第32話 索敵
「タケル、気をつけて。そこ、
「う、うん……多分、分かる」
森に潜む魔獣を探し、僕たちは奥へと進んでいた。
はじめは植物の魔獣がどういうものかを僕に見せるようにメイリンが先導してくれていたのだが、三体の魔獣を倒した後、いよいよ前に出て戦えと言われてしまった。
木々が
進む先に大きな木が立っており、その根っこの部分に少し色が異なるふくらみがある。恐らく、
メイリンが数度倒した魔獣の姿を見て、僕にもなんとなく普通の植物と魔獣の違いが分かるようになっていた。一見普通の植物だったりその一部に見えるけど、どこか違和感がある。魔獣がいるかを探るのは、その違和感の有無を見分ける、ということに似ていた。
僕の懐の中で黙っているスライも、メイリンの指示で魔獣の存在を僕に知らせることを禁じられていた。森で戦うのに、敵の見分けもつかないようだと危険なので、僕がそれを分かるようになるまでは待機、ということだ。
「一気に突っ込んで
「しょ、触手ですか……」
メイリンが魔獣を倒しにいけと僕に催促するように言う。
植物の魔獣は見た目も様々で、メイリンがこれまでに倒した奴等は見た目がかなり
意を決して、魔物に向かって突撃するべく、剣を構えた。
「危なかったらサポートはするから、早くいって」
「分かったよ……ふう――――っうおおおおおぉぉお!」
「だから何で叫ぶのよ……」
駆け出した僕の後ろからメイリンの嘆息気味の声が聞こえるが、止められたわけではないので構わず走っていく。剣を構えた僕が距離を詰めると、根っこの部分の膨らみが
ぶった切ってやろうと敵に向かって走る僕に、何本かの
僕を絡めとろうして伸びた触手を剣で斬り払い、足を止めずに
「ああああああっ!!」
気合の叫びと共に、斜めに振り下ろされた僕の剣が敵を断ち、ギュウゥゥという声かも分からない断末魔を上げた魔物が霧散した。
「はあ……はあ……やった、よね?」
「おお、タケル。ちゃんと戦えるじゃん」
僕が敵を一撃で葬ったのを見て、黙っていたスライが褒めてくれる。
「ね? 遅いでしょ? 大体の魔獣はこれくらいの強さだろうから、強化の魔術を使っていれば敵じゃないわ」
「そうだね、思ったよりは……脆いね」
ゆっくりと歩いて僕に追いついたメイリンも声をかけてくる。
前評判の通り、確かに強さとしては散々戦ったディグドッグともそんなに変わらないみたいだ。
「さあ、バンバン倒していくわよ」
「そう焦らせないでよ……でも、ディグドッグとも大して強さは変わらないのに、なんであっちの依頼は人気がないの?」
村に来たときも他の
「まあ、単純に報酬の違いよ」
「こっちの方が報酬がいいの? 強さも変わらないのに?」
「村の近くに魔獣が出ると、村の人たちに危険が及ぶ可能性があるからよ。森の中にも入れなくなるし。だから、
「ふうん。まあ必要とされる仕事だから、ってことか」
メイリンが言うには、周辺の住民に直接的な被害が出るようなケースだと、報酬がそれなりに貰えるという話だった。お金も貰えないのに好き好んで魔獣と戦う人はいないということだろう。そう考えると、
「さあ無駄話は終わりよ、続けていくわよ」
「はーい。あ、そういえばメイリンが使ってたのって、魔術だよね。氷の魔術とか? 植物の敵なのになんで氷なの? なんか火の魔術とかの方が利きそうなイメージがあるけど」
「まあ、氷の魔術とも言えるわね。でもタケル、何言ってるのよ。こんな森の中で火なんか出したら大変なことになるじゃない」
「……まあ、確かに」
この世界に来て、初めて魔術らしい魔術を見たので実は内心でワクワクしていたのだが、メイリンに身も蓋もない返しをされる。植物の敵は火に弱いという僕の考えが浅はかだったか。
そんなやり取りの後、『次、次』と言うような仕草をメイリンが見せたので、更に森の奥へと進んでいく。
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