第10話 骨
最初に『扉』から入った所にある部屋は、薄暗いものの祭壇があるだけの普通の部屋だった。部屋の隅に用意されたいくつもの
そんな部屋には木の扉が一つあり、それが
ちなみに、その『扉』自体もこの部屋にある。外で見たのと同じアイコンのようなものが宙に浮いて回っており、『扉』と石の祭壇と奥へと進む木の扉が直線状に並んでるような感じだ。
「さて奥に行くか。ギイチもしかしてビビってんじゃないよな?」
「――び、ビビってなんかねえよ! ていうかタスク、お前ボスの間まで行って何となもなかったのか?」
「何ともないってことはないけど、骨の奴がいっぱいいただけだな」
「そんなもんか……?」
俺がこの前裏面のボスの間に行った時は、あまりにも数の多い
「まあとにかく行こうぜ。往復するだけでも二時間はかかるぜ?」
「おお」
そう言ってタスクは木の扉を開く。
その奥には通路が伸びており、通路の両側や曲がり角に転々と置かれている松明のおかげで、視界は問題なさそうだ。
長く続く通路を何度か角を曲がって進み続けるが、天井が低く幅もさほどない空間が続くのでどうにも息苦しい。灰色の『扉』の裏面は地下の
そんな通路を歩いていくと、通路の奥に広間のようなものが見えてくる。
「おい、見ろよ」
タスクがそう言って、広間に入る手前の所で止まると、広間と通路の境から顔を出して広間の様子を伺っている。
俺もそれに
「
「あれが……うわー、ホントに
「ビビった?」
「馬鹿言えよ」
遠くから様子を伺っている俺達に、敵は気付いていないようだ。広間内には二体の骸骨が木のこん棒のようなものを手にし、辺りの様子を伺っているのかゆっくりと徘徊している。
生前――なんてものはなさそうだが、目玉があったであろう場所のくぼみ――
「まあ、ものは試しだ。やってみろよ」
「――うわっ、何しやがる!」
急にタスクに背を押され、広間に出てしまった俺に骸骨たちの視線が集まる。
俺を視認した後こちらに真っ直ぐ向かってくるのだが、さすがに骨だけの存在であるからか、歩みはひどくゆっくりだ。心の準備と身構える時間は十分にある。
「おらおらおら、こっちだぜー!」
右方から迫っていた骸骨の注意を引くように、俺の後ろを抜けていったタスクも広間に出て行く。その動きに、意図通りというように骸骨がタスクの方を向いた。
「ほらギイチ、やってみろって! コイツら
奥にいる骸骨はまだ距離がある。
タスクは俺に試させようとしているのだろう。骸骨を挑発するだけで、自ら手を出そうとはしていない。
――狙うなら、そりゃあ頭だろう!
そう狙いを決めて、前に一歩二歩と骸骨に迫る。
こちらの動きに気付いた骸骨が振り返ろうとするところを、手に持ったメイスを敵の頭目掛けて振りぬく。思った以上に軽い手応えだったが、丸い頭蓋骨がてんてんとタスクの方に転がっていった。
「ははっ、ホントだ。脆いな――」
一撃で敵を沈黙させたと思ったが、目の前の骸骨は頭を失ってなお、こちらに向き直ってこん棒を振り上げてくる。
「おい、何だよコイツ。頭がなくなっても死なないのかよ!」
振り下ろされようとするこん棒に、慌てて手に持ったメイスで受けようと構えたところで、骸骨が急にばらばらと崩れ落ちた。まるで骨と骨がくっついている部分が一斉に無くなったかのような崩れ方だ。
「ははは、ビビった? こいつら頭を潰さないと死なないんだぜ?」
「おいタスク! そーいうのは先に言えよ!」
俺が慌てる姿を見ていたタスクの足元には粉々になった頭蓋骨があった。恐らく俺がさっきの攻撃で敵を倒したと勘違いした、そう思って傍観してたんだろう。趣味の悪いやつだ。
「まあ、そんなとこだ。動きも遅いし頭を潰せばいいだけ。簡単だろ?」
そう言うタスクは、残っていた一体の骸骨の方に向かっていき、自分に振り下ろされるこん棒を余裕をもって避け、上から叩き潰すように骸骨の頭をメイスで殴った。
その一撃で、先ほどのようにばらばらに崩れ落ちる骸骨。
その様子を見せ付けるようにタスクが俺の方を向いて、「な?」という顔をしている。嫌味なやつだ。
「こんなとこだ。どんどん先に行こうぜ」
「お前なあ……次からちゃんと言えよ。でもまあ――
見た目が随分ホラーだが、比較的
散らばった骨以外何もない広間の先にある通路に、俺たちは向かっていく。
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