【赤い糸と黒い鎖 Ep.4】

 「はぁ…眠てぇ…。なんで俺が『あれ』の担当になったんだよ…。マジ今年は年災月殃ねんさいげつおうの日が続くもんだ───ウゴッ…!」

俺は牢番の隙をつき、後ろからコンクリートで頭を叩きつける。牢番は当たりどころが悪かったのか、そのまま倒れて動かなくなった。血は出てないので、おそらく気絶したのだろう。俺たちはその間に、俺らのいる牢屋の棟を抜け出した。


 少女は、能力者ばけものだった。牢番を襲撃する前に、少女の過去のことを少しだけ本人から聞いた。

 少女は、優しい母親と厳しい父親の間でうまれた。少女がどんなことをしても、母親はとても優しい笑顔で見ていてくれていたという。でも、その教育に気に入らなかった父親は、少女の知らないところで母親に暴力を振るっていた。DVだ。ある日それを偶然少女は見てしまったのだ。そして少女は母親をかばった。しかし、父親は少女を引きはがし、服を掴んで壁に投げつけたという。そして、怒り狂った父親は母親を机にあったハサミで刺し殺したという。その光景を目の当たりにした少女は叫んだ。そのあとの記憶はないらしい。が、気づいた時には家はぐちゃぐちゃになり、母親は血みどろになって倒れていた。しかし、父親はいなかった。赤色に染まった少女は、そのまま施設に連れて行かれた。しかし、その施設で少女はずっと父親が母親を殺す夢を見ていたらしい。そしてある日、悪夢から覚めた日に施設は消えていた。周りには数多くの肉の塊が飛び散っていたらしい。そして、いつの間にか軍服を着た人たちに囲まれて、拘束された。軍車の陰には、父親らしき人が見えたらしい。が、すぐ麻酔を打たれて、そして牢屋の中だったらしい。

「何も悪くない母親を殺されて、そしたら自分の知らない能力が出てきてしまってそれが暴走したと…」

コク…と少女は首を縦にふる。俺は、少女に何も言うことはできなかった。あの赤い目も能力の一部なんだろう。お腹が減って力を最大限出せなかっただけで、本当はもっと恐ろしい能力があるはずなんだ。俺はゾッとした。背筋が凍る勢いであった。…しかし、今はそんなことより、脱出が最優先。俺たちは有刺鉄線の張り巡らされたフェンスへとたどり着いた。しかし───

「そこまでだ」

後ろには、ここの警官がいた。もう追ってきていたのだ。少女に連れられて出てきてしまった俺は、心の中でやっぱり脱走などするんじゃなかったと思った。しかし、少女の目は、そんなことで諦めてはいない様子だった。

「麻酔銃を。過剰投下は突然変異を起こり得る。順番に撃て」

指揮官らしき男の人が周りの部下たちに命令を下し、1発、2発、少女の心臓の近くに撃ち込ませた。しかし、自分が予想していたよりも、少女はあっけなく倒れてしまった。


「───え」


俺は思わず唖然としてしまった。そして、俺も麻酔銃を撃たれ、そして意識を失った。

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