【僕が欲しかったもの】

 「今日は◯◯の大好きなところに連れてってあげるね」

僕は大急ぎで支度。小さなカバンに小銭入れを入れて、小さな靴を履いて玄関を出る。

冬の寒さに負けないよう、厚着をしていきました。

車で走って約5分。ついに僕が前から行きたかった───

「これが遊園地かぁ〜!」

隣町の小さな遊園地に来た。


 僕のママは料理が上手で、いつも温かいご飯を作れます。

僕のパパは仕事に毎日行って、僕たちを幸せにしてくれます。

でも最近、ママもパパもずっと怒ってばっかり。うるさい毎日でした。

でもそんなある日、突然ママが、明日はどこへ行きたい?と言ってくれました。

僕は急にどうしたんだろう、と思いながらもママはとても笑顔で、

好きなところに連れてってあげるよって言ってくれたので、

僕は迷わず遊園地!と声を上げました。


 そして今、僕はママとパパと三人で、おっきなおっきな観覧車に乗っています。

大きさはパパが100人肩車しても足りないくらいの大きさでした。

外はとても綺麗な水色と緑色が輝いていて、僕はなんだか幸せな気分になりました。


 夕方になって、風が肌寒くなった頃、ママはじゃあもう帰ろっかと言います。

僕も、うん。と返事すると、僕とママとパパは3人手をつないで歩きました。

ママは途中で、ちょっとトイレ行ってくるねと行ってトイレに行きました。

でも、なかなか帰ってきません。心配したパパが、待ってて、ママを探してくるからと行ってトイレへと探しに行きました。そして、パパとママは帰ってきませんでした。


 「大丈夫?」

園内で座り込んでいた僕に、ある人が突然声をかけてくれました。

「お母さんとお父さんは?」

それは、遊園地の従業員さんでした。

「はぐれちゃった」

僕は凍える体を擦りながら、従業員さんに言いました。

この時間はもう閉園する時間だから、早く帰らないと。と、従業員さんは言いました。

でも僕には帰る手段はないし、お金もない。そのことを従業員さんに話すと、

「そっかぁ…。…じゃあお姉ちゃんが送ってあげるよ!」

と言ってくれました。従業員のお姉さんは、ちょっと待っててと行って、ここを後にしました。

すると、5分も経たないうちに、お待たせ!とやってきてくれました。

お姉さんは、寒いからこれつけときとでっかいマフラーを首に巻いてくれました。

とても暖かかった。でも、僕が欲しいのはこれじゃないのです。


 僕が道を教えながら、お姉さんの車で僕は家に向かいます。

途中で体の冷えた僕に、あったかいスープを、

ドライブスルーのお弁当屋さんで買ってくれました。

スープには、人参、大根、白菜、コーン、鶏肉などいっぱい入っていました。

とても温かかった。でも、僕が欲しいのはこれじゃないのです。


 「じゃあな、坊ちゃん」

お姉さんは、僕を家の前で降ろし、食べかけのスープをもたせて降ろしてくれました。

これが、僕が欲しかったもの。早く、早く温まりたいな。

目の前にある大きな扉のドアノブを背伸びしてガチャッと回す。

「ただい───」

そこには、パパの靴、ママの靴、そしてゴミ袋に入れられた僕の靴の山がありました。

奥からは、懐かしい───いやそれよりももっと幸せそうな笑い声が聞こえてきました。

僕は気づきました。そして、扉をそっと閉めました。

胸が苦しくてたまりませんでした。

あったかかったスープは、もう冷たくなっていました。

そこに、1つ、2つと雫がこぼれました。

それでも、僕は信じていました。

また、大好きなパパとママが戻ってきてくれるって。

遊園地で見せてくれたあの笑顔がもう一度見れるって。

僕の欲しいものは、きっと戻ってくるって。

僕はそう信じて、扉の前で、深い眠りにつきました。






















 「ひどいな…」

味噌汁を飲みながら、夫がテレビを見て呟く。

「どうしたの?」

私は、エプロンを外しながら、食卓の席につく。

「いや、今さっきニュース見てたんだけどさ」

「うん」

「また子供が、路上に捨てられて亡くなったんだって───。」

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