【Indulge】

 続いてのニュースです。先日、行方不明になっていた仙波幸華せんばさちかさんの遺体が、地域のゴミ置場にバラバラとなって発見されました。

「少女誘拐殺人事件も、これで4人目になりますね」

「そうですね。一人での学校の登校や下校時、夜遅い時間帯の外出は気をつけるよう心がけてください。では、明日の天気予報です───」


 

 


 私は高校生になったら、いっぱい友達も作って、彼氏もできて、とても素敵な学校生活を送ると思っていた。でも現実は違った。中学校から本と友達だった私は、友達の作り方など知らず、作れずじまいで1年が経っていた。本の物語の中でお姫様となって、王子様と素敵なキャッスルライフを送る妄想を毎日するだけだった。成績のあまり良くない私は、家に帰ると毎日のように医者の父親と研究者の母親に説教をされる。努力しても超えられない壁はあるのに、両親は私たちの子供なんだからできないわけないじゃないとかいう理不尽を毎日耳にタコができるくらいに言ってくる。もううんざりである。学校にいても居心地は良くないし、家にいると頭が可笑おかしくなる。そんな時、私は1つの転機に出会った。「漫画喫茶」だ。家の帰り道に、新しくできたのだ。そこは夜の12時まで営業していて、高校生なら夜10時までは居座れる。しかも、学生証を出せば料金が7割引になるという、私たちの世代の財布には優しいところであった。私は最近、親に怒られるの覚悟で毎日通っていた。家での苦痛は、そこに通うことでだんだんと和らいでいった。個室で、自分の好きなジュースと机に置かれているお菓子を食べながら、大好きな小説を読む時間はたまらなかった。


 そんなある日、少女誘拐殺人事件のニュースを見た。しかもここの近くだった。朝ごはんを食べながらそのニュースを見ていた父親は私に、

「今日から夜遅くまで出かけるのやめなさい」

と言った。なんで?と歯向かうように言い返した。

「お前のことが心配だからだ。お前がいなくなったら私たちはとても悲しいんだ。わかってくれるだろう?」

嘘つき。わかってくれるだろう?何様なんだお前は。なぜお前らみたいな頭がいいだけの有能なクズに同情しなければいけないんだ。私は「あっそ」と生返事を返し、学校へと行った。


 今日も漫画喫茶に寄った。今日は私の好きな連載小説の新刊発売日だった。しかもそこの漫画喫茶は発売日の小説をちゃんと入荷していたのだ。

「あ、あと一冊だ。ラッキー」

新刊コーナーに残っていたあと1つをパッと取り、いつものように個室に入って本を開けた。やはり本は最高だ。友達などいなくても、本さえあれば素敵な人に出会える。幸せなひと時を過ごせる。現実世界にはロクな人間がいない。クラスの男子はふざけまくっていつも先生を困らせ、女子は知らないところで人の陰口を当たり前のようにつぶやき笑い、両親は言わずもがなである。もう本以外いらない。私はいつしか友達を作ることなど無意識に諦めていた。


 帰り道だった。父へ歯向かったのが裏目に出てしまった。薄暗い帰り道、私は最悪なことに黒のワゴン車に乗ってきた男の人達に囲まれてしまった。ニュースで出てきた誘拐犯の犯人グループであると思った。声が出なかった。ここは人通りが少なく、今の時間帯は誰も通らない。大きな声を出せば近所に迷惑がかかってしまう。また両親に怒られる。こんな時でも両親に怒られるのを考える私は、本当に私の意志で生きてきたことがあるのだろうか、と考えてしまうほどだった。

「さあお嬢ちゃん。ちょっとおじさんたちと一緒にどっか行こうぜ」

私は腕を掴まれた。ぐいぐいと掴まれた腕を離そうとしてもビクともしなかった。強制的に歩かされる。ワゴン車の扉が開く。───終わった。私はそう思った。その時、

「おい、お前たち!何をしているんだ!」

突然私の耳に、男の人の声が入ってくる。警察の人だった。

「動くな。おとなしく手を挙げろ。少女をこっちに渡せ。抵抗すれば発砲する」

私は助かった。男たちはワゴン車ですぐに逃げていった。私は緊張が解けたのか、涙が止まらなかった。

「大丈夫だったか?辛かったな。よしよし。もう安心だ」

警察の人は私を慰めてくれました。私は胸に飛び込み、大泣きしました。


 私が落ち着いてくると、警察の人はもう大丈夫か?と言ってくれました。私はコクッと頷きました。もう危ない時間帯だから、私が一緒に家まで送ろうと言ってくれました。はぁ…親にまた怒られるな…父親が言ってたことに反対してこんなことになっちゃったからなぁ…。もう漫画喫茶いけないのかな…。自分がやりたいことしたい。自分の意志で生きたい。もう親に束縛されたくない。そう思った私は、警察官の腕を引っ張り、足を止めました。そして、警察の人に頼みました。


今日だけでいいので、あなたの家に泊めてくれませんか。























「どうだった?彼女は」

俺は彼に言う。彼は答える。

「よかったよ。処女の味は最高だね。」

彼は裸の少女の写真を机に並べながら言う。

「どのくらいの収益になりますかね」

「まあ、処女の作品を好む人は結構いるからね。4作目は稼げるといいなぁ」

彼は動画のフィルムを眺めながら、薄気味悪く笑う。

「彼女はどうしますか」

私がそう聞くと、彼はいつものように『道具』の入ったレジ袋を私に投げつける。

「処理しといて。もう必要ないから」

「わかりました」

「さて、俺も『表』の仕事に行くとするか」

彼は警察の格好をし、扉を開けて外へ出た。

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