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 目が覚めたとき、カーテンから漏れる光が既に朝だと教えてくれていた。

 私はむくりと起き上がると、肩をぶんぶんと振り回す。久しぶりに、体が軽い。

 最近は夜中にずっと死体を探していたせいか、寝ても体の疲れが残っていて、一日中ぼーっとしていることが増えていた。

 葵はどうも起きてこなかったのか、私の睡眠が妨げられることはなかった。そのことに私はほっとしながら、隣で眠っていたはずの潤くんの姿を探す。


「潤くん?」


 返事はない。

 代わりに、滑り込んできた音に耳を傾ける。


【今日未明、H県N市で火事が発生し──……】


 抑揚を抑えた声はニュースキャスターのもの。潤くんは朝からテレビの前で三角座りをして、真剣にテレビを見ていたのだ。あの子は、私が帰ってくるたびにテレビを見ているけれど、暇つぶしで見ているようには思えなかった。

 バラエティー番組は見ていない。ひと昔前のドラマの再放送にも興味がなさそうだ。ワイドショーはときおり見ているけれど、芸能人の浮気やら交際発覚やらのニュースはすぐにチャンネルを変えてしまう。

 そうだ。この子は何故かニュース番組ばかり見ている。目ぼしいニュースが流れないか毎日のように確認していたんだ。

 うちは新聞は取っていない。ほとんどここの家賃以外の生活費は自力で賄っているような子ばかりだから、読むか読まないかわからないものにお金を使いたくないからだ。

 でも、潤くんが読むんだったらいいのかな。でも新聞屋さんにわざわざ声をかけたら、毎年契約の催促に来られてしまっても迷惑だ。……そうだ、コンビニで買ってあげよう。いくら生活費が今月はカツカツだからとはいっても、朝の新聞くらいだったら買えるだろう。

 私はその思い付きを自分の中で繰り返した。うん、そこまで悪くないんじゃないかな。私はそう思いながら起き上がった。

 私が起き上がったことに、三角座りしていた潤くんの背中はビクンと浮き上がる。そして、恐る恐るこちらを振り返った……。一緒に添い寝をした仲だというのに、本当に借りてきた猫の状態はなかなか抜けてはくれない。


「おはよう」


 毎日そう挨拶しても、強張った顔のまま、いつも視線を逸らしてしまってまともに挨拶を返されたことはない。

 潤くんは今日も見とれるほどの綺麗な顔を曇らせたまま、ふいっとテレビのほうに視線を戻してしまった。

 朝からの凄惨なニュースは、既に今日の星座占いのコーナーへと切り替わっていた。

 さて、私もそろそろ朝ご飯を食べて、家事をしてしまわないと。今日も窓から見える天気は雨。洗濯は干しても乾かないけれど、掃除くらいの家事はできるだろう。

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