第21話 鼓舞(チアー)
近所の公園の方に歩いていくと、微妙な表情をしたタスクが待っていた。
「やっぱそうなるのね」
「朝電話で言っただろ……なりゆきだよ」
「タスクくん、ですよね? 私、ユーリです。今日はよろしくお願いします」
俺と並んで歩いていたユーリが、タスクにペコリと挨拶をする。
昨日、家で行われた話し合いにより、今日からユーリを連れて行くことになった。どうやら父さんと母さんは、俺がタスクと裏面に行っているのを『遊びに行っている』と思っているようだ。過度に心配されるのも嫌だが、我が親ながら何とも呑気なものだと思う。
昨日俺たちは、明らかに死にかけた。
「ユーリちゃん大丈夫なの? 昨日見た感じだと、大丈夫そうだけど」
「あ、はい。
「うん。てか、何でユーリちゃんレベル
「それは……」
「お、おいタスク。女の子にあれこれ聞くもんじゃないぞ!」
いきなりあれこれとユーリに聞くので、慌ててタスクを遮った。
タスクにはユーリが俺の家に住み始めたことを言っているが、遠縁の親戚だと
「まあいっか。でもすげえよな、ギイチ。レベル
「げ、ゲーム?」
「そ、そそそそそうなんだよ。こう見えてかなりゲーマーでさ!」
「なんでギイチが答えんだよ。俺とユーリちゃんが喋ってたんだぞ――はっ! 早くも彼氏ヅラってやつか!?」
「ちげえよ!」
俺が慌てて否定するのを、タスクがにやにやと笑いながら見ている。
ユーリが変なことを言い出すんじゃないかと、ひやひやしながら見ているとつい割って入ってしまう。タスクにはそれが、俺が嫉妬しているように見えたんだろう。
確かに、今更だがユーリは結構可愛いのでタスクにそう見られてもしょうがない。
しかし俺は思春期
「早速行くか! レベル
タスクは早くも裏面に行こうと言い出す。
俺とタスクが言っているレベル
裏面で見たユーリの情報では、強化値が合計で10に達していた。紛れもない、レベル
「あの、私……裏面っていうのをよく知らなくて……」
「え、どういうこと? もしかしてユーリちゃんの家って、超金持ち?」
「まあ……そんなとこだ……」
「何だよギイチ、今日はやけに歯切れが悪いぞ」
「ほっとけ……」
もう適当なことを言って誤魔化すことにした。
相手はタスクだ。何を言っても信じるだろう。
そんなやり取りの後、俺たちは早速今日も裏面に向かうことにした。
昨日の夜、死ぬ一歩手前のようなことがあったにも関わらず、タスクの表情は気楽なものだった。俺もこりずに裏面に行こうとしているので、人のことは言えないが。
「また来ちまったか……」
「おいギイチ、そんなことより見てみろよ。コレ、すごいぞ」
俺たちは昨日入った裏面に来ていた。
タスクが同じところに行こうと提案し、それに俺が「まだ早いんじゃないか」と抗議したものの、三人だから大丈夫というタスクの謎の理論に押し切られてしまった。
切り替えの早いタスクなどは、『扉』を入った所にある石版に、ユーリの能力の情報を映してもらい、早速一人で盛り上がっている。
「何だようるさいなあ」
「ほらほら、見てみろって」
――救出(レスキュー)
――対象を手の届くところまで引き寄せる
石版上には、そう書かれていた。
「これ……俺たちを助けてくれた時の能力だよな……?」
「多分そうだろ。すげえなギイチ、俺たちこれで助けてもらいまくりだぜ」
訳の分からないことを言うタスクは置いておくが、確かにネットで調べた中にはこんな能力があったかも知れない。緊急回避用として、人気の高い能力とあった気がする。確かにすごい。
「あと、もう一つあったよな」
「ああ……ユーリ、そっちの能力の情報を出してもらっていい?」
「分かりました――
俺の言葉を快諾したユーリが、石版に語りかけると新たな文字が浮かび上がった。
――鼓舞(チアー)
――周囲の仲間の
「『3』って、これ……マジ?」
「マジ……みたいだな……」
石版に浮かび上がった情報を見て、俺とタスクが絶句する。
俺たちが何に驚いているのか分からない、というような表情のユーリが俺たちの顔を見比べていた。
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