鴨檻先生暴行事件での暗躍#08
「そりゃあ、お前らが気にくわないからだよ」
大江が口を開く。
「ようやく本音を聞けたな……」
大輝が眼鏡を上げながら静かに言う。
「特に、健人、雄治、大輝!!いつも優等生ぶってるし、実際優等生だし、頭いいし、人に好かれようと思ってそういう風にしてるんだろうけど、実際人に好かれてるし、だから余計俺らは関わりづらいし」
しゃあしゃあとわけの分からないことを言う大江。
「えっと……私は?」
最初に名前の出てこなかった由香が不思議そうな表情をする。
「はっきり言ってな……。原因はお前だ」
滝梨が言う。
「へ?」由香。
「え?」雄治。
「どゆこと?」僕。
「……」黙り込んだまままぶたをピクピク動かす大輝。
全員疑問の表情を浮かべている。そして4人共通の質問をする。
『お前、って誰?』
大江と滝梨は怯む。そりゃあそうだろう。『犯人はお前だ』みたいなカッコつけた言い方をしてまさか『誰?』と返されるとは思うまい。
「だ、誰って……」
「そ、そりゃあ……」
大江と滝梨が壊れた人形のようにぎくしゃくした動きになる。
『ゆ……由香だよ!!端末由香!!』
顔を真っ赤にして叫ぶ二人に由香は「わけがさっぱり分からない、というのを顔で表せ」という問題ではこう書こう、というくらい分かりやすい表情。(例えが分かりにくいか……)
「えっと……私……?」
顔を真っ赤にしたままの二人に由香が聞き返す。いつまで経っても二人の顔の色が戻る気配はない。どれだけのストレスを由香から……?と思ったが、由香はそういうタイプではない。いやしかしもしかすると小学生の頃は由香は荒れてたり……?
「その……実はだな」
「俺たちは……お前を……」
一拍置いてさらに顔を真っ赤にして叫ぶ。
『由香のことが好きなんだ!!!!俺たちどっちか選んでくれ!!!!』
…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………。
長い沈黙が場を支配する。その沈黙を破ったのは由香だった。
「えっとさ……。二人とも私のことを好きなのは分かった」
その言葉に俯いていた大江と滝梨が顔を上げる。
「けど、二人のうちどちらか一人を選ぶのは物語の中だけよ?だって私には別に好きな人がいるわけだし。もししばらくして私が好きになるような好青年になってたら……選んであげるかもね」
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