第4話 忠告されて
僕はその言葉にゴクリと息を呑んだ。
「……その根拠は?」
「それはこれから考えるのさ」
ふふんと笑いながらアスは食堂で買ったサンドイッチを食べる。
「なんだ、まだ決定的な根拠は分からないのか」
はぁ……と僕は息をつく。
「でも、事故じゃないという根拠はある」
「そ、それって……」
僕が身を乗り出して、アスに訊ねようとしたときだった。
「おい、日立。話がある」
いきなり僕の前に担任教師がやって来たのだ。
「え、先生。いきなりなんですか?」
「いいから、生徒指導室まで来い」
僕の首根っこを掴んで、ぐいぐいと強引にアス達から引き剥がしていく。
「これ以上、詮索してもらわないで欲しい。君たちは所詮外野の人間なんだ。コチラのことはコチラで処理させてもらう」
去り際に担任はアス達にそう言った。
それは僕にとっては最終警告に聞こえた。
「そう言ってもねぇ? 俺らのところに依頼が来た以上、俺らの好きにさせてもらうさ」
そんな忠告も聞かずに、アスはニヤリと笑った。
「フン。どうなっても知らないからな」
教師はそう吐き捨てて、僕を掴んだまま食堂から消えていった。
生徒指導室。中に入った僕はポイっと投げ捨てられるように壁の端へと追いやられる。
「アイツらとはどういう繋がりだ」
凄い眼力で担任が僕のことを睨み付ける。
「どういうって……、昨日偶然僕が襲われていたところを助けてくれたっていうだけです」
「本当にそれだけなんだな。何もペラペラと話してはないんだな」
僕は無言でウンウンと頷いた。
「お前が内通者というわけではないということで一安心したが、アイツらはこの学校では危険分子だ。くれぐれも親密な交流は控えることだな」
「どうしてですか? どうして彼らをそんなに警戒するのですか?」
僕の質問に担任はそっと耳打ちをする。
「日立。お前はこの学校がこれほどまでに閉鎖なシステムだってことを疑問に思ったことはないか?」
才宮高校の入学の際、自分の持っていた通信機器は全て卒業まで没収される。代わりに高校の敷地内で、無料で使える小型端末を配布されるのだ。その端末で家族と連絡を取ることは出来る。
しかしインターネットに接続する時は、学校の認可の下りてないページを見ようとすると閲覧禁止になるのだ。
故に、SNSなども閲覧することも書き込むことも出来ない。
つまりこの学校は、外からの情報を見ることも出来なければ、中の様子を不特定多数に知らせることも出来ないのである。
「それはだな、“外”からこの学校を護るためにあるんだ」
「学校を護るため?」
「そう。もし、アイツらがこの後学校の内情を外に漏らせば、この学校の信用に関わるんだ。そして同時にお前の卒業後の進路にも影響する」
「僕の進路にも……」
「今後永遠とそんなレッテルを貼られたら困るだろ?」
担任はそうニヤリと笑った。
「……困ります」
「だから、このことは闇に葬るんだ。今回は何も無かった。いつも通りの日常だ。お前がいつもそう処理しているようにな?」
「……はい」
僕は俯き加減で担任に返事をした。
「わざわざこんなことをへ連れ出して悪かったな。くれぐれもアイツらには気をつけるんだぞ」
「はい。失礼しました」
そう言って僕は生徒指導室を出る。
「はぁ……なんで僕まで……」
とばっちりを受けてしまうんだろ……。そんな事を考えていたら重いため息が出た。
夜。寮へ戻って僕は宿題にも手をつけず、ベッドへと転がっていた。
今朝の女子生徒はやはり事故死ということになったと、終礼の連絡で担任から説明があった。
皆、事故かー怖いねーというような感じに離していた。
誰も先生の言っていた事を疑うような人間は居なかった。アス達二人を除いては。
終礼後アスに呼び止められたが、聞こえないフリをして寮へと帰った。
それからずっとベッドでゴロゴロしている。
「どうすればいいんだろうか……」
そんな事をぐるぐると考えていると、ふとコンコンと僕の部屋の扉をノックする音が聞こえた。
「こんな時間に誰だ?」
僕はベッドから降りて、ドアスコープから向こう側を覗くとそこには、
「こんばんは。ちょっといいでしょうか?」
可憐なたーちゃんが僕の扉の前へと立っていたのだった。
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