設を吹き飛ばしたライタの技から着想を得て、こっそりと練習していた新技だ。さっそく使う時がやってくるとはな……!


 ふよふよ浮いている魔力エネルギー弾を維持したまま左手を高く掲げ、右手も手刀のような形にして、左手と同じくらいの高さに揃える。そして、逃げ回っているマリーを目でしっかりと見据えたまま息を吸い込み――大きく声を張り上げた。


「ウネ子下がれッ! 『性悪妖精絶対殺す玉』いくわよ――――――――ッ!! アタ――――――――――ックッ!!!」


 直後、全力で振り降ろした右手に叩きつけられた魔力エネルギーの玉が弾丸のようにマリーめがけて直進した。魔力玉が唸りを上げながら猛烈な勢いでマリーに迫るが、マリーはギョッとした顔になりつつも素早く身をよじってそれをかわす。流石の逃げ足だ。だが、俺の「性悪妖精絶対殺す玉」はこれで終わりではないぞ!


 外れたのを見て取った俺は素早く右手の人差し指と中指を合わせ、目標を失ったまま直進している魔力玉に向けた。それからクンッと指を捻ると、魔力玉は指の動きに合わせて、ギュワンッと鋭い動きで再びマリーの方へと戻ってくる。そして、かわしたと思い込んですっかり油断しているマリーの体に真っ直ぐ向かっていき――直撃した。


「ギョエエエエエエエエエエエエ――――――――――――ッッ!!!」


 魔力玉はマリーの体に直撃すると同時にバチバチバチッと激しい音を立てながら炸裂し、マリーの体を包み込んだまま、しばらく放電するかのように魔力エネルギーを辺りへ飛び散らしていた。やがて魔力エネルギーを放出し終えると、魔力玉が浮いていた辺りから真っ黒焦げになったマリーがボトリと地面に落下する。ああ、早くも真っ黒焦げになる未来が到来してしまったな……。


 一仕事終えてやれやれと息をついていると、ウネ子が尻餅をつく格好で地面にへたり込んでいるのが目に入る。あらら、比較的近くでマリーが黒焦げになる様を見ていたせいでびっくりしちゃったのかな?


「おお~い、ウネ子、大丈夫か? どこも怪我してないよな?」


 近づきつつ声をかけると、ウネ子はハッとした顔になって「は、はい……」と返事をしながらヨロヨロと起き上がった。


「だ、大丈夫です……ありがとうございます、優しいおじさん……」

「え!? なんだって!? 悪い、マリーのうめき声で良く聞こえなかったわ! もう一回言ってくれるかな!?」

「ひいいっ!? や、優しいお兄さん! 優しいお兄さんって言いましたッ!」

「はっはっは、いやなに、人として当たり前の事をしたまでさ。あとでちゃんと補償としてマリーから妖精汁一年分を搾り取っておくからな、安心してくれよ!」


 俺の言葉を聞いてホッとしたのか、ウネ子はまだ少し顔を引きつらせながらも「は、はは……どうも……」と安堵した様子だった。うんうん、どうやらウネ子は修正する必要は無さそうだ。やっぱり平和が一番だなっ!


「あのう、我が君、そろそろ部隊がやって来る頃かと思うのですが……」


 平和の良さを噛みしめていると、いつの間にかそばに来ていたクロが背後からおずおずと申し出てきた。おっと、そういえばそうだったな。マリー退治に気を取られて本来の目的を忘れるとこだったわ。


「おお、もうそんな頃合いか。それじゃ邪魔者も排除出来た事だし、本来の任務に戻るとするか。みんなこっちに来てくれるか」


 部隊が通るはずの道を見下ろすために小曲輪の端っこ、崖になっている側へ移動する。ひょこっと顔だけを出して覗いてみると、ちょうど迎撃予定地点に部隊が差し掛かろうかというところだった。


「よし、クロはそろそろ下に移動してくれ。くれぐれもやりすぎないようにな」

「はっ、お任せ下さい。しっかりと役目をやり遂げて参ります」

「うん、頼んだぞ。じゃあウネ子、先頭があの辺りに来たら仕掛けてくれ……もう少し……よし、今だ! やれ!」

「は、はいっ!」


 合図を受けたウネ子が「むんっ!」とその場で力むと、下方にいる部隊の周辺の木々がざわざわと蠢き始める。部隊員たちもその異様な雰囲気に気がついたらしく、周囲を警戒しながら身構えているのが見える。そして、次の瞬間――部隊目掛けて、鋭い風切り音と共に大量の石ころが森の中から投げ込まれ始めた。


「うわあっ! な、なんだ!? ぐえっ!?」

「いっ、石!? あちこちから飛んできてるぞ!? あだっ!」


 ドカドカと石がぶつかる音に加えて、混乱する部隊員の悲鳴も耳に届く。ウネ子がツルを操ってそこら中から石ころを投げ込んでいるため、まるでぐるっと敵に囲まれているかのように感じるはずだ。


「うろたえるな! 魔法で石を防ぎ、その間に態勢を整えるんだ!」


 スコットさんが大声で指示を飛ばすと、杖を持った兵士が何やら詠唱を始め、少しすると部隊を覆うようにして風の壁のような物が出現する。なるほど、並みの弓矢や投石程度ならあれで防がれてしまうだろう。だが――


「お、おいっ! 石が突き抜けてるぞっ! ぐへえっ!」

「うわあっ! 隊長! ま、魔法で石を防げません!」

「ばっ、馬鹿な! 一体どうなっている!? ほげっ!!」


 投げ込まれる石は風の防壁をあっさりと通過し、相変わらず雨あられのごとく部隊へ降り注いでいた。そう……莱江山の石ころは並みの石ころではない。魔法に対して耐性があるのだ。


 この事に気づいたのは莱江山を山城に作り変えている時だった。地面に魔法が効きにくいという事は、莱江山の石ころとかも魔法が効きにくい、すなわち魔法への耐性があるのではないか、と。そしてゴッド砂嵐で岩を攻撃してみたりした結果、やはり普通の岩よりもかなり魔法攻撃に耐えられる事が発覚し、今日のために石ころをかき集めて準備しておいたというわけだ。


 魔法で石を防ぐ目論見が外れたためか、部隊の混乱はいっそう深まり、石ころが直撃して気を失っている兵もチラホラいるのが目に付く。と、魔法担当の兵も気を失ったのか、風の防壁も途切れてしまった。そろそろ大詰めだな。


「よしウネ子、頼んでばっかりで悪いけど、まだ気絶せずに粘ってる人をちょっとずつ森に引きずり込んでくれ」

「は、はひっ、頑張りまひゅっ」


 流石にずっとツルを動かしてる上に細かい操作をするのは大変なのか、ウネ子の顔にも疲労の色が窺える。事前に羊羹あげて魔力の底上げもしてるけど、莱江山の木とかを操るのはアルラウネでも大変らしい。あっそうだ、ここはひとつ、エルカさんに仕込まれたエールを送って元気づけてやるか……!


「頑張れ頑張れやれば出来る出来る絶対出来る! もうひと踏ん張りだ頑張れ頑張れ気持ちの問題だ負けるな頑張れ! そこだやれば絶対出来る頑張れ出来――」

「すみませんちょっと気が散るんで黙って貰っていいですかマジでッ!?」

「は、はい……すみませんでした……」


 ウネ子にガチ切れな感じで叫び返されてしまい、俺は即座にエルカ印のエールを送るのを中断した。お、俺としては善意でやったつもりなんだけどな……エルカさんなら今ので泣いて喜んでるはずなんだが、コミュニケーションって難しいね……。


 エールが裏目に出てしまいちょっとがっかりしながらも下の様子を窺ってみると、気絶せずに投石に耐えている兵が端の方からツルで森の中に引きずり込まれていくのが見えた。森の中には先ほど下へ向かったクロが待機しており、こっそりと気絶させていく手はずになっているのだ。


 そして、ちょっとずつちょっとずつ立っている兵が森の中へ引きずり込まれて減っていき、やがて――立っている兵は、誰もいなくなった。


「よっしゃ、ウネ子お疲れさん! あとは下に行って全員気絶してるかの最終確認して、部隊を山の麓に送り返すだけだわっ」

「ハァ……ハァ……す、すみません、私、ここで残っててもいいですかね……つ、疲れちゃって……」

「あっ、いいよいいよ休んでて。悪いな、一番大変な役やってもらっちゃって」

「い、いえ、ヨウカンも貰ったし……あれだけの数の兵を手玉に取るなんて楽しい体験、普段は出来ませんからね……ウヒッ、ウヒヒヒヒッ……」


 ウネ子は倒れ込んだ格好のまま「ウヒヒヒヒヒヒッ……」と上機嫌な笑い声を漏らしていた。魔物の本能なのか、それともマリーのイタズラとかで色々とストレスが溜まってるのか、存外楽しんでくれてたようだな……ちょっと不気味だけど……。


「そ、そっか……満足してくれてるんなら良かったわ……じゃ、じゃあハトちゃん、下に移動するか」

「ええ、行きましょうか」


 疲弊したウネ子をその場に残し、俺とハトちゃんは連れ立って下の森へと向かった。そのまま森を抜けて兵士が倒れている道まで出ると、クロが森の中で気絶させたであろう兵隊を道の方まで引っ張り出しているところのようだった。


「おーい、クロ! どうだった? ちゃんと上手いこと気絶させられたか?」

「はっ、抜かりは御座いません」

「よし、それじゃハトちゃんと一緒に倒れてる人たちの確認もやっといてくれるか。俺はセツカたちの方の様子見て来るわ。向こうも無事に終わってたら京四郎と一緒に戻って来るから、それから京四郎のゴーレムで全員を麓に送り返すぞ」


 クロとハトちゃんが「ははっ」「分かりました」と返事をするのを見届けると、俺は後ろ半分の部隊の処理がどうなっているのかを確かめるため、セツカたちの担当場所へと向かった。






「む、うう……」

「あっ、スコットさん、目を覚まされましたか」

「シンノスケ殿……? ここは……山の麓……? い、一体いつの間に……」


 スコットさんがうめき声を漏らしながら、のろのろと体を起こした。状況がうまく飲み込めないのか、困惑顔でキョロキョロと周囲に目をやっている。辺りにはまだ気を失っている兵士、同じように目が覚めて困惑している兵士、サラに回復魔法をかけてもらっている兵士などがまばらに散らばっていた。


「ふと様子を見に来たら、ここで皆さんが倒れているのを発見しましてね。村の者も呼んで、サラさんと協力して介抱していたところなんですよ。一体、山の中で何があったんです? ライタに襲撃されたんですか?」

「いや、部隊を分断されてから奇襲を受けたが……ライタの姿は見えなかった。そもそも、奇襲を仕掛けてきたのがライタかすらも……むう……」

「あっ、大丈夫ですか? サラさんを呼んできましょうか?」


 こめかみを押さえながらうなり声を漏らすスコットさんに声をかけるが、スコットさんは「い、いえ、大丈夫です」と俺を手で制し、言葉を続けた。


「回復魔法は他の兵を優先してやって下さい。私は目を覚ましている兵に敵の姿を見ていないか等の聞き取りをしに行きます」

「分かりました。何か手伝える事はありますか?」

「では、引き続き兵たちの介抱をお願いしてもいいですか? それと帰陣に備えて、散らばっている装備を回収してまとめていただけると有難いのですが……」

「介抱と装備の回収ですね。任せて下さい」


 さっそく頼まれた仕事に取り掛かろうと立ち上がると、スコットさんが少し慌てつつ「あっ、シンノスケ殿!」と俺を呼び止めた。


「その、今日はこのように情けない有様だが……我々はこの程度では決して諦めないので安心して頂きたい。今日の失敗を活かし、明日こそは悪雷を討伐してこの地域に平和をもたらして見せますので!」

「ははは、その事なら全く心配していませんよ。スコットさんたちならきっと成し遂げられると信じていますので。では、また後ほど」


 俺の言葉を聞いたスコットさんは少しほっとした表情を浮かべながら「ええ、また後で」と言って立ち上がり、目を覚ましている他の兵たちの方へ歩いて行った。どうやらまだまだ闘志は十分なようだ。


 もちろん、俺の方としても一度や二度撃退したくらいでスコットさんたちが諦めてくれるとは考えていない。もうしばらくは姿を隠しつつのゲリラ戦を繰り広げなければならないだろう。俺たちとスコットさんたちの根気比べだ。


 兵たちと会話を交わしているスコットさんの姿を見ながら決意を固め直しつつ、俺も兵士の介抱に加わるため、回復魔法をかけているサラの方へ駆け寄って行った。

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