38*真っ赤で無駄にひらひらしている下着
朝食を食べ終えると、みんなで洗濯をした。
バスルームの隣りの洗濯部屋には、最新型の洗濯機が置かれていた。イシガミ博士がエリア69で単身赴任をしていた時に、送ってくれたものらしい。研究の事しか頭になさそうなイシガミ博士が常にキョウコの事を想っていたのだと思うと、プルメリアたちは胸が苦しくなった。
「まぁ、こんなに汚して」
キョウコは、プルメリア達が来ていたブレザーを見て、呆れ顔をして言った。真っ白だった生地は全体的に黒ずみ、所々ほつれている。
「しょうがないでしょ。ラオム倒して、瓦礫をどかして」
「でっけぇ飛行機とキモいナントカいうやつを倒してー」
「ひたすら暗い森を歩き、変態……ではなくて盗賊に捕らえられ」
「親子を助けてド田舎の家まで送って行ったんやからな。そりゃ真っ白な制服も汚れますわ」
「はいはい、分かったから洗濯機に入れちゃって」
「あー、お母さんあたし達の苦労分かってないでしょー!」
プルメリアは、洗剤のボトルを持ちながら不満そうに言った。
「このブレザー、そのまま一緒に洗濯機で洗っちゃって大丈夫なんですか?」
ウメは、真っ赤なブラジャーを洗濯機に放り込んで言った。
「大丈夫よ、ガンドールの制服は基本洗濯機に突っ込んでいいように出来てるから」
「流石、国務庁研究員の妻ですね」
「まぁね〜ってか何よこの派手な下着は!」
キョウコは真っ赤で無駄にひらひらしている下着を摘んでみせた。
「やーん、それダリアの♡ 可愛いでしょ?」
「ませガキが! 男を誘惑するには1兆年早いわ!」
そう言って、キョウコはダリアのこめかみを両手でグリグリした。
「いたいいたーい、またパワハラー!」
「教育的指導だこら!」
「そうですよ、ダリア。不純異性交友は許しません! 例え恋人に迫られても、結婚するまではいけませんよ!」
ウメは洗濯機に洗い物を突っ込みながら鼻息を荒くして言った。
「そのパンツ、おっさんに売ればいい金になるで」
アザミは、パンツを大量に仕入れそしておっさんに売りさばくビジネス構想を展開していた。頭の中で、そろばんを弾く音が響く。
「アザミ、公序良俗に反するような商売はしたらダメ」
「わかりやした」
キョウコに睨まれると、アザミも一言で黙った。
プルメリア達がエリア69に住んでいる時、キョウコと会ったのは数える程度だった。しかし今こうしていると、以前からずっと一緒にいたような安心感と幸福感に包まれた。それは、イシガミ博士やラスクにはない、母性というものが作用しているのかもしれない。
プルメリア達は、その今まで感じたことのない(しかし懐かしい感じのする)暖かさに、ただ身を委ねていた。
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