陸上部員を探せ!!#5

「おっはよおおお」

 由香が無駄に元気な声で教室に入ってくる。

「よし、全員揃ったね。とりま大越先生のとこ行こう」

「この時間なら学校に来ているはずだから、職員室に行けばいいな」

 いやなんで大輝はそんなこと知っているんだ?そう思いつつ階段を降りて職員室に代表して僕だけが入る。

「失礼します。1年新黒田健人です。大越先生いらっしゃいますか?」

 そう言って室内を見渡す。でもあのふさふさ頭が見当たらない。

「あ、新黒田くんといったかな?大越先生は今日休みだそうだよ」

 マジか……。いやでも学年主任くらいいるだろう。

「じゃあ1年の主任の枝木先生は……」

「あ、もう上がっていかれてるはずだよ」

 ありゃ……。

「失礼しました」

 僕は職員室を出て3人の元へ向かう。

「おっ、どうだった?」

 雄治が聞いてくるが僕は首を振る。

「大越先生は休みだって」

『マジかー!!』

「だから枝木先生に言ってみようかと」

「あ、私上で見かけたよ〜」

「うん、だから上に戻ろう」

 僕らはさっき降りた階段を上がる。

 すると階段の途中ですれ違った。眼鏡を外していた僕は気づかなかったが、由香が「あっ」と言って引き止めてくれた。僕は眼鏡をかけて枝木先生の方を向く。

「あの、枝木先生今いいですか?」

「どうした、新黒田くん」

 枝木先生は年齢不詳の女の先生。いつもは温厚で一部の男子生徒から親しみを込めて「えだっきー」と呼ばれているが、うっかり年齢を聞いたりすると般若になるらしい。見たことはないが。

「二つお願いがあって」

「へぇ?」

「僕たち今、陸上部を作ろうと部員集めをしているんです」

「あぁ、それは知ってるわ。今や職員室中の噂よ」

 おぉ、それはありがたい。アレも簡単にできそうだ。

「で、今朝の学年朝会でちょっと時間をとらせてもらえませんか?」

 そう言うと枝木先生はう〜んと唸って目を瞑った。

「……いいわよ。早めに話を終わるわね」

「ありがとうございます。あ、あと!」

 立ち去ろうとした枝木先生を慌てて呼び止める。

「あぁ、お願いが二つあるって言ってたわね」

「このポスターを校内に貼ってもいいですかね?」

 そう言ってポスターを先生に見せると枝木先生は口に手を当て驚いた表情をした。

「これ、新黒田くんが書いたの?」

 いや、それはさすがにないです。

「由香が書いてくれました」

「あ、あら、そりゃあそうよね。でなんだったっけ?」

 この先生物忘れがひどいな……。いや天然すぎるだけか。

「いやこのポスターを色んなところに貼らせてもらおうと思いまして」

「いいわよ。私実は中学・高校と陸上やってたのよ。頑張ってちょうだいね」

 おっとぉ!?これは……。

「すみません、最後に一つだけ!!」

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