第13話 慣れ
近所にある公園、乗ってきた自転車の脇に立って俺はタスクを待っていた。
「おおーい、ギイチ!」
「遅いぞタスク。お前が時間指定したんだろ」
「わりいわりい、出かけに母ちゃんに止められてさあ」
同じく自転車でこっちに向かってくるタスクが声をかけてきた。
今日俺たちが集合したのは、近所にある
二人で攻略ができる裏面を探すのが目的なのだが、『扉』自体は比較的どこにでもある――なんならこの公園の入口にもバスケットボールくらいのサイズの『扉』があるのだが、難易度が低そうなそれを探す必要がある。
「それで、探すって言っても心当たりあるの?」
「ないっっ!!」
「そんな勢いよく言われても」
タスクは自信満々な顔で
裏面の『扉』を探すと言っても確かにどうしたらいいのか分からない。俺やタスクがそれぞれ一人で入った『扉』、それに二人で入った『扉』を見つけたのは完全に偶然だ。
「とにかくその辺をぐるって回ってみようぜ。『扉』なんかそこらにゴロゴロあるんだし」
「まあ、それしかないよな」
そう言って、自転車でタスクとその辺をぐるぐる回ることにした。
今日もユーリを連れてきていない。
家を出るときもちょっと気になったけど、俺もタスクも
「探してそんな見つかるもんかなあ」
「――あれ、『扉』じゃないか?」
駅の方に向かっていたところで、タスクが声をあげた。
大通り沿いにある赤い郵便ポストの上、小さい灰色の『扉』が見えた。
「……こんなにあっさり見つかるもんか」
「探してみるとあるもんだな!」
まさかこんなにあっさり見つかるとは思わなかったが、確かにポストの上に、昨日入った『扉』とほとんど同じものがくるくると回っている。
「さっそく入ろうぜ!」
「忙しいやっちゃな。人目があるなあ、ここは……」
「関係ないだろ!」
タスクはそう言うと、乗ってた自転車を歩道脇に置き、さっそく『扉』に入ろうとしている。
今のご時世、『扉』に入ろうとするものは白い目で見られることが多いため、あまり人目のつくところの『扉』には入りたくなかったが、タスクにはそんなことは関係ないようだ。
ちょっと気が引けるけど、タスクを止められそうにもない。俺も同じように自転車を置くと、タスクについていくことにした。
「よっしゃ行くぜ!! エンターー!!」
「だから何だよそのダサい掛け声……」
ノリノリで『扉』に入るタスクを追う。
***
タスクと二回目の
灰色の『扉』は地下の墓所というような気味の悪い場所という点を除けば、ネットの情報通り楽な場所だった。骸骨の動きが
結果的にその日は丸一日を裏面攻略に使い、裏面を三つ攻略することができた。灰色、灰色、茶色、の『扉』だ。
茶色の『扉』に入った時、出てくる敵――
その日の成果は結局緑のジェムが三つだった。
その全てが『木のこん棒』だったことにはがっかりさせられたが、一日で裏面を三つも攻略できることが分かり、タスクと大いに盛り上がった。
「それじゃあ、このジェムは一応俺が持っとくぜ」
「捨てちゃってもいい気がするけどな」
「売れるかもしれないだろ! もったいないオバケが出るぞ!」
タスクはそう言って自転車にまたがり去っていった。
俺たちが二人で手に入れた緑のジェムは、タスクに預けることにしたのだ。
緑のジェムはよっぽどいい武器でもない限りはお金になりにくいという話を見ていたので、『木のこん棒』など金にならないとは思ったのだが、タスクは売る気まんまんという感じだ。
タスクが家に帰っていったので、俺も家に向けて自転車を走らせる。
明日も丸一日予定がないので、
自転車を走らせながら今日の裏面攻略のことを考えていたが、段々と慣れてきていることに自然と笑みが出てきた。
明日も――いっちょ頑張るか。
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