第2話 それは突然に
朝。ドタドタと騒々しい音で目が覚めた。
昨日はアレからアス達二人に絶対に先生に見つからない寮までのルートを教えてもらい、無事に自分の部屋まで戻ることが出来た。
どうして彼らがそんな道を知っていたのかは分からない。それに、彼らの素性だってまだ分からない。依頼とか言っていたけど、一体どういうモノなのだろうか?
頭を触ると昨日、あの少女が巻いてくれて包帯をまだしていた。
「アスっていう奴はいけ好かない奴だったけど、たーちゃんって娘は可愛かったなぁ」
彼女のことを思い出すと自然と口角が緩む。
「それにしてもドタドタと煩いなぁ……。何かあったんだろうか?」
僕はベッドから起き上がって、部屋着から制服に着替えてゆっくりと扉を開けると、
「あっちだって」
「人が倒れてるって?」
「踊り場から転落したらしい」
そんな事を言いながら生徒達が校舎の方へと掛けていく。
「校舎の方で何かあったのかなぁ?」
僕は急いで身支度を整えて、大群の後を付いていった。
校舎三階の階段に集まっている烏合の衆を縫うように避けて、ようやく先頭に出られた時、僕が見つけたのは、
階段で異様な格好で血を流して固まっている女子生徒の姿だった。
焦げ茶色のポニーテールが扇のように広がって、自らの血を吸い込むようにまとわりついていた。
「こ、これは……」
「見て分からないか? 死体だよ」
ぬっと僕の横からアスの声がした。
「うわぁ! びっくりした」
「ショウおはよ。よく眠れたかい?」
「いきなり僕の耳元で話しかけないでよ。びっくりするじゃないか」
「あー悪い悪い」
アスは全く反省する様子も無く、軽く返事をして流す。
「あーくん、ちゃんと反省しないとダメだよ。あ、ショウさんおはようございます。体調が良さそうで良かったです」
凛とした声で、彼女は微笑んだ。
やっぱ、たーちゃんは天使か何かかもしれない。アスとは大違いだ。
「あ、あの、太子さん?」
「はい? なんでしょう?」
僕のいきなりの言葉に軽く首を傾げる。
「たーちゃんって呼んでよろしいでしょうか?」
「はい。いいですよ」
にっこりと笑う彼女に僕はもうノックアウト寸前だった。
「ありがとうございます!!」
「おいおい、そんな事を今訊ねる時じゃないんじゃね? TPOを考えなよTPOを」
アスはそう悪態つく。
その時、背後から怒鳴り声が聞こえた。
「ごらぁ! もうすぐ始業のチャイムが鳴るぞ! さっさと教室に戻らんか!」
騒ぎを聞きつけて教師がやって来て、生徒達に教室に戻るように促す。
ちなみに、才宮高校では教師の忠告に逆らった場合は即刻ペナルティが下されてしまう。
軽いものだと反省文、重いものだと退学処分とまぁ階級は色々だ。
ペナルティを食らいたくない生徒達は即座に自分の教室へと散らばる。僕もそそくさと教室へと向かうついでにチラリと見ると、アスとたーちゃんの二人は突っ立ったまま動かない様子だった。
これから二人はどうなってしまうのか気になって仕方なかったけど、遅刻でもしてペナルティを科せられるのも嫌だったので、大人しく教室へと向かった。
始業のチャイムが鳴るギリギリ前に教室へ入ることに成功した僕は自分の席へと着いた。
それとほぼ同時に担任が入ってきた。開口一番こう言った。
「突然だが、このクラスに短期在校生が入ることになった」
その言葉に周囲がざわつき始める。
「静かに。おい、入って来い」
担任のぶっきらぼうな催促で室に入ってきたのは、
「どうも、宮原明日香と申します。宜しくお願いします」
なんと、アスの方だった。
「宮原は諸事情でこの才宮高校へ1週間の短期在学という形で入った。まぁ、短い間だが、仲良くするように」
「宜しくお願いします」
アスは僕を見てニヤリと笑って、深々とお辞儀をした。
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