第三章 パーティプレイ
第20話 自宅に帰還
「よしくん〜〜〜、帰ってこないから心配したわよ〜〜〜!」
「うわっっ! 母さん!?」
タスクとユーリ、そして俺の三人で
「お、おばさん……こんばんは」
「タスクくんまで〜〜〜! お母さんきっと心配してるわよ〜〜〜!」
「母さん、何だってこんなとこに」
「私、おばさまと一緒に来たんです」
裏面に突然ユーリが現れたことにも驚いたが、まさか母さんもいるとは思わなかった。横からおずおずと声を出すユーリは、母さんとここまで来たと言っている。
「え、一体どういうこと?」
「どういうことも何もないわよ〜〜〜! よしくんが帰ってこないから心配して来たんじゃない〜〜〜!」
「おばさん、何でここに俺たちがいるって分かったの?」
横で気まずそうな顔をしていたタスクが、俺も気になっていたことを聞く。俺たちはさっきまで裏面にいたはずで、どこに行くかなんて勿論言っていない。
「それはこれよ〜〜〜!」
母さんがハーフコートのポケットから、携帯端末を取り出した。取り出したというより、自慢げに掲げている。
「そのケータイが何か……?」
「いやあねえ、決まってるじゃない〜、
「え、ええええーー……」
一言で察してしまった。
さっきまで気まずそうな顔をしていたタスクなどは「お前マジか」というような顔をしている。やめてくれ、マジじゃない。俺だって初耳だ。
「えっと、俺のケータイのGPSってこと……?」
俺の言葉に、母さんは首を傾げている。
「いや、だから……俺の位置情報を見てここに来たの?」
「だからそうだって言ってるじゃない〜」
「そんな話聞いてないんだけど……」
「それは言ってないから〜」
「そうですか……」
息子としてはショックな母の発言だった。
確かに俺が金を払ってるわけじゃないけど、まさか勝手に位置情報が分かるようになっているとは思わなかった。気づかない俺も俺だけど、黙ってた母さんも母さんだ。
「そんなことよりもう夜遅いんだから帰るわよ〜、タスクくんも途中まで一緒に帰りましょ〜」
「あ、はい……」
今までのやり取りが何でもなかったかのように、母さんはさっさと先を歩いていってしまう。それに小走りでついていくユーリ。
お互いに気まずい表情の俺とタスクは、少し距離をおいて後をついていく。
「……お前んち、どうなってんだよ。すげえな」
「言うな……」
「おばさんもすげえけど、さっきのユーリちゃん……レベル
「それな。まあ明日ゆっくり話そうぜ、今日は俺ちょっと色々ありすぎて無理だわ……」
「そうだな。俺も無理だ」
さすがにタスクも参っているのか、その後は黙って帰路についた。
近所の十字路でタスクと別れ、俺と母さん、そしてユーリは家へと戻っていく。
「よしくん〜?」
玄関の扉を開きながら、こちらを向かずに母さんが俺に声をかけた。
「はい、何でしょう……」
「
「承知しました……」
一切こちらを向かないので表情が分からない母さんが会議の開催を告げた。
なんとなく想像はできていたけど、胃が軋むような音がする。
***
「むっ、
「父さん、ただいま……」
俺たちが家の中に入ると、すでに父さんがリビングで待機していた。優雅に紅茶なんか飲んでいる。
「夜遊びなんてけしからんぞ、義一」
「夜遊びじゃ……いや、なんでもないです」
「あきひこさん〜、そんなことより会議よ〜」
「むっ、母さん。そうか、会議か。義一、しっかりやれよ」
リビングに入るやいなや、母さんがいそいそと椅子に座る。
何故かユーリまでも、ルールを把握しているのか無言のまま椅子に座った。一体どうなってしまったんだ、我が家は。
「さてさて、よしくん〜、何で会議か分かるわよね〜?」
俺の着席を確認した母さんが、早速というように話し始める。
「それは……はい。俺が裏面に――」
「そうよ〜〜! 何でユーリちゃんを置いていくのよ〜〜!」
「えええーー……そっち……?」
てっきり俺がタスクと黙って裏面に行って、こんな時間まで帰らなかったことを怒っているのかと思った。予想外の角度からボールを投げてくる母さんだったが、怒られる方向性としてはマシな方かもしれない。
「タスクくんと二人で遊びに行くなんて酷いじゃない〜。ユーリちゃん、ずっと私に付き合ってくれてたのよ〜」
「遊びって母さん、俺死にかけて――いや、なんでもない……」
「おばさま、それは……私も色々連れてってもらいましたし……」
母さんの言葉にユーリが横から口を出す。
横で話しているユーリ、さっき会った時から何か印象が違うなと思ったら、どうやら髪を切ったみたいだ。初めて会った時は何とも言えない長さの髪だったが、肩口までの長さになっており、前髪も長さを揃えて少し横に流しているようなものだ。何ていう髪型なんだろう。
それにしても、二人の会話を聞いていると、一緒に出かけて髪まで切りに行ったということか。なんだか二人の距離感が息子としてはちょっと怖い。
「それより仲間外れはダメだからね〜、明日は休みなんだからユーリちゃんを連れてってあげなさいよ〜」
「そうだ、義一。仲間外れは良くないぞ」
何と返したものか分からないが、目の前には満足げな表情をした父さんと母さんがいる。横のユーリを見ると、にこっと笑って返してきた。
どうやら会議は終わったようだったが、段々とピントがずれていくような自分の家族に、どう接したものか悩ましくなる。
きっとこれは、思春期だ。そうに違いない。
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