3-2

 工事現場などで、作業員の休憩場所として使われる移動可能なプレハブを、スーパーハウスという。多分、商品名だろう。驚くことに電気や水道を通すことも出来るという話だ。

 しかし、寧々ねねたちが一時的にアジトとして使っているスーパーハウスは、単に打ち捨てられたものだった。化粧ベニアの、床と壁と屋根、そしてドアがついただけの設備にすぎない。ただし、パイプ椅子が三つある。三つしかないので、手足を拘束された眠り男は床に座らせておいた。意外とおとなしくしている。

 クロエリは椅子を使わず、窓から外を見つめている。

 シロエリは寧々のすぐそばに、パイプ椅子を移動させていた。

「アザミちゃん、あの……」

「さっきの話か? 車の中の」

 シロエリはうなずいた。

 シロエリは綺麗な女で、いわゆる目力めぢからがある。真率な瞳で見つめられると落ち着かない。

 寧々は眠り男を見た。眠り男は、虚ろな顔つきで床を見つている。いやらしいことを考えているのかもしれなかった。男がそういうことを考える時の匂いが、かすかに漂っている。

「予定通り、変更なしでいく──」

「だよね!」

「か、どうかを今、考えてる」

「でも、もう高原台に電話しちゃったよ?」

「そこのクズは、百万や二百万のクズじゃない。聞いてたろ? 途方もないことを企んでるクズなんだ。そんな顔すんな。まぁ、なんにせよ姐御が──」

 携帯の低い呼び出し音が鳴った。

 相手を確認して、寧々は明るい声で電話に出た。

「よぉ姐御。どうだった、うちの客。可愛がってもらえた?」

『ああ。たっぷり可愛がってやったよ』

「こんなこともあろうかと、準備しといたんだ」

『だろうよ。めちゃめちゃ笑えるな。おい寧々、高原台を手玉にとって、ただですむと思うのか? みんなカッチンカッチンきてるぜ』

「そいつは話がおかしいよ。高原台が布告したから、みんな真面目に眠り男を探したんだ。懸賞金をチラつかせておいて、いざ現われたら、こそこそ自分たちで捕まえるのか? 通らないね」

『不公平だ、とでもいいたいのか? 高原台が懸賞金の支払いをしない、ていうなら、わかる話だが』

「さっきアオジタって人から連絡あったよ」

『へぇ。なんて?』

「姐御に金を取られたってさ。でも必ず金は取り戻すから、とにかく姐御とは取り引きすんなって。そうなのか?」

『よせよ。金なんか取ってない。与太話よたばなしだ。でもまぁ、誰に盗まれたにせよ、アオジタが金を取り戻すのは難しいだろうな。寧々、困ってるんだろ?』

「どうかな」

『わたしが間に入るよ。幸い、手元にちょっとした金があるんだ。アオジタに眠り男を渡すのもいいだろうさ。ただし、まず間違いなく金は受け取れねぇぜ。金を持ってないんだから』

「手元の、ちょっとした金って?」

『二百万だ』

 笑いも出なかった。寧々はいった。「姐御。強引だな、相変わらず」

『そうでもないだろ? お互い様って気がするけどな』

 寧々はため息をつく。「まぁいいや。それでいこう」

『よしよし、いい子だな。ちなみに、寧々。お前、調達屋の小森を相談役にしてたろ』

「ああ、まぁ」

『眠り男のことは、小森から聞いたのか?』

「そうだよ。賞金首だから、誰が捕まえてもかまわねぇっていってたよ」

『ふざけた野郎だな。何時ごろの話だ?』

「十時くらいだったかな」

『太ぇ野郎だぜ。すまし顔でわたしに嘘をいいやがった。取り引き場所の相談したか?』

「ここを紹介された」

『ここっていうと、採石場のスーパーハウスか?』

「なんでわかったの?」

『どうした、元気ないな』

「姐御、うるせぇよ。なんでここがわかった?」

『思い出したんだ。昔、ヤクザ絡みのいざこざがあってさ。小森の嫁さんを、そこに隠してたことがある。いい場所だよな。道が見渡せるから車の出入りが見えるし、逃げ道もあるし。いや、そんなのどうでもいい。小森のやつ、姿を消したぞ』

「……なんで?」

『知らねぇ。断っておくが、わたしらじゃない。とにかく、だ。小森の様子が怪しい。下手したら他の誰かと繋がってる』

「マジで? どうして?」

『眠り男のこと、お前らに漏らしたくらいで逃げるような玉じゃねぇだろ。あいつ、なんかやらかしてんじゃねぇかと思うんだ。とにかく、警戒してそこを出ろ』

「取引場所を変えるの?」

『そうだ。こっちで決めて指示するから、連絡待ってろ』

「了解」

 あざみ野寧々は首をかしげて電話を切った。

 小森の携帯に電話した。相手は出ない。

「おやっさんが消えたらしい。シロエリ、悪いけど裸になって、一回りしてくれる?」

「はーい」

 それまでうつむいていた眠り男が飛び上がるような反応を見せた。

「下ぁ向いてろ」寧々はいった。

「え! なんで!」

「でっかい声出すな。レディーの着替えだぞ」

「だから? ぼくが紳士に見えるの?」

「大丈夫だよ、アザミちゃん。そいつなにも出来ないし」

 シロエリは全裸になって、下着を手早く畳んでいた。

 一瞬後に、白い小型犬に変身した。コンピューター・グラフィックスで実現した、骨格が変形するモーフィングのような、ちんたらした変身じゃない。一瞬だ。女の裸身が消え、空中に犬が現われて、床に降り立つような、そういう手品があれば、それが一番近いだろう。

 西洋の人狼と違い、日本の人狼は犬神憑きと深い結びつきがある。そのおかげで、狼だけでなく、いろいろな犬種になれる、といわれている。

「気をつけるっす」

 クロエリがドアを開ける。小型犬は元気良く外へ飛び出した。

 白犬を見送ったクロエリが、ドアを閉めた。

「姉ちゃんは、寧々さんのこと心配してるっすよ」

「わかってる。懸賞金は半分になったが、眠り男は高原台に渡す。姐御がここまで咬みついてきた以上、詰みだ。あの人はうちらの、貴重な味方だからな。それに、なんかキナ臭くなってきたし」

「きみ達」眠り男がいった。「人間を食べたことある?」

「あ?」

「あぶらぎった、固太りの中年が動脈硬化で急死して、きみ達の前に倒れている。塩っけの効いた皮膚をなめ回すだけでもおいしいだろう。内蔵だってまだほかほかだ。でもきみ達、食べないんだろうね。みじめにポテトチップスでもかじるんだろう」

「なにがいいたい」

「勇気について論じたい。きみ達が、自分のことを真剣に考えるなら、ぼくと手を結ぶべきだ。ぼくは革新だ。ぼくと、ぼくの魔女は革命の炎だ。ある社会の死と再生をつかさどる者だ。よりよいモンスターのあり方を求める戦士たちの守護者だ。きみ達はきっと、自身のことを本気で考えたことがないんだ。だから売春なんてしちゃうんだよ。──ごめんなさい」

 迷彩パーカーのポケットに手を入れて、クロエリが眠り男を見下ろしていた。

「かまわねぇっすよ? いいかけたんだから、最後までいうっす」

「どうもすみませんでした。ごめんなさい」

 クロエリが振り返る。

 寧々は首を横に振った。こんなの、殴る価値もない。

 こいつは魔女を契約で縛って働かせるゴミクズだ。そんなのは人間社会にもモンスターのなかにもいる。ありふれた、平凡な、よくいるクズだ。なんかの炎じゃない。

 あざみ野寧々はこの手の男に詳しいつもりだ。

 人狼の世界は、徹底した男社会である。一人前として扱われるのは男のみ、女は人目につかないよう隔離される。なんらかの集いで、アクセサリーみたいに連れ出される以外、人狼の女が表に出ることはない。

 それくらいならまだ我慢できる。旦那や彼氏のために売春させられることだって多いのだ。それで見返りがあるわけでもない。一銭だって入ってこない。

 狼は、群れを作る本能が強い。仲間のため、みんなのため、おまえが我慢しろ、といわれると、反論できない空気になる。寧々が中学生のとき売春で稼いだ金は、フェンリルという不良グループに集金されていた。仕事の後は、その頃つきあっていた彼氏──寧々を売春に追いこんだ張本人──に優しくしてもらった。その腕のなかで、寧々は違う景色を見ていた。

 人狼の女は、裏から男を支え、子供を世に放ってから無言で死ぬ。

 そんな一生を、寧々は許せなかった。

 だから寧々は反逆した。勉強した。中学の時、ひとつ下に城山愛莉──シロエリという勉強のできる女狼がいた。その後輩を仲間に引き入れて勉強した。

 月夜市の人狼たちは、レベルの低い小雨町の私立高校へ通うのがしきたりになっていた。フェンリルはその高校を母体としている。寧々は偏差値の高い県立月夜第一高校を受験して、合格した。モンスターは戸籍に問題があって、公立の高校は落とされる、という真しやかな噂を、打ち破った。

 一年後にシロエリが入学してきて、さらに翌年、城山美佳──クロエリが数名の仲間を引き連れてやってきた。ボーンズはこうして結成された。フェンリルの妨害があったのは、最初の半年くらいだった。寧々は一人で出かけていって、血をかぶったような格好で帰ってきたりした。戦闘力の男女差があまりないのが、モンスターのいいところである。

 この抗争に始末をつけたのは、犬目組だ。ヤクザが、女だけの不良グループのケツを持つことになった。ボーンズは勝ったのだ。犬目組のヤクザどもは、ぞっとするくらい公正に寧々たちを扱った。月々に納める金は想像よりずっと安かった。『長く続けろよ』という意味に違いない。

 ──続けてたまるか。

 寧々は思っている。モンスターにまともな仕事がないから、売春しているにすぎない。あくまで手段であって、それを目的にしている女なんかいない、ということを理解しない男は多い。

 店を持とう。

 というのがボーンズ上層部の密かな野心だった。シロエリはほんわかしたケーキ屋みたいなものを妄想しているらしい。寧々は、男向けのリフレか、メイド喫茶の類が固いのではないか、と考えている。人狼の女の子に多少の雇用も作ってやれる。

 しかし、まだ夢だ。金が足らない。今のペースでは、野望実現まで何年かかるかわからない。デリヘルの稼ぎの上前を、値上げするわけにもいかない。狼の女子が、仲間やチームのためじゃなく、自分のために金を稼ぐ、というのがボーンズの意義だ。

 寧々は、眠り男を見下ろす。

 チャンスを見逃していては、のし上がれない。この悪魔が金になるなら、そうすべきだ。

 問題は、そんなに都合よく買い手が見つからないことである。

 ──いっそのこと。

 あの星谷っていう魔女を、こいつに与えてみるか。悪魔の力なら、叶わない願いはない、とかいっていた。店の一軒くらいどうにかなるだろう。

 星谷姫里ほしやひさとは、生ゴミ臭い男の物に口をつけた経験あるのだろうか。人間の振りをして生活し、それがバレたら高原台の魔女になって、いい金をもらうつもりらしい。ふざけた女だが、そういう生き方があったって別にいい。寧々には関係ない。

 しかし、あいつの犠牲で自分たちの将来が開けるなら、

 ──堕としたってかまわない。

 外で、犬の甲高い鳴き声がした。

「寧々さん!」

 窓辺に戻って外を見たクロエリが叫ぶ。

 寧々は外を見た。

 女の子が二人、シロエリに吠えられて、おびえている。


 スーパーハウスがどこに打ち捨ててあるかといえば、倒産した採石場の土場である。白い砕石の山にも、黒い土の山にも雑草が生えている。倒産した会社の敷地なので遵法じゅんぽう意識の高い人間は入ってこないし、別段面白いこともないので、遵法意識の低い不良も入ってこない。近くに人家がないのも使いやすいポイントだ。

 寧々とクロエリは、スーパーハウスを出た。白い小型犬が吠えるのをやめ、寧々たちと入れ違いにアジトへ飛びこむ。

 寧々は珍客を観察した。

「この辺の人じゃないよね? どうかした?」

 よく見ると、砂山の陰に白の小型車が止めてあった。

 二人組の女の子は、互いに顔を見合わせる。

 片方は小柄で、小学生くらいに見える。銀髪のハーフアップ、石膏像みたいな顔色、目の下の隈の灰色は、メイクじゃなさそうだ。蜘蛛の巣が刺繍された眼帯で、左目を覆っている。濃い紫の混じった、黒いキャミソール、下は黒のティアードスカート。厚底ブーツの黒革はホコリをかぶって光沢がかすんでいる。

 もう片方は、モデルみたいに背が高い。髪は真っ赤なロング、瞳の焦点があっていない。右の瞳は右を見て、左の瞳は左下あたりにただよっている。鼻の頭から顎まで、風邪の時つけるマスクで覆っていた。黒・赤のボーダー長袖Tシャツ、格好いいシルエットのスキニージーンズ、相棒がゴスなら、こっちはパンクってところだろうか。銀色のアタッシュケースを下げている。

 ふたりとも人間でないのは分かる。しかしタイプがわからない。匂いは吸血鬼に似ていた。

 小柄なゴスのほうが、一歩踏み出した。

「お金持ってきたよ。眠り男を売ってください」

 甲高い声でいう。

「スーちゃん、見せたげて」

 スーちゃん、と呼ばれたパンク女が、アタッシュケースの中身を見せる。二千万くらいありそうだ。

 スーちゃんはアタッシュケースを閉じて一歩下がる。

「あんたら、なに?」寧々は、ニコニコと笑った。

「それいえない。眠り男ください。くれれば、このお金、置いてきます」

 寧々はクロエリの顔を見た。クロエリは目を見開いて首を横に振る。

 寧々は機嫌良くうなずいた。

「悪いけど、先約があって売れない。そのスーツケース置いて、きたところへ帰ってくれる?」

「眠り男は?」

「眠り男は駄目」

「眠り男駄目?」

「駄目」

「ちょっと待ってて。今、スーちゃんと同期を行ないますので」

 ゴスロリはそういって、スーちゃんに手の平を向けた。スーちゃんは、その手に自分の手をあわせる。ふたりは三秒ほどで、また手を下ろした。

「それおかしいです! 眠り男くれないのに、お金置いてけって」

 ゴスはやかましかった。

「でもなぁ」寧々はクロエリにいう。

 クロエリがうなずく。

「そんな大金見せびらかされたら、欲しくなっちゃうよ」

「欲しいなら、眠り男を連れてこいってんです」

「いや、違う。うちらはおかしくない。突然きてね、そんなこといい出しちゃ駄目っしょ。良くないよ。お金置いてく? それとも力づくで眠り男を奪う?」

 寧々がいうと、スーちゃんが唸った。地獄の底から湧きあがるような唸りだった。うら若い女の子の声じゃない。

「あーあ。スーちゃんが怒った。あーあ」ゴスロリがいう。「怒っちゃったよ、スーちゃんが。バーカ。馬鹿狼。どうするですか」

 寧々は嬉しくて、頬の緩みが戻せずにいる。

 ほんの数分前まで、誰かが大金を持って眠り男を買いにきてくれないか、などと考えていた寧々である。それが、まさか叶うとは思わなかった。

 しかも、買いにきたのがよそ者の二人組ときた。

 これはもう、お告げだ。なにか偉大な存在からのメッセージだ。寧々は月夜市が気に入っている。モンスターにとって住みやすい町だ。できれば離れたくない。高原台とうまくやっていきたいと思っている。

 眠り男は、高原台に渡したい。けれどお金は欲しい。

 そこに、アタッシュケース一杯のお金を持ったよそ者がやってきたのである。

 挨拶もなくやってきて、勝手なことをやってるモンスターのよそ者は、殺したっていいと決まっているのだ。いったい、これ以上の幸運があり得るのか疑わしい。

「あんたたちのこと、抱きしめたいよ」

「うるせー馬鹿。眠り男をくださいましたら幸いです」

「なにいっても、眠り男は渡さない」

「ちょっと同期する。お待ちください」

 まずいな、と寧々は思った。案の定だった。ゴスとスーちゃんが手を合わせた瞬間、クロエリが地を蹴った。狙いはスーちゃんらしい。

 寧々としては、向こうから手出しさせたかった。そこまで我慢してこそ、売られた喧嘩になる。こっちの言い分に筋が通る。けれど、それは寧々の美学にすぎない。

 先に仕掛けられるなら、仕掛けたほうがいい。相手の実力がわからない。その相手が油断しているなら、そこを突く。一撃で反撃不能にする。それが正しい。

 寧々もクロエリに続いた。最初の瞬間、スーちゃんは同期に集中していてこちらの動きに気付いていない。次の瞬間、スーちゃんはまだ、顔を伏せている。最後の瞬間、スーちゃんはようやくこっちを見ようとした。だが、もう無理だ。遅すぎる。

 なにしろクロエリは、最後の間合いを決める踏みこみでジャンプしており、顔面めがけて、いわゆるドロップ・キックを仕掛けている。

 ドロップ・キックは、決まった。

 スーちゃんの首が折れた。頭が一度弾み、一回転する。そのまま、スーちゃんの頭が、スーちゃんの胸のあたりにぶら下がった。スーツケースが地面に倒れる。しかし、スーちゃんは倒れない。傾きはしたけど、倒れない。妙な重心だ。

 クロエリは地面に転がりながら、その遠心力で立ち上がり、体勢を整える。

 寧々も間合いに入った。

 転ばせるつもりで膝裏にローキックを入れると、さすがにスーちゃんの上体は乱れた。それでも立っている。背中が地面につきそうな体勢なのに、立っている。折れた首のせいで、頭は背中側のほうにぶら下がって揺れた。

 無傷なはずのゴスロリが、地面に尻をつけて、悲鳴をあげた。

 動画の逆再生みたいに、スーちゃんは膝を伸ばし、背中を伸ばし、寧々のほうを向いて直立した。背中側に垂れていた頭を両手で挟んで、首に戻した。ホゾに出っ張りをハメるみたいに、頭を胴体に押しつけている。

 スーちゃんの頭が、元に戻った。極端なガチャ目で、瞬きをした。地の底から響くような唸りをあげる。

「殺すしかないっすよ、これ」クロエリが嬉しそうな声でいった。

「首の骨を折ってから、それいうか」寧々は答えた。「てか、なんでまだ生きてるんだ?」

「ゾンビっすかね?」

「ゾンビなんて、映画でしか見たことねぇよ。それに──」

「ええ、腐臭がないっすね。どうであれ全身バラバラにしてやれば、もう動けない。本気出すっすよ」

「できれば殺すな。裏を知りたい」

 とはいったものの、殺さずにすむような相手かどうか。


 ゴローちゃんは、ボスに怒られているところだった。

 ボスは、鞭を鳴らすようないい声で叱責する。ゴローちゃんは、大きな体を縮ませる思いだった。

 ボスは小男だ。小男の中年に、激しく叱られている。仕事をサボって、行方をくらませていたからだ。ボスは人間じゃない。自称ムジナで、祖先はかつて武蔵の国で大暴れしたらしい。現在でもムジナ坂、という地名が残っているそうだ。

 ──どうかな。

 と、内心でゴローちゃんは冷笑している。祖先のことをいい出したら、ゴローちゃんの祖先は酒呑童子が舎弟、不来方こずかた羅刹らせつ童子だ。だいたい、ボスが本当にムジナかも怪しい。美濃や信州の山にいた豆狸がいいところだろう。

 とはいえ、豆狸だろうが、ムジナだろうが、その程度の化生けしょうに鬼がコキ使われていることにかわりない。ゴローちゃんは自分が恥ずかしかった。

「ったく、以後、気をつけるように!」

 ゴローちゃんは、涙目になっている。「……あい」

「わかりゃあ、いいよ。いくぞ」

「あい」

 ボスは軽トラのほうへ歩きはじめた。ゴローちゃんはいそいで、作業服の袖で涙をぬぐう。

 軽トラは、国道を東に快走した。時計の針は午後二時を指した。強盗する前に、ヤモリ女と、姫里ちゃんという初めて会う女子高生と一緒に、ファミレスで食事した。けれど、もうお腹が空いていた。オヤツにセブンイレブンのブリトーを食べよう、と考えていると、車が右折した。

 行き先が怪しい。

 高原台へ向かっている。

「あのボス、どこへ……?」

「あ? 高原台のお偉いさんがパンクで困ってんだとよ」

「あふ、あふ!」ゴローちゃんは声にならない声をあげた。

「どした!」

「どしたって、どして、どして」

 ゴローちゃんはあたふたした。ボスに本当のことをいうわけにいかない。

 血の気が引く時の寒気を感じた。

 車が到着した。

 サングラスをかけた二人組が軽トラを見る。道の端にベントレーを寄せていた。

 ボスが弾むような動作で軽トラを降りた。「お待たせしやしった!」

 ゴローちゃんも恐る恐る車を降りる。ボスは背の高い吸血鬼と笑いあっている。小柄な吸血鬼──妙な、紐みたいな武器を投げつけてきた吸血鬼は、携帯で誰かと話していた。

「いやいや、草上さん、見つけしだい殺してやりますよ」小柄な吸血鬼は興奮している。「ここまで馬鹿にされて──冗談じゃない!」

 ──まずい、まずい、まずい。

 出来るだけうつむいて仕事しよう。目立たなければ、やりすごせる。なにしろ、顔は見られていないのだ。急げばいい。とっとと終わらせてブリトーを食べよう。

 ゴローちゃんは作業服の上着を脱いで、助手席に放りこむ。

 軽トラの荷台からジャッキを運んだ。

「ゴロー!」ボスの鞭みたいな声が飛んでくる。「三角板を最初に出せよ。タイヤ止めも」

「ごめんなさい」

 ゴローちゃんは焦って、せっかく運んだジャッキを荷台に戻そうとしてしまった。最初からすべてをやり直そうと思ったのである。

「おい! なにしてる!」

「ごめんなさい、ごめんなさい」

 ボスに怒鳴られ、かえって注目を浴びてしまった。小柄なイケメンの吸血鬼も、携帯での通話を終えたようで、ゴローちゃんを見つめていた。

 背の高い吸血鬼のほうが、微笑みを浮かべた。

「まぁ、おやっさん」と、ボスをなだめてくれた。「そう、ドヤすばっかりじゃ可哀想だよ。最近の若者は自分に自信がないからな。褒めて褒めて、懐に入れて温めるみたいにして自信をつけさせてあげないと。見なよ、こいつの腕をさ」

 長身の吸血鬼は、タイヤ止めを設置しているゴローちゃんに近づいてきた。

「ミミズ脹れ作って頑張ってるじゃねぇの。こんな傷、こんな……こんな傷、どうやったら出来るんだ? おい若いの、この傷、どこでこしらえてきた?」

「い、いやぁ……」

 ゴローちゃんは冷や汗をかいている。なんのことはない、小柄な吸血鬼の投げた分銅が、肌に食いこんで出来た赤い跡なのだ。

 いいわけを必死に考えた。

 気がつくと、ダークスーツの吸血鬼、二人組が、サングラスを外していた。

 ゴローちゃんを凄い目で睨んでいる。


 おかしい、と気づいたのは、スーちゃんの腹に得意のレバー打ちを決めた時だった。

 決まれば、立っていられないようなボディブローだ。人間ならもちろん、モンスターにもまず効く。

 ──効かないな。

 変な女だ、と寧々は思う。

 効かないどころか、スーちゃんとやらは案山子かかしみたいに片足で立って、しかも斜めに傾いている。重心がおかしいのだ。

 寧々とクロエリは、未知の深海生物に対峙した二匹の狼のように、スーちゃんの周りを回る。警戒しつつ攻撃した。近づいては打撃を与え、すぐに反撃が届かない位置へ逃げる。蹴りも打撃も当たっているのに、相手にヘタれる気配がない。

 寝かせないと駄目だ、と寧々は見た。

 膝蹴りを警戒しつつ正面から近づき、寧々は敵の足に飛びついた。その勢いでスーちゃんを押し倒す。木偶でくみたいなモンスターだ。寧々に呼応して、クロエリが躍りあがり、スーちゃんに馬乗りになってマウントをとった。

 ふんっ、とクロエリは腹から息を吐き、相手の頭を殴った。左、右、左、右。スーちゃんの足を抑える寧々には、クロエリの華奢な背中が見える。ふんっ、という息とともに、右の拳、左の拳を交互に規則正しく打ちこむクロエリは、その無機質さや無感動さが肉食の昆虫を思わせた。

 すでにスーちゃんの両腕はぐったりと地面に投げ出されている。

 寧々は後輩の背中を優しく二回叩いた。

 振り返ったクロエリは、思った通り変身をきざしていて、目が黄色く濁っていた。口は兎唇みつくちに割れて、牙がのぞいている。クロエリは、ピンクの髪が広がるほど頭を振る。顔が元の女の子に戻った。バツの悪そうな表情で、拳の、皮が剥けたところをなめる。こういうところが、クロエリの可愛いところだ、と寧々は思っている。

 立ち上がって辺りを見渡した。アタッシュケースはすぐに見つかった。ゴスの子は逃げたか、と思ったら、最後に見た時と同じ場所で、腰を抜かしていた。いい感じに怯えきった目をしている。漏らしたかな、と鼻をきかせた。そんな匂いはなかった。

 ただ、喧嘩してる時にも感じていたことだが、こいつらには薬品臭がある。消毒用アルコールだか何かの匂いだ。

 ──人造人間かな。

 見たことはないけれど、聞いたことがある。小説として描かれたフランケンシュタイン博士は、実在のマッドサイエンティストをモデルにしている。小説にも描かれたことだが、死体の蘇生ではなく、「理想の人間」の創造を研究していたらしい。複数の人間の死体を集めて切り刻み、優れたパーツを選り分けて一体とし、縫いあわせて、優等な人類の誕生、というわけだ。

 実験は成功したものの、新人類として作られたそいつはただちにモンスター化した。人造人間は繁殖しないが、どういう経緯でか、新人類創造のノウハウを継承している。人造人間は、自らの手で人造人間を製造する。家族や友達を作り出すことで数を増やし、寒い国に隠れて小さなコミュニティーを営んでいる、という話だ。

「あんたら、なんなの?」

 寧々は訊いた。

 ゴスの女の子は、あわあわと後ずさった。

 眼帯をしていない右目で、なにかを見ている。

 寧々は振り返る。背後に立っていたクロエリと目があった。見ているうちに、クロエリの首に白い指が這い、喉をつかんだ。

 バチンッ、

 と、凄い音がして、クロエリの髪から細い煙が立ち上る。クロエリは白目を剥いて、地面に崩れ落ちた。

「野郎!」

 電撃か。

 スーちゃんが立っていた。スーちゃんの髪は赤い。顔も血に濡れて赤い。つけているマスクも血を吸って赤く汚れている。斜視の目だけが白々として見えた。関節をおかしな方向に曲げながら、細長い腕を伸ばし、寧々につかみかかってきた。

 獣の唸り声が聞こえたのはその時だ。

 巨大な、真っ白い毛の固まりが猛烈な勢いで向かってきた。狼に変身したシロエリだ。大型犬より一回り大きい。地面を蹴る足は、人間の拳に蹴爪けづめをつけたようだ。たてがみを怒りで膨らませている。口唇をめくり上げ、肉色の歯茎と乳白色の太い牙をのぞかせていた。

 シロエリは優美な長い尾を振って、方向を変えた。

 ゴスの子を目指している。

 ──いいぞ。

 シロエリはモンスターにはめずらしい、他人の痛みに共感してしまう優しい子だ。まず喧嘩なんかしない。それでも、やはり狼だ。敵の一番弱い部分を即座に見抜いた。

 ──いいぞ、突進しろ!

 ゴスロリはわめいた。くるな、といって手を突き出した。

 その手が狼にさわった。眉間のあたりだ。

 シロエリは動きを止めて、ほんの短い時間、ゴスの片目と見つめあっていた。次の瞬間に、シロエリは、蹴られた小型犬みたいな甲高い悲鳴を上げて飛びのいた。体をねじるように二度、三度跳ね回り、地面に倒れた時は女の姿に戻っている。

 電撃をくらったか、と寧々は疑った。違う。毛の焦げる匂いがしない。

 シロエリは、背中の金髪を肩へこぼしながら、起きあがろうとした。

「シロエリ、姐御と合流しろ!」

 寧々は叫び、後ろへ跳んでスーちゃんと距離をとった。

 シロエリは後ろを振り返らず、白い毛の中型犬に姿を変え、矢のように土場の砂山を駆けあがっていった。

 さすがに駄目すぎる。

 自分が、だ。

 金に目がくらんで判断を誤った。

 ──けど、まだ終わりじゃない。

 ゴスロリはよほど怖かったのか、地面に手をついて嘔吐していた。全身震えながら吐いている。

 スーちゃんはそれを心配そうに見ていた。背中を丸めて、スーちゃんは寧々のほうへ顔を向けた。

 短く唸って、気絶したクロエリを指差す。スーちゃんは諭すように、首を横に振った。

 スーちゃんは『おまえの負けだ』といいたいのだ。確かに、クロエリを守りながら戦うのは無理だ。

「わかったよ」

 寧々は戦闘体勢を解いた。相手が冷静なら、寧々が熱くなるわけにはいかない。電撃を叩きこまれて意識を失えば、チャンスを逃す。

「どうにでもしろよ」

「スーちゃん」ゴスロリが口元をぬぐいながら立ち上がった。「こいつら、ばぁばのところへ連れていこう」

 スーちゃんはまた短く唸る。両腕を垂らしてのっそり歩き、倒れているクロエリを片手でつまみあげると、肩にかついだ。さらに札束のつまったアタッシュケースを持って車のほうへ歩いていく。

 この隙にゴスロリを人質にしようか、と考えていると、ゴスロリのほうから近づいてきた。

「アザミちゃん」

「いきなり気安すぎっしょ。なんで名前知ってんの?」

 ゴスの子は片目をぱちくりさせている。「あの白狼、男とホテルにいって、その、なにをしてる、ですか? 男の、その、服を脱いで、その……」

「なんの話だよ」

「あの狼、毎日のように男と、一緒に、ホテルの部屋で二人きりになって、その、なんか変なこと、してるですよ。なんか、エロ? なこと?」

「……誰が?」

「さっきの、でっかい狼の女ですよ!」

「なんで——」

 寧々は目を細めた。よくわからないが、シロエリの記憶が一部、このゴスっ子に入りこんでいる、と直感した。多分、こいつらがやっていた『同期』と関係ある。

「怖いことないから。仕事でやってるだけだし。教えてやるよ。ちょうど眠り男がいるから、あいつ裸にしよう」

 寧々はいう。

 そんなことをしていれば、姐御が到着するはずだ。

「いこう。けっこう面白いよ」

「やだ、やだ、いいのです、いらないです」

「でも、興味あるんでしょ?」

「スーちゃん! スーちゃん!」

 ゴスロリはきゅうに駆け出して、こっちへ帰ってこようとしていたスーちゃんの前で転んだ。

 スーちゃんはゴスの子を助け起こして、二人は互いの手を合わせた。

 同期がすむや否や、スーちゃんは地面にしゃがみこんだ。自分の肩を抱いて震えている。

 寧々は遠目に見ていた。今ならクロエリを取り返して逃げ出せるかもしれないが、あまり賢い手ではない。

 クロエリと、眠り男、そして札束。この三点セットを持ち去るチャンスが必ずある。あの間抜け二人組なら、そういう隙を見せてくれそうだ。

 スーちゃんは震えながら、寧々を見返してきた。

 寧々の考えを見透かすかのような視線だった。


 姫里は助手席の窓にため息を吹きつけ、流れる景色を見ていた。

 ゴローちゃんのヤードで借りた車はホンダのアコードだ。車は線路を渡り、月夜市の北を目指していた。

「ね、ヤモリ女」と、話しかける。

「あんだよ」

「あんだよ、ってなんなの? まぁいいや。道具屋の小森さん、寧々さんたちに眠り男の正体をバラしたんだよね?」

「そうだよ」

「一方で、高原台にも眠り男のことを報告したんでしょ?」

「ああ。矛盾して見えるな」

「それってつまり、寧々さんと高原台、両方にいい顔したってことだよね? それが気まずくて小森さん、隠れただけ、というのはない?」

「ない、とはいわねぇよ。ただな、今回は悪魔が絡んでるだろ。安易な結論で終わらせるわけにいかねぇ。だいたい、ああ見えて小森は大人だ。素人じゃない。大の男が不審な動きをするなら、そりゃ意図があるってことだ。さっきいった矛盾だって、本当に矛盾かどうかわからねぇ」

「意図がある、と? どんな?」

「それをずっと考えてる。眠り男ってのは極言すれば力だよ。魔女っていう火を近づけると爆発する、可燃性の危険物だ。意図をもって眠り男を欲しがるやつがいてもおかしくない。眠り男自身が、伯爵に銃口を向けたがってるのも気に入らねぇ」

「ちょっと待って。大ごとになってる?」

「まだなってない。一応、覚悟しとけ」

「ヤモリ女、もうひとつだけ」

「なにを遠慮するんだよ」ヤモリ女は鋭い視線を飛ばしてきた。「わたしはお地蔵さんみたいに心優しいからな。お前のクソ質問に時間を使ってやるよ」

「わたしの父親のこと、なにか知ってるよね?」

「知らねぇよ、詳しいことは」

「失踪したのは知ってるよね?」

「まぁな。どこへいったのかは本当に知らない」

「話したことは?」

「あるよ、一、二回。姫里、次朗さんのことは忘れろ。モンスターと結婚した人間が姿を消すのは珍しくねぇ。女房の正体に気づいたら、そりゃ逃げ出したくもなるだろ」

「忘れろって、無茶いわないでよ。眠り男は、なにか知ってるかな?」

「本人に聞け。家族が恋しくなったのか?」

「いや、別に。ってか、いけませんか? いろんなことが元通りになるかもしれないんだよ? 母親を取り戻して、ついでに父親の行方がわかるなら、わたしがここにいる意味もあるってもんだし」

 姫里は窓の外に目をやった。

 ふと、気づいた。

 窓の外に、白い犬がいた。必死にアコードと併走していた。姫里と目があった。

「ヤモリ女!」

 人間にはきっと、ただの野良犬に見えるのだろう。モンスターなら、この犬がただの野良犬じゃないとわかる。揺らぐような瘴気を発している。

 アコードはスピードを緩めて路肩に停車した。

 姫里は車を降りて、後部座席のドアを開ける。

 白犬は後部座席に飛びこむと同時に、裸の女性に変化した。荒い呼吸で、背中を波打たせている。

 姫里は、自分も後部座席に乗った。裸の女性は、ボーンズのアジトで紹介されたシロエリだった。車が発進する。

「ヤモリ女! 服!」

「持ってねぇよ」

 姫里は手早くTシャツを脱いだ。臭くないか、鼻をつけて確認し、

「ごめんなさい、これしかない」

 と、手渡す。

 シロエリはTシャツを着た。背もたれに体を預けて、息をきらしていた。

「ありがとう、星谷さん。星谷さんは……いい香りが、しますですよ」

 姫里を見る、シロエリの目つきが変だった。瞳の焦点があっていない。

「丘の上にいけば安全なのです。わたしたちしか知らない、わたしたちの白い家にゆくのですよ」

「丘ってのはなんだ?」ヤモリ女が険悪な声でいった。「寧々はどうした?」

「柵で囲ってあるのです。知らない人は誰も入ってきませんよ? もう、誰とも会わなくていいし、誰とも喋らなくていいのです。ふたりで幸せに暮らせるですよ?」

「ヤモリ女、シロエリさんの様子がおかしい!」

「姫里、そいつの頬っぺた引っぱたけ!」

「嫌だよ! 馬鹿じゃないの!」

「そいつを正気に戻すんだ」

 姫里はシロエリの肩を抱いた。狼女の体は冷えていた。

「シロエリさん、シロエリさんですよね?」

「星谷さん、ありがとう。Tシャツ、あったかいよ」

「シロエリさん、本名聞いていいですか?」

「城山愛莉」

「住所、聞いていいですか?」

「本町胡桃沢二丁目。食堂なの。狭いけど」

「寧々さんは?」

「アザミちゃん? アザミちゃんは──」

 シロエリの指が、強く姫里の肩にくいこんだ。体を引き離された。

「アザミちゃんと美佳、ヤバいかも! 採石場にいかないと!」

「眠り男は?」ヤモリ女が訊く。

「わからない。でも、きっと連れていかれた。ヤバい、ヤバい、急いでください!」

「なにがあった? 誰かきたのか?」

「誰? 誰って──スーちゃんはわたしの、大切な人ですよ? ゴラムがいう『愛しいしと』ですよ? 白い家はばぁばに知られていないのです。きっと逃げ出せますよ?」

「姫里、もう拳で殴れ!」

「嫌だってば!」

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