第3話「始まりの予兆」Part 3

太陽が沈んで月がひょこっと顔を出し、銀色の光を放ちながら暗い空を1人ポツン浮かんでいる。西の空はまだうっすら茜色で、辺りは松明で照らされている。キリキリキリと涼しげな虫の音を聞きながら、静かな夜の村を一人歩くアイル。

フォクス村長に話があると呼び出されて家を出てから数分が経ったところで建物の迷路を抜け、やっとの事でフォクスの住む家にたどり着いた。


「話ってなんだよ、爺ちゃん」


「おぉ、アイル。来たか。まぁとりあえず上がったらどうじゃ?」


「そーだな、じゃあお邪魔するぜ」


そういってアイルは家に上がり、椅子に腰をかける。


アイルとアリーの「爺ちゃん」こと、フォクス村長は一般的にはアイル兄妹の「家族」という事になっているが、実は血が繋がっているわけではないのだ。

タノンの炎の後、アイルは銀髪の青年から預かった光剣を手に、アリーを抱えながらなんとか逃げ切ることができたものの、村から出てすぐにアイルは気を失ってしまったのだ。

そんな時、アイルとアリーを拾って助けてくれたのがフォクス村長だった。

その後、フォクスはまだ幼かったアイルとアリーを自分の孫のように愛し、これまで育ててくれた。そしてアイルとアリーもまた本当の家族のようにフォクス村長を愛しているのだ。


フォクスが氷の入ったガラスコップを2つ用意し水が注がれる。トクトクトク、と二人の静かな雰囲気に水が注がれる音だけが響き、アイルは場の空気に少し居心地の悪さを感じる。


沈黙が続いている空気を破ったのは、ぐいっ。と一杯飲んだフォクスだった。


「最近の調子はどうじゃ?」


「どうって、森の魔物の話か?倒しまくってはいるが、やっぱりまだまだ奥に潜んでやがるな。でも最近じゃ奴らの特徴もわかって来たから余裕だぜ」


アイルが森に潜って魔物を狩っているのは修行という目的でもあるのだが、フォクスから頼まれて村に近づけないようにしているという目的もあるのだ。

この村の近くに住む魔物は『ワーウルフ』と言って、体長は大人の男より少し大きく、黒と茶色のまだら模様をしている。獰猛で口からはみ出る牙を涎で濡らし、低い音で喉を鳴らして獲物を定め、赤く威圧のある目で睨まれると襲いかかってくる魔物だ。

危険な頼み事ではあるが、村のみんなが魔物の危険から遠ざかるならアイルはそんなの構わない。それほどの正義感が今のアイルにはある。

大切な人を守りたい。もう誰も失いたくない。その思いは猛る炎のように熱く、ダイヤモンドのように堅い意志であり、アイルを突き動かす理由だ。


「ワーウルフは群で活動をする生き物じゃ。あまり1人で森には入って欲しくないんじゃがの。断ってくれても良かったのじゃぞ?」


「何をいまさら!それに俺はやりたくてやってるんだ。爺ちゃんが気にすることねぇよ。」


「そうか。.....」


再び沈黙が起こる。窓から差す銀色の月光がコップを照らし、コップの中の氷は徐々に溶けてカランと心地いい音響かせる。


「それとアイル、最近魔物の動きがおかしくはないか?」


「!?」


空気が変わった。いつもふざけて冗談や軽口ばかりを言うフォクス。その彼の目を覆った長すぎる眉越しでも真剣な目をしているのがわかる緊迫感だ。

張り詰める空気が場を支配して、アイル鼓動が早まる。


「あぁ。この頃なんだかワーウルフの様子がおかしいんだ。俺と目があっても襲ってこない奴らが頻繁に出てきた。」


「やっぱりか...」


「それがどうしたんだよ?」


「森の調査を村の男達で行ったところ、妙な魔力を感じたという報告があっての。ワーウルフの様子も少しおかしかった。もしかしたら、調教師がいるかもしれん」


「!?。....それは本当か?」


「あぁ。ここで嘘をついてどうするというのじゃ」


調教師。ビーストテイマーとも呼ばれるそれは魔力を操作し『ビーストテイム』という魔物を操る魔術師だ。使える魔術師はあまり多くなくて、希少な魔法なのだ。

そして、ビーストテイマーの多くは犯罪事にいつも関わってくる厄介事の能力者なのである。


「そうか、わかった。じゃあ明日からまた森に潜って魔物を倒しつつ、その調教師について少し調べてくるよ」


「うむ、助かる。が、無茶はするなよ。お前さんが居なくなってはアリーが悲しむ」


「そうだな。安全対策は万端で行く。調教師を見つけても戦わずに一旦帰ってくるよ」


「うむ、そうしてくれ。」


「それじゃあ俺は帰るぜ。アリーの作った晩飯が楽しみだからな!帰りが遅いとまた怒られちまう」


「じゃの。気をつけて帰れよ」


「あぁ、じゃまたな!爺ちゃん」


そう言ってアイルはフォクスの家を後にし、アリーの待つ家に戻るために、少し早足で来た道を辿る。



月が妖しく銀に煌めく夜空には点々と星が浮かんでいた。



ーー翌日、「いってきます!」とアイルは早朝に家を出て再び森へ潜る。


そしてアイルは今日、出会うーー。




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どーも!おはようこんにちわこんばんわ!

ベルです!男子高校生です!

この度は『光剣使いの剣聖譚』4話を読んでいただきありがとうございます!

部活動などで忙しく、あまり小説を書く時間がなかったので更新が遅くなりました。すみません!

面白く書けていたでしょう?

もしそうであれば、私はとても嬉しいです!

これからも面白く可愛くカッコよく!心震える青年剣士アイルの冒険を書いていきますので、楽しみにしていてください!

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