第10話 少女の身体はお供えられる。

 今日は日曜日。

 普段は旅行したい私だったが、生憎、お聖人さんに呼ばれて、私はお腹を出しながら、前にお供え物を置かれ、墓参りの参拝客で溢れかえった。


 ―――何か、私のお腹を露出する意味が良く解らないし、何故、顔を隠してお腹を出すのか良くわかないよ。


 私のお腹をどうして露出する必要があるのか良く解らない私だが、そんな状況下でも、私の体内では直紀さんが、ロシア料理店で凄く繁盛している。

 でも、逆に予約制だからこそこの様なお店が繁盛できたのだと私は思っていた。


「絵里奈ちゃん。私の夫はアンタのお腹の中にいる。でも、そのお陰でアンタの腸内に私の夫の魂がいるんだよ。」


 ―――そうなんだ。このおばあさんは夫を亡くしても私のお腹の中にいるから私の臓器だけに違う魂が入るんだね。


 自分の身体に自分以外の魂が宿ると感じた私は、その様な体内で過ごすと一体、どうなるのか非常に気になりながらも私自身が何だか、生き仏みたいな感じで凄くおかしいと感じた。


「絵里奈ちゃん。私の奥さんはアンタのお腹を見ると魂が宿っているんだと思うよ。」


 ―――そうか。墓守女子じゃない女性は確かに死ぬ。けど、墓守女子じゃない女性は私達、墓守女子より女の子を出産しやすい。逆に墓守女子は生態系を破壊させない影響で、圧倒的に男の子が出産しやすい。


 自分が墓守女子だからわかるが、墓守女子から生まれる女の子は16歳を過ぎると外見上の老いが止まり、20歳になると完全に老いが止まる。

 更に生まれる女の子は皆、墓守女子となって生まれるので老いと死を奪われる。

 私は生まれつきじゃない墓守女子だが、容姿や体形などが良いから選ばれた故に墓守女子になってしまった。

 だから私は何年たってもずっとこの外見は残るんだな。

 ある意味、辛いけど、自殺や殺人に対して恐怖を感じる。

 墓守女子の遺伝子を持つと持っていない人より殺人衝動が出なくなる。

 恐らく、彼女達を永遠に残したいのは遺族を思う気持ちが強くなるからだと私は感じた。

 つまり、弟の柚弦がおっさんになっても私は女子高生の姿や女子大生の内臓のまま、生きていく事になる。

 ある意味、それで苦しんで自殺しようと試みる墓守女子も遺伝子の影響で死が奪われるので自殺する事すら出来ない。

 自身の魂は肉体から出ても、別の魂が私達の肉体に宿る。

 ある意味、墓守女子はこんなことを繰り返して生きてゆくんだなと私は感じた。

*******

「よし、今日は参拝が終わったから笊饂飩ざるうどんを用意したぞ。」


「ありがとう。お聖人しょうにんさん。」


 私は墓参りの参拝の影響で昼飯が食べなかった為、凄くお腹が空いていた事をお聖人さんは知っていただろう。

 だからお聖人さん笊饂飩を用意してくれたと感じた。


「絵里奈ちゃん。このざるうどんは茨城の館饂飩やかた うどんを水に戻して作った饂飩だ。よく噛んで食べてくれな。」


「ありがとう。お聖人さん。」


 私は腹が空いていたので館饂飩の味が凄く美味しく、触感の良さも相まったので、1人で3人前も平らげた。


「やっぱり、館饂飩は凄くおいしいね。」


 私は、この饂飩の腰と美味しさに癖になった反動で天麩羅を食べる前にお腹がいっぱいになった。

 

 「どうだ。絵里奈。」


 「うん、私のお腹の中で直紀さんが料理を作る程、この饂飩は美味しいから良かったよ。」


 「そうか。直紀さんって、アンタの体内レストランの店主だよな。」


 「うん、この饂飩は私のお腹の中で全てを消化する事は無理だけど、一部は発酵して美味しい饂飩が出来ると思うと私はなんだか複雑な気分かな。」


 「成程。でも、それはそれで君は良いと思うよ。」


 「ありがとう。お聖人さん。私はなんだか泣けてきちゃうよ。」


 凄く安心した私はその反動で凄く涙が出ちゃった。


 しかし、お腹の中でお墓を作られるとなると私のお腹は普通の人間と完全に構造が違うんだなと思い、逆に自分の身体に興味を持ってしまった。


私の身体がどんな感じなのだろうと思い、私はクスッと笑ってこの身体を大事にしようと思った。

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