第5話 来訪
その姿を見た僕は勢いよく扉を開けた。
「ど、どうしたんですか?」
どうやらたーちゃんは風呂上りだったらしく、しっとりと濡れている髪の毛が何故か少し色っぽい。
「先生に連れて行かれた後、ショウさんの元気がないとあーくんから聞かされたので。あっ、廊下で立ち話もなんですし、部屋に入っても大丈夫ですか?」
「えぇ! どうぞどうぞ! 散かってますけど」
「わーい。お邪魔します」
たーちゃんは嬉しそうに僕の部屋へと入っていく。
僕は後ろからガチャンと鍵を掛けた。
「凄いですね。男子高校生の部屋って感じがします」
たーちゃんは楽しそうに僕の部屋を物色する。
「でも学校の寮に持ち込めるものは限られているんで。質素な感じにはなっちゃうんですよ」
そう僕は苦笑をする。
「質素な感じだなんてトンでもないですよ。ショウさんってパソコンとか好きなんですね。デスクトップとか凄く大きくて豪華そうですし、私の知らない機器まで付いていますし」
「中学校のときにコンピューター研に入っていたので、その延長線でパソコンいじりが好きになったですよ」
僕はそう照れ笑いをした。
「凄いです。今度私にも教えてくださいね! それにしても、男の子の部屋に来るとなんだか、ドキドキしちゃいますね。同年代の子ってあーくんしか居なかったので、尚更に新鮮です」
そう言って、たーちゃんは僕のベッドへと腰掛け、少し頬を赤らめた。
ソレを見た僕は、
ドサッ。
たーちゃんをベッドに押し倒した。たーちゃんのポニーテールはふぁさっと広がり、まるで後光が差しているようだ。
「え?」
フーフーと息を荒くする僕にたーちゃんは戸惑いの色を見せた。
「ショウさん?」
「……君たちには関わるなと先生から言われました。この学校を護る為だと」
そう言いながら僕はたーちゃんの仄かに紅潮した頬に触れた。たーちゃんはビクッと驚く仕草を見せた。
「でも、そんなこと僕には出来ない。僕は……」
頬を触っていた手を無防備に空いているたーちゃんの右手に向けてゆっくりと移動し、指と指を絡ませる。
「僕は、君が好きだから」
「ショウさん……」
僕の告白にたーちゃんは少しばかり目を潤ませているように見えた。
僕はそのまま、たーちゃんの唇に向けてキスを落そうと顔を近づける。
大丈夫。今度は失敗させない。
僕が静かな勝利を確信した、そのときだった。
「おやおや? いきなりラブロマンスが始まるとは思わなかったよ」
僕の部屋の扉の前に立っていたのは、アスだった。
どうして? 部屋の鍵は掛けていたのに。
「ご丁寧に鍵を掛けてくれていたけど、俺にとってはそんな鍵、ヘアピンで十分だよ」
アスは折れ曲がったヘアピンを僕に見せつけた。
「それにしても、ショウの元気が無いから俺プロデュースの元気になってもらおう作戦を折角実施しようと思ったのに、精神的な元気じゃなくてソッチが元気になってしまうとはねぇ。予想外だったよ」
アスはニヤニヤ笑いながら僕をみる。
「何の用事ですか? さっきの話を聞いていたなら、僕はもう君たちに関われない。先生から忠告されたからね」
「あぁ、全て知っているさ。だから、俺たちからの話はコレで最後。今朝亡くなっていた女子生徒はどうやら粛清部隊が関連しているらしい」
アスはそう言って僕の顔を指差した。
「そして、その粛清部隊っていうのは、お前だ。日立ショウ」
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