第65話 役目を終えて
国中の兵や
「スィスモス、調子はどうかな?」
『うん、すっごくいいよ。全身がスッキリした感じ』
「それじゃ、もう……そろそろお別れかな」
『そうだね。随分話したから疲れちゃった。そろそろ寝ようかな』
短かったような長かったような、巨竜と話すという妙な経験をしたものの、スィスモスは再び眠りにつくと言う。流石に三日をぶっ通しで友達のように話していると、大きさも過ごす時間も違う相手だとしても、嫌でも親近感が湧くものだ。少し寂しいような気持ちで、スィスモスを見送っていた。
「そっか、少し寂しいな」
『ボクも。あ、そうだ――これをあげるよ。別に寝てなきゃいけない訳じゃないけど、一度寝ると当分――多分、タケルが生きてる内は起きないと思うから、ボク』
思い出したようなスィスモスの声と共に、僕の目の前――宙空に、
「これは……?」
『
「分かった、ありがとう……この形は?」
『ボクの顔だよ! 上手いもんでしょう!』
「そ、そうだね……味があるよ」
満足そうな表情――厳つい岩山のような顔の中の二つの目、その雰囲気で表情が読み取れるようになっていたのだけど、そんな顔をスィスモスが向けてきた気がする。巨竜なのに、中々ニクい友達
『それじゃあ』
「うん」
『スライム君もまた会おうね。じゃあ、おやすみ――――』
地面に沈んでいくスィスモスの頭。まるで伝説の魔王が封印されるような物々しい光景だけど、貰ったチャーム――小さな飾りを握りしめ、少々の感傷を持ちながら見送った。
「眠りについたのね……」
「メイリン……うん、そうみたい」
「ちょっとだけ寂しいわね。少ししか話してないけど、いい人――竜だったみたいだし」
「……うん」
僕とスィスモスの別れの挨拶を見守っていたのか、メイリンが声をかけてきた。僕が感じていたことを代弁してくれるようなメイリンの言葉は、同じように思っていたんだと感じられて嬉しかった。
スィスモスとの別れを寂しく思うのもあるけど、再び眠りにつく古竜――それが僕がこの世界での
これから僕はどうしたらいいんだろう、そんな想いで一杯になる。
「――タケル、ねえタケル!」
「うわっ、メイリン。何だよ」
「ぼーっとしちゃってどうしたのよ。
「う、うん……分かった」
僕が考えていることを察したのか、メイリンがばんと背中を叩いてくる。不器用だけど、気を使ってくれてるんだろう。
「そんなことより、明日の晩にパーティが開かれるそうよ」
「パーティ? 何の?」
「城では『古竜が封印された』って大騒ぎよ。呑気な連中がね。陛下も上機嫌だから、きっとそこでタケルは
「そうなんだ、全然知らなかった」
「ダメよ、そんなことじゃ。きっとこれからも忙しくなるわよ!」
そう言ってメイリンは、お城の方に先に戻るように歩きだした。
今、一体どんな顔をしているんだろう。そんなことを思うと自然と笑みが漏れ出して、メイリンの背中を追った。
「ねえ、メイリン」
「何よ」
「……ありがとね」
さっさと歩くメイリンにかけたお礼の言葉には、返事はなかった。その背中から感じる雰囲気に、メイリンが優しく笑っているような気がした。
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