第4話 少女はお寿司を味わう。

 私、豊中絵里奈とよなか えりなは川崎市麻生区あさおくにある私立松陰学園高等部に通っている。

 そして現在、彩海あやみと共に海老名駅~栗平駅まで小田急線に乗って、移動している最中さなかだ。

 栗平駅から海老名駅まで新百合ヶ丘駅経由で25分位の距離だが、家の最寄り駅となる海老名まで快速急行で移動している最中なんだ。

 そして、その車両は言うまでもなく転換クロスシート仕様となっている。

 小田急電鉄は複々線化完成し、代々木上原駅~登戸駅まで複々線となり、混雑緩和と所要時間短縮に繋がり、利用者減少対策とサービス向上の為、転換クロスシート車を導入する事になった。

 勿論、ロマンスカーは回転式クロスシート車だけど…。

 そして、新松田駅~小田原駅の途中駅が10両化が完成した暁にはになり、快速急行がする事となる。

 それによって4両編成は小田原駅~箱根湯本駅の区間運用に短縮される予定なんだそう。

 私は彩海と共に4ドアの転クロ車で帰る事がある。

 その時はロングシート車とは違う雰囲気で安心できる。

 小田急もロマンスカーがあるからか転クロ車やL/C車両は無料で運行するものだと理解している。

 彩海もこの転クロに座ると態度が変わり…、


「彩海。快速急行の4ドア転クロ車はどう?」


「エリぽん。私はこの転クロ車のお陰でエリぽんと私だけの空間で良く眠れるよ。」


「彩海。実は、この車両を凄く気に入っているでしょ。」


「うん、この車両なら人の目を気にせずにエリぽんの身体を弄りたい放題出来るからね。」


 彩海…。

 アンタが転クロ車を好む理由はなんとなくわかってきたよ。

 確かにロングシートだと乗り降りは自由だが、中長距離の移動だと人の目を気にするのが疲れるからね。

 けど、転換クロス車ならボックスと違って外の景色がみられるし、何よりも人の目を気にせずに移動できる。

 人の目を気にすると疲れるのは分かる。

 だから転クロは人目を気にせず2人だけ、或いは4人だけの空間が出来、それが誰にも邪魔されずに居られるから凄く評価される理由が分かった。

 転クロなら人目を気にせず移動できる。

 だから彩海と私だけの世界がこの転クロで出来た訳だね。


「ねぇ、エリぽん。私のお腹の中でお寿司食べに行かない。それとも私のお腹の中にいる『РОССЙЯ《ロシヤ》鎌倉寿司』の店主である近江歩奈おうみ ふなちゃんが作るお寿司でも食べない。」


 彩海が自分の体内和食レストラン『ロシヤ鎌倉寿司』を提供する店主、近江歩奈おうみ ふなちゃんが作る寿司を食べても良いと誘ってくれた。


「ありがとう、彩海。」


 私はくすっと笑いながら彼女のお腹の中で働いている近江歩奈ちゃんが提供する寿司が気になりながら私は海老名駅に到着してから相鉄線かしわ台駅まで向かい、そこから彼女の家に向かった。


「ただいま。お母さん。みやこ。」


「お姉ちゃん。お帰り。」


「おかえり。彩海。で、そこにいるのはお友達?」


「そうだよ。私のお友達のエリぽんだよ。」


「あなたが彩海のお母さんですね。どうも…。」


 彩海のお母さんは何て美人なんだろう?

 そして、彼女の年齢は幾つだろうか?

 恐らく40過ぎているのに見かけは20前半みたいな…。

 私は彩海の家に上がった後、彩海の部屋に向かった。


「ふぅ~。終わった~。」


「貴方が、彩海の体内レストランの店主ですか?」


「あぁ、私が彩海の体内レストラン『ロシア鎌倉寿司』を提供する近江歩奈《おうみ

 ふな》だ。絵里奈はそんなに私の創作寿司を食べたかったのか?」


「うん。」


「分かった。サーモンのマリネ寿司とトリュフ寿司を特別にタダで提供しましょう。」


「ありがとうございます。」


 私は歩奈さんに創作寿司を食べられると嬉しかった。


「でも、女の人が寿司職人って珍しいのでは?」


「ふっ。昔は確かに体温の関係から男の人が多かったが、今は女性でも寿司職人になれるから私は彩海のお腹で創作寿司を運営している。創作寿司なら女性でも問題なく出来るからな…。」


「凄い。歩奈さんは創作寿司を凄く好むのはその為なんだね。」


「勿論だ。では、シャリと海苔巻き、そして特製の御酢で和えるぞ。」


 私は創作寿司があるから女性が寿司職人になれるものだと実感した。


 *********

「どうぞ。サーモンのマリネ寿司とトリュフ寿司だ。」


「ありがとう。歩奈さん。」


 こんなに綺麗なトリュフと御酢で和えた寿司は光沢がまし、互いの味のうま味を出す為に特製タレで、塗るところを見ると凄くおいしく感じてしまう。

 マリネ寿司の方もサーモンのマリネに赤玉ねぎを載せて凄く酸味が聞いた同士の味で口からよだれが出てきそうでおいしそうだ。

 私は歩奈さんの提供したトリュフ寿司を口にほおばった。


「シャリとトリュフが互いに蕩けて美味しい…。」


「どうだ。私が作った特製のトリュフ寿司とマリネ寿司だ。どちらもロシア料理と和食を併合した料理を私は作ってみたかった。それは、薄味でありながら、その中でうま味を引き出すのが京料理やロシア料理に似ているからな。」


「そうなんだ。薄味を上手く利用して味を出すのか~。凄いね~。」


「うん、歩奈さん。私もこのお寿司は酸味ととろける味がして凄く好きだよ~。」


「そうか。彩海も凄くおいしかったか。それはそれでよかった。」


 私と彩海は歩奈さんのサーモンのマリネ寿司とトリュフ寿司を頂きその味から美味しさを感じて凄く嬉しいと思った。


 こんな料理が彩海の体内で提供されたら私のお腹の中にいる直紀さんが作るロシア料理も食べてみたくなった。


*****

俺はロシア料理をお客様に提供して凄く嬉しい。

金銭面で開業が難しかった俺も絵里奈さんの体内で開業した影響で俺は実力と資金の双方を高める事が出来た。

そして、ロシア料理は薄味を意識する事で本来の素材の味を生かすやり方を俺は知っているのでそれを実践している。


「貴方の料理は凄いですね。でも、直紀さん。絵里奈さんが今、歩奈さんが作っている美味しい寿司といい勝負が出来るね。」


「ありがとうございます。おばあさま。」


俺はおばあさんに美味しい料理を提供しただけでなく歩奈さんのお寿司に負けないようにしなきゃいけないと感じながら、彼女えりなの美味しいお寿司を頬張る様子を想像した。

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